政党政治と天皇 日本の歴史22 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (2010年4月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784062919227

作品紹介・あらすじ

明治天皇崩御から五・一五事件へ――
近代日本の君主制はなぜ崩壊に至ったか?

張作霖爆殺事件後、昭和天皇はなぜ田中義一首相を問責したか――。東アジアをめぐる国際環境のうねりのなか、変容していく近代日本の君主制。「天皇の政治関与」の理想と危うさとは。のびやかな大正時代が閉塞の昭和を迎える過程で、庶民は何を感じ、どう行動したか。明治天皇崩御から五・一五事件による政党政治の崩壊までを、斬新な視角で活写する。

みんなの感想まとめ

政治の複雑な動きと天皇制の変遷を追った本書は、明治天皇の崩御から五・一五事件に至るまでの近代日本の政党政治の実態を丹念に描写しています。著者は、天皇、元老、軍部、議会、そして市民運動が絡み合いながら権...

感想・レビュー・書評

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  • 統治機構制度としての明治憲法は制度だけを見ても規定されない部分が多すぎて何も見えてこない。形式上は天皇に全権限が集中しているが実際に運営に当たる機構が乱立し、それぞれの分掌が一体どう機能するのか見当もつかないからである。
    本書は明治憲法が実際にどのように機能していたのか、その一端を「政治」の視点で丹念に描いている。それぞれの内閣においてどの勢力が実権を握り、誰が決定を左右したのか、重要な場面において一次資料に基づいて分析が行われている。
    そこで見えてくるのは、天皇、宮中、元老、枢密院、首相、大臣、軍部、議会、官僚、政党、そして市民運動が相互に権力の掌握を争い、次々に主役が入れ替わり誰一人として一定期間決定権を持ち得なかったという歴史である。これは権力の実態というよりも、制度自体がそのように構想されていたというべきではないか。天皇に権力を集中しながらその専制を許さず、権力分立的な実態と形式があったとも考えられる。次第にこの権力の所在のあいまいさが軍部による対外膨張への飽くなき行動を許してしまうことにもつながるが、内閣が国民の意向を受けて解散せざるを得なくなった護憲運動や要求を飲んで利用された普選運動に鑑みても、少なくとも大正期までは上からの改革ではない農村部にまで広がりを見せる市民活動の盛り上がりにも寄与したといえる。長引く不景気にも関わらず、国民の人気に支えられた浜口内閣など今日の社会の隅々にまで広がった政治的無関心とは全く異なる世界が展開されていたことがうかがえる(結果として自らの生活を苦しめていたことにもなるが、そのあたりは都市部と農村における状況の違いなど一概に良し悪しで判断できるものではないだろう)。
    しかし、一向に回復する兆しの見えない不景気は徐々に人々の心を蝕み、極右思想の浸透を許してしまう。この極右思想の陽の面として著者が明治天皇とその治世の理想化を挙げているのは示唆的である。そして全く統制の取れない軍隊は通信交通技術の限界もあいまって誰も暴走を止めることができず統治機構としての明治憲法は終わりを迎えることになる。権力は分立してさえいれば正しく機能するわけではないことを歴史に思い知らされる。

  • 大正期から満州事変までの歴史。主に政局が詳しく書かれており、伊藤博文亡き後の原敬の活躍、山県有朋の暗躍、西園寺公望の存在感、牧野伸顕の権力、軍部の昭和天皇批判、等が登場

    日本は不平等条約等の対欧米差別を外交と、文明の近代化の受け入れで克服しようとした。対して中国は「正義か邪悪か」という自国の基準で直ちに撤廃を要求した。文明感の差だった。
    1926年中国では排日、排欧米のナショナリズム運動が盛り上がり、「ワシントン体制」による関税等の条約の即時廃止要求が起こる
    り無政府状態になる。この強引で急速な要求に欧米は為すすべなく応じた。緩やかな段階的解放で安定的社会変化にこだわった日本は孤立する。そして中国はとうとう日本の関税に対して借款の踏み倒しで対抗する。ここで日本と欧米の協調関係が崩壊する。
    またアメリカでは排日移民法が成立。日本では反米感情が高まるが、政府が沈静化させた。しかし排日移民法に反対する米国の宣教師らが日本国内で運動を起こすが失敗し、反米感情がぶり返す271

    満州事変前後、昭和天皇は陸軍から信頼されておらず不信感を抱かれていた。近衛文麿は「今の陛下は凡庸で困る」と言っていた342

  • 明治天皇崩御から五・一五事件へー
    近代日本の君主制はなぜ崩壊に至ったか?
    張作霖爆殺事件後、昭和天皇はなぜ田中義一首相を問責したかー。東アジアをめぐる国際環境のうねりのなか、変容していく近代日本の君主制。「天皇の政治関与」の理想と危うさとは。のびやかな大正時代が閉塞の昭和を迎える過程で、庶民は何を感じ、どう行動したか。明治天皇崩御から五・一五事件による政党政治の崩壊までを、斬新な視角で活写する。

  • 明治天皇の死から、大戦前夜の醜い時代までの、日本の始まりつつあった政党史、政治史
    プロローグとエピローグで語られる前畑さんはあり得たもう一つの日本史の暗喩だろうか

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著者プロフィール

1952年 福井県に生まれる
1981年 京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学
    名古屋大学文学部助教授、京都大学大学院法学研究科教授などを経て
現 在 京都大学名誉教授、博士(文学)

著 書
『大正デモクラシーと政党政治』(山川出版社、1987年)
『立憲国家の確立と伊藤博文』(吉川弘文館、1999年)
『政党政治と天皇』(講談社、2002年、講談社学術文庫、2010年)
『昭和天皇と立憲君主制の崩壊』(名古屋大学出版会、2005年)
『明治天皇』(ミネルヴァ書房、2006年)
『山県有朋』(文春新書、2009年)
『伊藤博文』(講談社、2009年、講談社学術文庫、2015年)
『昭和天皇伝』(文藝春秋、2011年、文春文庫、2014年、司馬遼太郎賞)
『原敬』上・下巻(講談社、2014年)
『元老』(中公新書、2016年)
『「大京都」の誕生』(ミネルヴァ書房、2018年)
『大隈重信』上・下巻(中公新書、2019年)
『最も期待された皇族東久邇宮』(千倉書房、2021年)
『東久邇宮の太平洋戦争と戦後』(ミネルヴァ書房、2021年)他多数

「2023年 『維新の政治と明治天皇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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