白暗淵 (講談社文芸文庫)

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  • 講談社 (2016年6月11日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784062903127

作品紹介・あらすじ

「七十の坂にかかる道すがらの作品群になる。あれもなかなか越すに苦しい坂だった」(著者から読者へ)。爆風に曝された大空襲から高度成長を経て現代へ――個の記憶が、見も知らぬ他者たちをおのずと招き寄せ、白き「暗淵」より重層的な物語空間が立ちあがる。現代文学を最先端で牽引しつづける著者が、直面した作家的危機を越えて到達した連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 神話性を伴った『辻』は間違いなく名作だった。
    本作は一転し想念は内へ内へ潜り込み、最早言っている事は作者にしか分からないのではないか。
    転換点と評されているが、自分には転換せざるを得なかったどん詰まりに来ている作品だと感じた。

  • 直前に読んだ「杳子・妻隠」からかなり年月を下って、70歳くらいの時に書かれた短編集とのこと。確かに文体はよりずっしりと重く、滔々と流れる文章には経てきた年月にふさわしい品格がある。
    ただその分作者個人の思索、思い出が整理されないままに作品にびっしり絡んで混ざり合っていて、もはや不可分になっている印象。頭に浮かんだことがそのまま次々と文章になっていて、誰が、いつそうしていたのか、今主人公はどのあたりの年齢なのか、そういったことが読んでいてかなり分かりにくい。というか、私には分からなかった。私がぼんやり読んでいるせいかと思ったけれど(それもあるだろうけど)、これはやはり意図的に曖昧にして読者を迷い込ませる趣向なんだろうか。
    人の頭の中をそのまま見せられているような、病人か耄碌した人の話を延々と聞いているような怖さがある。現実を一段踏み外したようなとりとめのない思考が続く中で、女性や性の描写だけが妙に生々しく臭い立つようでそれもちょっと怖い。

    「まるで愛憐の情を棄てた神の眼だ、いや、この冷徹さそのものが、愛憐なのかもしれない」
    それは、私もそう思います。

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著者プロフィール

小説家、ドイツ文学者。1937年生まれ。東京大学大学院独語独文学専攻修士課程を修了後に、金沢大学、立教大学で教鞭を執る。1968年に最初の小説『木曜日に』を発表。1971年に『杳子』で芥川賞受賞。主な作品に『栖』『槿』『仮往生伝試文』など。ムージル『愛の完成』『静かなヴェロニカの誘惑』を翻訳。2020年に死去。

「2024年 『誘惑者 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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