「日本」とは何か 日本の歴史00 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 281
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062919005

作品紹介・あらすじ

「日本」という国号はいつ決まったのか。海に隔てられた「島国」に単一な民族が住み、独自の文化が育まれたのか。東にも西にも稲作が行きわたり「百姓」が均質な社会を作っていたのか-この国の成り立ちに関する常識や通説に向けて問題を提起し、柔軟な発想と深い学識で新たな列島像を展開した網野史学の集大成。文庫版本格的通史の劈頭を飾る。

感想・レビュー・書評

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  • あとがきで弟子に批判されているが、確かにこの本、「日本」の同一性をギリギリまで解体することに重点を置いている。いわく、東と西、北海道、沖縄、東北、九州、各地方の独自性、百姓=常民の多様な実像、瑞穂のくにの虚構性、、、。それよりも「日本」という国号自体が7世紀に成立する前、そこは日本ですら無かった。多くの内海を媒介にして緩やかにつながる東アジア一体の中で、ではなぜ、どのように、国家としての日本が形成されていったのか、という疑問が逆に浮かび上がる。あえていえば本書は、この通史シリーズの中において、その疑問を浮かび上がらせるための、挑発的なプロローグとして読むべきなのだろう。

  • 2013.8.10-2013.9.28
    日本といふ国は、大昔から日本であり、今後も日本であり続けるといふ日本人が無意識に抱いてゐる思ひを覆さうとする本。
    さうした見方は「天皇制」と結びついた支配層による作り話だといふ考へが網野氏には強かつたのだらう。
    さうした気持ちが前面に出過ぎて、違和感を感じる場合もあるが、日本が有史以前から大陸と深い関係を持つてゐたこと、自給自足ではなく農業以外の産業も古くから活発で、海運による全国的な物の流通があつたことなど、興味深い指摘が多い。
    解説にあるやうに、さうした開放性、多様性の中で、どのやうに日本といふ国が立ち上がつて来たのかを、詳しく見る必要があるだらう。

  • マルクス主義史観、進歩主義史観への批判。日本という国号がいつごろから使われてきたのかを史料に基づいて論じ、従来のヤマト中心の歴史学を切る。日本が海によって孤立した島国で独自の文化を発達させた単一均質な民族国家であるという"常識"を否定し、瑞穂国日本の虚像を暴く。

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  • 「日本論」の現在(人類社会の壮年時代;日本人の自己認識―その現状)◆アジア大陸東辺の懸け橋―日本列島の実像(アジア東辺の内海;列島と西方地域の交流;列島の北方・南方との交流;東方の太平洋へ;列島社会の地域的差異)◆列島社会と「日本国」(「倭国」から「日本国」へ;「日本国」とその国制;「日本国」と列島の諸地域;列島諸地域の差異;「日本・日本人意識」の形成)◆「瑞穂国日本」の虚像(「日本は農業社会」という常識;「百姓=農民」という思いこみ;山野と樹木の文化)◆「日本論」の展望(「進歩史観」の克服;時代区分をめぐって)

    著者:網野善彦(1928-2004)
    編集委員:網野善彦(1928-2004)、大津透(1960-)、鬼頭宏(1947-)、桜井英治(1961-)、山本幸司(1946-)

  • 「『日本』とは何か」という問いに対する直接的な答えは得られないが、少なくとも、「『日本』とは何か」を考える視野は広げられる。

  • 戦後日本を代表する日本史家・網野善彦氏が著した本書は、「日本」という枠組みを批判的に検討する。

    本書で語られるのは、「瑞穂の国・日本」から大海原へと漕ぎ出した海の民、「瑞穂の国=稲作国家」の枠に収まることなく農商工業を生業とした山の民、「単一民族国家」という「虚像」からかけ離れた列島内の多様性など、「日本史という枠組み」から逸脱した人々や事象である。本書を通じ、網野氏は「日本」という枠組みがいかに人為的で列島の実情に反したものであるかを明らかにしていく。

    第二次大戦を経験し、その後共産主義運動に身を投じ程なく挫折した網野氏は、「『虚像の上に成立した日本』を徹底的に総括すべきである」との信念を持っていたといい、それが研究の原動力であったようだ。網野氏については「偏っている」という批判も多いらしく、私自身、氏とは真逆の心情を持っているが、本書を読む限り網野氏は学問的に極めて誠実であるように感じられ非常に尊敬の念を抱いた。

    本書の解説で、「それでも『日本』なるものが力を持ち続けたことに答えていない」という批判が添えられていたが、私も同様の意見を持つ。また、普段統計解析を行っている身には、本書の定性的な議論はかならずしも満足できるものでなかった。

  • 単一性ではなく多様性をいかに捉えられるかが時代の流れなのは確か、その中で日本の多様性を考えるきっかけになる一冊。各地の地名や苗字にも関心が高まった。

  • 「聖徳太子は日本人ではない」「『百姓=農民』ではない」「日本は単一民族ではない」など、従来の日本史の常識を覆す言説に満ちた歴史書。「網野史観」と呼ばれる、独特の論を展開した著者が2000年に刊行した、晩年のベストセラー。学界からは批判もあるが、とにかく刺激的。著者が本書で紹介した「環日本海・東アジア諸国図(通称:逆さ地図)」(富山県が作成)は、見慣れた日本地図を回転させただけだが、一見して驚きを感じる。多くの日本人は、自国のことを「太平洋に浮かぶ島国」と思っているが、この地図を見ると、実は『ユーラシア大陸とほとんど陸続きに近い』と分かり、やはり世界の見え方が一変する。

  • 「日本」という国号はいつ決まったのか。海に隔てられた「島国」に単一な民族が住み、独自の文化が育まれたのか。東にも西にも稲作が行きわたり「百姓」が均質な社会を作っていたのかーこの国の成り立ちに関する常識や通説に向けて問題を提起し、柔軟な発想と深い学識で新たな列島像を展開した網野史学の集大成。文庫版本格的通史の劈頭を飾る。

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著者プロフィール

1928年山梨県生まれ。東京大学文学部卒業。都立北園孝行教諭、名古屋大学文学部助教授、神奈川大学短期大学部教授、同大学経済学部特任教授を歴任。専門は日本中世史、日本海民史。著書に『日本中世の非農業民と天皇』『無縁・公界・楽』『異形の王権』『蒙古襲来』『日本の歴史をよみなおす』『日本社会の歴史(上・中・下)』『「日本」とは何か』『歴史と出会う』『海民と日本社会』ほか多数。2004年逝去。

「2018年 『歴史としての戦後史学 ある歴史家の証言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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