北條民雄 小説随筆書簡集 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
4.67
  • (4)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 45
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (648ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062902892

作品紹介・あらすじ

ハンセン病療養所での隔離生活という極限状況で創作されたすべての小説(完成作品)を中心に、川端康成や中村光夫と交わした数多くの書簡、一部の未完小説と随筆も収録。創作期間わずか数年で夭逝した天才作家の、魂の軌跡を辿る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いのちの初夜が100分de名著で取り上げられたことから興味を持ち、読んだ。

    北条民雄の書くものを小説だけでも生涯に一度は読むべきだと思う。
    陳腐な表現にしかならないが、生きる苦悩、死ねない苦痛、死の必要性、全ての人に共通する普遍的な苦しみと想像を絶する世界が描かれている。

    このような世界が日本にあったこと、このように扱われた存在があったこと、誰も忘れてはならないし知るべきだと思う。

    苦しい読書だったが読めて良かった。



    あなたが見られた癩者の生活は、まだまだほんの表面なんですよ。この病院の内部には、一般社会の人の到底想像すらも及ばない異常な人間の姿が、生活が、描かれ築かれているのですよ。

    生き抜くこと程たやすいことはありませんからね。生き抜くってのは、つまり死ねないってことじゃないですか。

    私は私の中にある、“誰かに共感されたい”、という慾求を信じる。

    成程、生きるということは愚劣だ。人生はどう考えても醜悪であさましい。この愚劣さ、醜さ、あさましさにあいそをつかして首を縊ったり海に飛び込んだりした者は決して少くない。しかし、私はここで呟かずにはいられない。愚劣な人生にあいそをつかして自殺した人々の死にざまのなんと愚劣なことか!と。

  • 生きることの意味、人生とな何かを考えさせられる。
    重い病気を患い、ただただ何もせず、何も生まず、誰かに得するわけでもなく、その日その日をただ生きる。
    そこに意味はあるのか?生はあるのか?それは最早人と呼べるシロモノなのか…
    それでも自死を選ばず、ただハンセン病患者として、新しい生き方を見つけること、その困難さと美しさに目を奪われる。

  • 2016.05.18

  • 重かった。細かい描写がこれでもか、これでもかという勢いで迫ってくる。見たことはないが、どんな様子だったかリアルな映像が浮かぶ。
    それだけ素晴らしい文章力だということだ。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

1914年9月22日朝鮮「京城」生まれ。
1歳から父の郷里の徳島県那賀郡で育つ。1933年2月発病。1934年5月18日全生病院(現・国立療養所多摩全生園)に入院。1936年1月「いのちの初夜」が川端康成の推薦により「文学界」発表され「文学界賞」を受賞する。その後「文学界」「中央公論」「改造」「文芸春秋」に作品を発表。1937年12月5日結核により死去。『北條民雄全集』(1980年 東京創元社)

「2002年 『ハンセン病文学全集 1 小説一』 で使われていた紹介文から引用しています。」

北條民雄の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×