我が愛する詩人の伝記 (講談社文芸文庫)

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 講談社 (2016年8月11日発売)
4.12
  • (7)
  • (7)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 184
感想 : 8
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784062903189

作品紹介・あらすじ

「各詩人の人がらから潜って往って、詩を解くより外に私に方針はなかった。私はそのようにして書き、これに間違いないことを知った」。藤村、光太郎、暮鳥、白秋、朔太郎から釈迢空、千家元麿、百田宗治、堀辰雄、津村信夫、立原道造まで。親交のあった十一名の詩人の生身の姿と、その言葉に託した詩魂を優しく照射し、いまなお深く胸を打つ、毎日出版文化賞受賞の名作。

みんなの感想まとめ

詩人たちの生き様とその内面を深く掘り下げた作品で、著者の室生犀星が描く彼らとの交流が魅力です。藤村や光太郎、白秋、朔太郎など、名だたる詩人たちの「生」と「性」が赤裸々に表現され、詩人としての彼らの真実...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 文庫としてはちょっと高いけど、充実の一冊!!
    手にして良かった~!
    室生犀星が敬愛する詩人たちを一人ずつ取り上げて語る。
    当時の犀星の様子や、交流の様が、正直に、温かく優しい目線で語られていた。
    タイトルには伝記とあるけれど、本書はそんな堅苦しいものではなくて、思い出の記といった感じだった。
    詩人への愛が詰まっている。

    第一章は「北原白秋」。
    明治四十二年に自費出版された白秋の処女詩集『邪宗門』を、早速注文した犀星。
    自らをキリシタンになぞらえながら官能や幻想を唄う本作を、「解らないまま解る顔をして読んでいた」という。
    正直だなぁ。
    『屋上庭園』という詩の雑誌も、編集していた白秋宛てに直接注文した犀星だったけれど、「やはり解らないものは解らないままだった」という。
    それでも、月給八円だった彼が一冊一円の雑誌を購入したということ。
    それから、解らなかったと述べながらも、「活字というものがこんなに美しく巧みに行を組み」、「眼の前にキラキラして来る閃きを持つ」などと、
    白秋の紡ぎ出す詩から感じるものを胸一杯に受け止めている様子が見てとれた。
    詩そのものに対する思いも、
    「処女詩集と呼ばれているものは」「ご念のはいった美しい愛称なのである」という。
    「小説集なぞはこれをひと口に初版本といい、処女小説集とはいわれていない。詩集を守りつづけて来た美名が未だに、ふくいくとして匂いこぼれている所以である。」
    (ふくいく=馥郁=よい香りが漂っている様)
    いい表現だなぁ。

    明治四十四年頃の犀星は、「本屋訪問がぬきさしならぬ文学展望のかたちになっていた」。
    そして白秋宛てに『小景異情』の原稿を送る。
    ここにあの「ふるさとは遠くにありて…」が含まれていた。
    すると翌月、白秋編である詩の雑誌に、「一章の削減もなく全稿が掲載され」る。
    「めまいと躍動を感じて白秋に感謝の手紙を送った」ことからも、飛び上がるほど嬉しかったであろう犀星の喜びが伝わってきた。
    そして次々と掲載されるようになる。
    この詩の雑誌は『ザムボア』といったが、ここに犀星は、萩原朔太郎の名前をみつける。
    以前『二魂一体の友』を読んでいたので、犀星と朔太郎の仲はここから始まってゆくのだなぁとニヤニヤ。
    のちに朔太郎から直接手紙が届き、彼もまた犀星の詩を『ザムボア』で毎号読んでくれていることを知る。
    って、第一章は北原白秋の章なのになぁ。
    やっぱり朔太郎とは、室生犀星という人にとっては欠かせない人間なんだな。

    本文は白秋も朔太郎も世を去った後のものだと読み取れるが、「こういう機会に毎日白秋に会えるということも、きゅうくつではあるが、今日は何を書こうかという愉しい朝が夜が明ければあった」とのこと。
    「萩原朔太郎と私はなんといっても白秋の弟子だ」とまで言いきっている。
    「原稿の字は一字もなおして貰わなかったが、白秋のたくさんの詩のちすじがからだに入って、それが萩原と私にあとをひいている」とも。

    章の後半には白秋と女性たちについても記されていたが、ここに印象深い文があった。
    「愛情は古いほど永い間薄ら痒い。」

    「白秋以後白秋なく、……………その先ざきでほとんど不世出のはればれしさを、抱えきれないくらい抱えこんだ詩人であった。」


    第二章は「高村光太郎」。
    犀星は素直に彼に対しての嫉妬心を記している。
    「私にとってはほとんど生涯の詩の好敵手であったし、かれは何時も一歩ずつ先に歩いていたこと………私は高村にかなわないものを感じていた」
    「私がどれほど詩の原稿をたくわえていても、『スバル』に掲載されるということは絶対にありえない、だが光太郎はいつでも華やかにしかも何気ないふうで登場していたのだ。」
    高村光太郎という名前に絶えず脅かされていた、癪にさわる、青ざめ、悲しみ…と散々だ。

    けれどもこれらは高村光太郎個人を攻撃しているわけではない。
    犀星の詩に対する熱い向上心からくるものなのだろう。
    何故なら、「高村自身にとっても私のような男に身辺のことを書かれることは、相当不愉快なことであろう」と謙遜し、
    彼の死を「巨星墜つ」と表現し、
    「光太郎の死後、あらゆる読物娯楽と演出演劇がよってたかって、光太郎と智恵子をめちゃくちゃに見せ物にしてしまった」と、「どいつも、こいつも叩きのめしてやろうかとさえ」憤慨しているからだ。

    「巨星は映画演劇におもちゃにされたが、依然見事に聖人高村光太郎にびくとも影響をあたえていないし、そのために彼を軽く見るという境にまで行きつかなかった。」


    本書はその他、「萩原朔太郎」(この人は欠かせない!隠しきれないいじらしさ、くすんだ情熱、なんて表現もあって、やっぱり二人の距離の近さを感じる)、
    「堀辰雄」「山村暮鳥」「島崎藤村」等11名の錚々たる名前が連なる。
    どの章も、詩と詩人に対する犀星の愛情溢れる文章が楽しく読ませてくれる。

    「詩というものを作るということは、或る意味で盗まなければならないことだ、小説を書く場合にもまた多くを盗まなければならない、巧みに溶かしてぬすむということは、その詩人なり小説家の、頭の溶かしぐあいと、ぬすむことによって盗んだ十倍も本物を自分から惹き出すことにある。」

    「詩人は早く死んではならない、何が何でも生き抜いて書いていなければならないのだ、生きることは詩を毎日書くことと同じことなのだ。」
    「………皆は死に、その死を傷むこころはこの伝記を綴ることによって一層に感慨は深い、……」

    「詩人の伝記を書いているが、どうもすぐ自分のことを書いてしまうね。」
    室生犀星も、愛すべき詩人だ。

    最後に、山村暮鳥の詩を1つご紹介したい。

    『手』
    しつかりと
    にぎつていた手を
    ひらいてみた

    ひらいてみたが
    なんにも
    なかつた

    しつかりと
    にぎらせたのも
    さびしさである

    それをまた
    ひらかせたのも
    さびしさである

    • 5552さん
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは!
      お久しぶりです!!

      室生犀星、いいやつっぽいですね〜
      名前しか知らないけれど、好感度爆上がりです。

      レ...
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは!
      お久しぶりです!!

      室生犀星、いいやつっぽいですね〜
      名前しか知らないけれど、好感度爆上がりです。

      レビューの最後に山村暮鳥の詩が挙げられていてびっくりしました。
      私、今日、山村暮鳥の名を知り、とりあえずと青空文庫で読んでみたのが『風景 純銀もざいく』。
      偶然ですね〜
      2024/11/16
    • 傍らに珈琲を。さん
      5552さん、お久しぶりです~こんばんは!
      山村暮鳥繋がりにびっくりです。
      ブクログって、たまにこういう偶然の一致があるから楽しいですよね。...
      5552さん、お久しぶりです~こんばんは!
      山村暮鳥繋がりにびっくりです。
      ブクログって、たまにこういう偶然の一致があるから楽しいですよね。
      本好きさんが集まってる場所ならでは。
      山村暮鳥、本書を読んでいいな~と思い、詩集を探してみようかな…なんて思っているところ。

      室生犀星、いいやつです!笑
      本書は犀星と詩人仲間との交流も豊富に描かれてますし、詩というものに対する彼の思いもたっぷり記されてます。

      本書もお勧めですし、室生犀星・萩原朔太郎の連名で『二魂一体の友』もお勧めです。
      恥ずかしいくらい強い友情が感じられるタイトルですし。
      二人の詩人が愛おしく思えます。
      2024/11/16
  • <詩人たちの「生」と「性」>

    中公文庫版で本書を最初に読んだのは遠い昔のことだ。
    当時、作者の室生犀星にさほど興味があったわけではない。
    重要なのは、室生の親友だった萩原朔太郎であり、年下の友人だった立原道造であり、ライバルだった高村光太郎だった。
    彼らは皆、詩人室生犀星の「愛した詩人」たちだった。
    本書を読むと、詩人が詩人らしく生きることのできた時代が蘇ってくる。

    古い文庫を久々に書棚から引っ張り出してきたのは、日経新聞の夕刊に、室生犀星が滞在した軽井沢の旅館の写真と、本著に描かれている立原道造についての記述を見つけたからだ。
    本との出会い(再会)には、何かしらきっかけがいる。

    再読して、実に独特なエッセイであることに今更ながら気がついた。
    詩人たちの生々しい「生」と「性」が、実に赤裸々に描かれているのだ。
    今時、こんな題材で、直截に鋭く人の本質を探るエッセイをを書ける者はいない、犀星、恐るべし、だ。

    その「生」と「性」が暴かれるのは、次の詩人たちだ。
     師 北原白秋
     ライバル 高村光太郎(と千恵子)
     親友 萩原朔太郎
     畏友 釈迢空(折口信夫)
     愛弟子 堀辰雄、立原道造
    この綺羅星のような詩人たちを、直接交流を持った作者が、鋭い感性で描くのだから、面白くないはずがない。

    異様な印象を与えるのが、高村光太郎とその(発狂した)妻智恵子の姿だ。
    智恵子は、「光太郎のことを神様のように慕い、犀星を虫けらを見るように侮蔑の眼差しを注いだ」(と犀星は感じた)と、智恵子の狂的な愛を容赦なく見抜く。その後、その智恵子を美のミューズとして、詩作の道に突き進む光太郎の姿が活写される。

    芸術に「生」と「性」を賭けた者たちの光芒が、眩しい。

  • 言いたいことを言うというのは誰しも切なる願いであるし、そうあるべきだしそうしていいはずなのに。
    年明けから進撃の巨人にはまり、小説を読むと頭が混乱しそうなので自分の本棚からエッセイを探したら出てきたので読みました。

    もともと室生犀星の杏っ子がほしくて本屋の講談社文庫の棚を探していたらこれしかなく、これも何かの縁かと思い買ったものでした。次本屋に来た時は忘れているかもしれないし、今買わないと買わない。カレルチャペックの園芸家の12ヶ月みたいに。
    で、次こそは空いた隙間に杏っ子、もしくは犀星の他の本が入荷されるかもとわくわくして出かけたのに同じく我が愛する詩人の伝記が入荷されていてがっかりした記憶があります。
    気に入っていた本屋だったのに、この人たちは本が好きで興味があって売っているのではなく、ビジネスになるから、こういった品揃えであればセンス良く見えるというリストを先に作ってそれをなぞっているだけなのだ。
    Three Livesは違う。サリンジャーの新装版を真っ先に置いてくれたから。

    とはいえ読んでみれば、途中でいつでもやめられるエッセイ、というより物語集とでもいうような、ストーリーも表現も工夫してあって、なんだったら一番気に入った堀辰雄の文章が読みたくなるような(風立ちぬ、いざ生きなんしか読んでないので) そんな一冊でした。

    愛するとは相手に生きていてほしいと願うこと。だから愛する詩人の伝記、なのですね。

  • とりあえず藤村編だけ読んだ。
    藤村が、余りにも大家過ぎて近寄れない室生犀星がなかなか微笑ましい。静子さんを見て美しい婦人だ、あのような人を老年になって傍に置いて置ける藤村を羨んでいる様子も書かれていたりと、犀星の想像力の面白さが垣間見える。
    他の詩人・作家も広く取り上げられているので、あとでまた読んでみたいところ。

  • 2018/03/29-04/06

  • 文庫本にしてはちょっと値段高くないか。

全6件中 1 - 6件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1889(明治22)年〜1962(昭和37)年、石川県金沢市生まれ。本名、照道。詩人、小説家。父は元加賀藩に仕えた武士だったが、生後数週間で住職・室生真乗の内妻赤井ハツに引き取られる。1904年『北国新聞』俳句欄に句作が掲載され、俳号として「犀星」を使う。1908年、尾山篤二郎らと北辰詩社を結成。1913年に北原白秋に認められ、白秋主宰の『朱欒』に詩が掲載されると、その詩に感動した萩原朔太郎より手紙を受け取り、終生の友となる。
1918年『愛の詩集』『抒情小曲集』刊行。1920年『性に眼覚める頃』刊行。
1934年「あにいもうと」発表。1957年『杏っ子』を刊行、翌年に読売文学賞受賞。
1959年『蜜のあはれ』刊行。1962年、肺癌のため死去。

「2026年 『幻影の都市 室生犀星 憂愁夢幻傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

室生犀星の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×