日本はどこへ行くのか 日本の歴史25 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062919258

作品紹介・あらすじ

近代日本の虚構と欺瞞を、周縁部から問い直す。単一民族史観による他者排斥・抑圧・侵略をくりかえし、資本主義的発展の不均衡の中で、同一性を求めて呼び寄せた永遠なる「日本」。アイヌや沖縄、朝鮮半島の人々を巻き込んだ「帝国」日本の拡張。グローバリズムの中の象徴天皇制。境界を超えた視点から「日本」のゆくえを論じる、シリーズ最終巻。

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  • 講談社
    日本の歴史シリーズ 最終巻「日本はどこへ行くのか」


    日本の近代において現れた他者排斥性〜朝鮮、琉球、アイヌの同化政策について考察し、これからの日本のあるべき姿を論じた本


    外国論者を揃えたのは ナショナリズムと差別のシステムとしての象徴天皇制を明示するためか? 際どい論調だが、最終巻にこの論調を持ってくるということは 編集委員も同意見ということか?



    この本の結論は「一国史観を超えて、新たな帰属意識とアイデンティティを探す」ことにあると思うが、一番ヒントとなった論考は、比屋根照夫 の近代沖縄思想史〜伊波普猷 伊波月城 比嘉静観 のコスモポリタニズム。とても面白い論考で 3人の関連本を探してみようと思う



  • 【目次】
    はじめに 比屋根照夫 [003-006]
    目次 [007-011]

    第一章 20世紀の語り[キャロル・グラック] 015
      二十世紀という過去
    1 大きなことば、大きな事件 017
      新世紀、二十世紀の始まり/再び「大きなもの」へ/「グローバル化」
    2 大きな物語 026
      二者択一症候群/国民国家の波/経済の変化/大衆の政治/社会の「大衆化」/複雑な世界
    3 近代の物語 042
      近代の自意識/近代批判/近代への期待/変化の地盤構造
    4 ブレンドとしての近代 053
      近代の世界化/歴史的ブレンド
    5 世界を見る目と日本 061
      二分法を越えて/境界を越えて

    第二章 日本のアジア観の転換に向けて[姜尚中] 067
    1 「戦後の原像」と一国史観の限界 068
      戦後歴史学の二つの立場/日米支配モデルの衰退と歴史修正主義の台頭/近代日本「国史」の優越史観
    2 朝鮮の心象地理と「日本的オリエンタリズム」 077
      日米関係の陰のアジア/「文明」日本と「野蛮」朝鮮というオリエンタリズム/徳川期以来の心象歴史/福沢諭吉の「朝鮮」表象
    3 朝鮮=蕃国観とオクシデンタリズム 092
      記紀神話以来の華夷秩序創作/アジア主義の主宰者としての日本/オリエンタリズムとオクシデンタリズムの結節点としての朝鮮
    4 開かれた地域主義に向けて 101
      日朝関係の深く長い歪み/旧宗主国に期待されるプロジェクト(投企)

    第三章 マイノリティと国民国家の未来[テッサ・モーリス=スズキ] 107
    1 国境、国民、そしてアイデンティティ 108
      境界を越える/境界と“文明”/旅行者、漂流者、そして前近代の境界
    2 国境の確定 116
      日本と国民国家システム/北の国境/境界線の移動/琉球――南の境界/太平洋方面の境界/帝国の境界
    3 境界がマイノリティをつくる 129
      生き延びるマイノリティのアイデンティティ/同化が差異をつくる/国々と人間の移動
    4 自己決定権と国民国家の将来 142
      国境を越えた人的交流/新しい自己決定権の創造へ

    第四章 「混成的国家」への道――近代沖縄からの視点[比屋根照夫] 149
    1 琉球処分と歴史湮滅政策 150
      琉球「両断」政策/謝花昇と参政権獲得運動/沖縄統治の原型と同化主義
    2 伊波普猷の「個性」尊重論 157
      「旧物保存、模倣排斥」/「無数の個性」を「抱合」する国家構想/吉野作造の「非同化主義」/「アイヌと同じく、虐げられたもの」
    3 伊波月城のアジア認識と世界主義 167
      郷土研究/ホイットマンのアメリカ/「新しき戦」の時代
    4 世界人主義、コスモポリタニズムの開花 173
      「囚はれざる自由人」/私は世界人主義/文芸復興/「無線世界」「資本主義の撤廃」へ
    5 沖縄とハワイを繋ぐもの 183
      「対琉政策」批判/タゴールへの共感
    6 「混成的国家」論への道程 190
      「個性の上に咲いた美しい花」/脳裡を去来する沖縄/国境や国家を超えた民族横断的社会

    第五章 〈歴史〉とアイヌ[岩崎奈緒子] 199
      事実と叙述――〈歴史〉を構成するもの
    1 アイヌの生業権の剥奪 201
      国家領域のはざま/安政のニシベツ川争論/ヨイチ川周辺の漁場秩序/開拓使とアイヌの漁業権/蝦夷地と北海道のあいだ――〈歴史〉の断絶
    2 歴史叙述のなかのアイヌ 224
     初期人類学によるアイヌの〈発見〉/土蜘蛛論争――建国神話の〈他者〉/『新撰北海道史』――拡大する国家の〈周縁〉/『アイヌ政策史』――統治される〈原住民〉/〈歴史〉とアイヌ

    第六章 象徴天皇制の未来について[タカシ・フジタニ] 241
    1 象徴天皇制序説 242
      狭義の「天皇制」/君主制の背後/合意形成のテクノロジー
    2 グローバリゼーションのなかの象徴天皇制 248
      皇室のアメリカ化とネオ国際化/「皇室外交」とグローバリゼーション/語りはじめた明仁天皇/ネオ国際化のゆくえ
    3 ジェンダー、ネーション、レイス 262
      男性優位、人権・民族をめぐる変化/女性天皇と民族的ナショナリズム/皇統の血の継承/植民地主義と「日鮮同祖論」/国籍法・入国管理法と「日本人」「日系人」
    4 結びにかえて――「J天皇制」・平和・暴力 278
      「J回帰」/「伝統」と「グローバル化」/〈天皇制〉の未来

    第七章 国民の物語/亡霊の出現――近代日本における国民的主体の形成[ハリー・ハルトゥーニアン] 287
    1 近代と幽霊の目撃現場 288
      日本近代史における政治と文化の相剋/近代――主体を構成する世界の成立/資本主義と国民国家の遭遇/虚構的統一性のための「国民形態」の創出
    2 不均等な歴史――「国民形態」 300
      不均等ゆえに要請された国民形態/明治維新――動乱から自由な聖域の構想/「国民の歴史」をめぐる二つの立場
    3 ブルジョワ的自己 311
      内外を区別しつつ時間を均質化する資本主義/明治国家の富国強兵政策/政治的可能性の逼塞と「私小説」/「公」と「私」の観念/精神主義の系譜――ブルジョワ的な自己の世界
    4 常民 320
      明治の終焉と社会的なものの出現/大衆社会の出現――消費する主体の登場と商品の物神性による支配/柳田民俗学が見出した「常民」とその風俗/「常民」を結びつける霊的なものと共同の身体/永遠化される「風俗」/常民と国民形態の癒着――亡霊性の消滅
    5 よき日本人 335
      戦後における「日本人論」の流行/高度経済成長と「戦後思想」の展開/『期待される人間像』と「文化の時代」/教育を通じての国民の主体化/戦後の経済復興への賛美と「京楽主義」への批判/戦後民主主義への非難/「民族」としての日本人と新たな「家族国家」/愛国心=日本国の象徴としての天皇を愛すること
    6 文化の時代 351
      「近代を超える時代」――新たな保守主義の台頭/文化的なものによる社会的対立の排除/日本文化の特質の再評価/「文化の時代」と「近代の超克」/経済大国と総中流化――無階級社会日本?/太平計画の帰趨と日常のゆくえ

    参考文献 [365-380]
    訳者紹介 [381]
    索引 [383-389]

  • 文庫本日本の歴史 いよいよ完結!
    世界・周縁から見定める近代日本の姿とゆくえ。
    近代日本の虚構と欺瞞を、周縁部から問い直す。単一民族史観による他者排斥・抑圧・侵略をくりかえし、資本主義的発展の不均衡の中で、同一性を求めて呼び寄せた永遠なる「日本」・アイヌや沖縄、朝鮮半島の人々を巻き込んだ「帝国」日本の拡張。グローバリズムの中の象徴天皇制。境界を超えた視点から「日本」のゆくえを論じる、シリーズ最終巻。

  • キャロル・グラック氏の文は出色の出来
    他の人たちの書いた箇所も政治的には正しいのですがどうも

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著者プロフィール

キャロル・グラック CAROL GLUCK
コロンビア大学歴史学教授。1941年、アメリカ・ニュージャージー生まれ。ウェルズリー大学卒業。1977年、コロンビア大学で博士号取得。専門は日本近現代史・現代国際関係・歴史学と記憶。1996年アジア学会会長。2006年、旭日中綬章受章。著書に『歴史で考える』(岩波書店)。共著に『日本はどこへ行くのか』(講談社学術文庫)、『思想史としての現代日本』(岩波書店)などがある。


「2019年 『戦争の記憶 コロンビア大学特別講義 学生との対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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