ふしぎな総合商社 (講談社+α新書)

  • 41人登録
  • 3.58評価
    • (1)
    • (7)
    • (3)
    • (0)
    • (1)
  • 1レビュー
著者 : 小林敬幸
  • 講談社 (2017年9月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062915045

作品紹介

総合商社。それはじつはバブル期以降の急成長業界であり、「ポストバブルの勝ち組」である。
伊藤忠商事、住友商事、丸紅、三井物産、三菱商事。
バブル崩壊以降、五大商社のすべてが、吸収合併もされず、会社名も変わらず、
とりわけ2001年以降、利益もバブル発生前の約10倍に拡大させてきた。

日本人だったら、ビジネスに詳しくない人でも、上記の五大総合商社の名前くらいは知っているだろう。
多少、ビジネスに詳しい人だったら、「総合商社」が、他国にはない日本独自の業態だということも知っているだろう。

では、いまの総合商社は、実際にどんな仕事をして、どうやって稼いでいるか、
知っている人はどれくらいいるだろうか?

じつは、「知っている」と思っている人でも、その認識が一昔前までの認識であることが多かったりする。

たとえば近年、総合商社が儲かったのは、資源のおかげだと解説する専門家がいるが、これは事実の一部を捉えたものにすぎない。
さらには財閥などの企業グループをもとに権益を維持して稼いでいると解説する人もいるが、これなどはまったく事実とは違う。

かつては「売上命」だったのに、いまでは「売上ゼロ」でもボーナスが上がる営業部も存在する。いったいなぜ?

その「なぜ」に答えることは、ポストバブルの勝ち組になった理由を説明することでもある。
そこには、それぞれの会社で進んだ稼ぎ方の大変化があった。
では、働く人は変わらず、稼ぎ方を変えられたのはなぜか?

誰もが知っているけれど、実態はよく知らない総合商社。

その本当の姿を知ると、ビジネスの本質も見えてくる。
そこにはこれからの日本のヒントが隠されているかもしれない!

就活生のみならず、ビジネスパーソン必読の書。

【目次】
第1章 「ヘンな会社」としての総合商社
第2章 サラリーマンとしての商社マン
第3章 課題先進企業としての総合商社
第4章 ビジネスとしての総合商社
第5章 仕事としての総合商社
第6章 商人としての総合商社
終章  総合商社の未来

ふしぎな総合商社 (講談社+α新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 『ふしぎな総合商社』
     小林 敬幸 著
     講談社(講談社+α新書)
     2017/09 208p 840円(税別)

     1.「ヘンな会社」としての総合商社
     2.サラリーマンとしての商社マン
     3.課題先進企業としての総合商社
     4.ビジネスとしての総合商社
     5.仕事としての総合商社
     6.商人としての総合商社
     終.総合商社の未来

    【要旨】英語で「SOGO SHOSHA」とそのまま表記されるなど、「総合商社」が
    日本独自の企業形態であるのは有名だ。しかし、実際に現在の総合商社がどん
    な仕事をしているのか、一般にはあまり知られていないのではないだろうか。
    総合商社は実は30年ほど前から少しずつ、とくに2001年以降はそのビジネス
    の形態を大きく変えている。財閥を引き継ぐ旧態依然の衰退業種と思いきや、
    バブル以降、トップ5社の利益が約10倍になるなど急成長を遂げているので
    ある。本書では、そんな総合商社の実態、新しいビジネスモデル、成長の秘
    訣などについて、元商社マンの著者が実体験を踏まえながら詳しく解説して
    いる。著者は1986年から2016年までの30年間、三井物産に勤務。お台場の観
    覧車、ライフネット生命保険の起業などに携わり、現在は日系大手メーカー
    でIoT領域の新規事業を担当している。
      ------------------------------------------------------------

    ●売買仲介型から事業投資型へ劇的にビジネスモデルが変化

     総合商社(以下、商社)は、ヘンな会社だ。存在は知られているけれど、
    ホントの仕事の内容を知っている人は少ない。

     現在の商社では、売上ゼロの「営業部」がたくさんある。売上がゼロなの
    だから、営業損益はもちろん大赤字だ。それでも別に営業部長が叱責される
    訳でもなく、ときにはボーナスが良かったりする。

     種明かしをすると、現在、商社の業績評価の基準は、本社単体の売上高で
    はなくて、連結決算の当期純利益(税後利益)になっている。つまり、営業
    部ごとに計算している連結当期純利益さえいい数字が出ていれば、売上高が
    ゼロでもいい点数がついてボーナスをたくさんもらえる。

     変わったのは、商社が利益を得る方法(業態)を変えたからだ。この30年
    ほどでモノを売って儲ける売買仲介型から事業投資型に劇的にビジネスモデ
    ルを変えてきた。モノを買ったり売ったりすることよりも、新しい事業を立
    ち上げたり、出資した事業会社の収益の持ち分を利益とすることのほうが大
    きくなってきた。

     1社だけではなかった。商社みんなが、同じ方向に変わったのだ。そして、
    ラーメンからミサイルまでと言われた多岐にわたる商品分野のほとんどすべ
    てに、その転換が進められている。こんな例は、世界のビジネスの中でも珍
    しい。

     以前は、海外との輸出や輸入、あるいは、その貿易業務の代理業(エージェン
    ト)をして口銭(コミッション)をもらうのが主流だった。いわば、モノを
    安く買って、国境をまたいで運んで、高く売る商売だった。いまの事業投資
    型のビジネスは、会社(事業)の一部または全部を買って、成長を助けて、
    成長した分の利益持ち分を得る。

     30年前、商社は輸出や輸入の貿易ビジネスを中心としていたので、売上高
    が大きい商社を収益力の大きな商社だと見なすのは正しかった。しかし、世
    間が売上高で商社の評価を決めるのが常態化すると、各商社は、本来の目的
    である利益そっちのけで、とにかく売上高をあげようと、無意味な競争に走っ
    てしまう。

     そのあまり意味のない商社の売上高競争の典型的な例に、「貿易代行」売
    上というものがあった。例えば、1億円の貨物の輸出代行をすれば、その5%
    の500万円がメーカーから商社に支払われる。しかし、その経理処理は、妙な
    ものだった。普通に考えれば、商社の売上は、その口銭の数%、上の例でい
    えば500万円だけのはずだ。しかし、当時の商社は、売上高をかさ上げするた
    めに、その輸出価額全体の1億円も貿易代行の売上としていた。

     そうした売上高競争を経て1980年代から2000年頃にかけて、商社は、業績
    の指標を、単体決算の売上から単体決算の税後利益に移していった。さらに、
    2000年頃から現在にかけて、商社は、単体決算の税後利益から、連結決算の
    税後利益(当期純利益)に業績指標を移していく。それは、前述したように、
    商社が、ビジネスモデルを売買仲介型から事業投資型に変えたからだ。おそ
    らく、商社が30年前にやっていた売上高競争をあのまま続けていたら、みん
    な潰れていただろう。

     ユニークな商品・サービスを出している会社を訪ねてする打ち合わせの内
    容も昔とは変わってきた。そういう打ち合わせでは、最初は、それぞれの会
    社の紹介をしたうえで、その商品の説明を伺って、お互いにいろいろと質疑
    応答をする。そして、打ち解けて盛り上がってきた頃、売買仲介型のビジネ
    スならば、「この商品をA国のB社向けに、当社で取り扱いさせていただけ
    ないでしょうか」と聞くことになる。

     ところが、事業投資型のビジネスの場合、「資本政策は、どうお考えでしょ
    うか」と相手の会社の資本政策、つまり資金需要と増資の計画を聞き、自分
    たちがその会社に出資する(株を買う)チャンスがあるかどうか尋ねること
    になる。


    ●「何でもやる」「すっかり変えられる」姿勢が生き残りの秘訣

     商社は、何でも売る、取扱商品の多様さを誇ってきた。何千億円もするプ
    ラントの契約をするかと思えば、単価数百円の農産物も売買する。他にも鉄
    鉱石、原油、化学品、ブランドの服飾、紙など、世の中のあらゆるものを扱っ
    ている。しかし現在では、商社以外でも、アマゾンなど、取扱商品や事業が
    多様な会社も増えてきた。

     じつは、商社だけにしかないような際立った特徴というのは、いまではあ
    まりない。グローバルという特徴も、パナソニックやトヨタ、あるいは、プ
    ラントエンジニアリング会社なども、世界中の隅々まで進出していて、唯一
    独自のものではない。事業投資をするといっても、米国の投資銀行や、ファン
    ドのほうが、その分野では先行しているように見える。資源ビジネスなら、
    資源メジャーと同じようなことをしている。プラント建設でもプラント会社
    が商社を介さず独自で受注することもある。

     私が就職活動をしていた30年前に、すでに商社不要論が出ていた。
     その就活のときのことだ。リクルーターをしてくれた数年上の先輩に、率
    直に「冬の時代と言われていますが、本当ですか」と聞いたことがあった。

     そこに居合わせた二人の先輩が目を見合わせた後、はっきりと「冬の時代
    は、本当だよ。僕たちは、次の新しい機能を見つけ出さなければならない。
    必死だよ」と言ってくれた。私は、その言葉を聞いて、妙な安心感を持って
    この会社に行こうと思ったのをいまでも鮮明に覚えている。これだけ変わり
    身の早い会社が、こんな若い社員も含めてみんなが変わらなければ生き残れ
    ないと信じているなら、なんとか生き残るだろう。

     冬の時代は、本当だった。1990年代の商社は、利益の低下に苦しむ。それ
    でも、しばらくすると商社は、巨額の利益を出して復活してきた。

     この10年くらいは、商社は資源ビジネスで稼いだと思っている人も多いか
    もしれない。しかし、5大商社(伊藤忠商事、住友商事、丸紅、三井物産、
    三菱商事)のうち、資源ビジネスが全社の利益に占める比率が高いのは、三
    井物産と三菱商事の2社だけだ。貿易エージェントコミッションの収益が落
    ち、資源ビジネスの比率もそれほど高くないなら、一体、どうやって生き延
    びてきたのだろうか。

     それは、いま振り返ると、事業の多様性と自分たちを変える力のおかげだっ
    たと思う。「何でもやっちゃう」「すっかり変わっちゃう」からこそ生き延
    びてこられたのだ。

     現代の社会は、工業・製造業重視の「近代社会」から、サービス化、情報
    化が進み、低成長の中で激しい変化と超競争をしていく「成熟社会」にます
    ます進んでいる。その社会の変化による困難を真っ先に被ったのが商社だ。

     高度成長期に持っていた商社のコアな機能、すなわち、資源の輸入、工業
    製品の輸出、先進事業の導入という機能が、ことごとく、グローバルな社会
    変動で意味をなさなくなってきた。それに対して、「事業投資型ビジネス」
    というモデルを取り入れ、従来の「売買仲介型ビジネス」と併存させること
    で、文字通り七転八倒しながら適応してきたのも商社だ。従来の機能の意味
    づけを完全には捨てきらずに、しかし大胆に変更して対応してきた。

     社会全体から見れば、課題先進企業であったし、これからもそうあり続け
    るだろう。商社以外の企業でも、そうした社会の変化に適応するために事業
    投資型ビジネスを取り入れようとしている。そのときに、課題先進企業であ
    る商社が、どういう困難に直面して、どういう判断をして乗り越えてきたの
    か、その経緯を知ることは、大いに参考になるだろう。

    コメント: 総合商社のような歴史がある巨大な組織は、硬直的で恐竜のよ
    うに動きが鈍い、というイメージを抱きがちではないだろうか。だが、本書
    を読む限り、総合商社は恐竜のように滅亡するどころか、環境変化に柔軟に
    対応し、生き残っているようだ。言わば“巨大なアメーバ”といえよう。と
    なると、「大きい」「人数が多い」「事業の幅が広い」といった特徴が俄然
    生き残りのメリットとして働く。柔軟性さえあれば、人が多かったり、経験
    が豊富なことが、新たな事業展開を図るための材料になるからだ。総合商社
    以外の業種は、総合商社の変革を見習うとともに、“巨大なアメーバ”をう
    まく触媒として使うことを考えるといいかもしれない。

全1件中 1 - 1件を表示

ふしぎな総合商社 (講談社+α新書)のその他の作品

小林敬幸の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
國重 惇史
リンダ グラット...
有効な右矢印 無効な右矢印

ふしぎな総合商社 (講談社+α新書)はこんな本です

ツイートする