殿様と鼠小僧 松浦静山『甲子夜話』の世界 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (2009年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (290ページ) / ISBN・EAN: 9784062919340

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江戸時代の社会情勢を背景に、隠居生活を送った平戸藩主の松浦静山が描く随筆「甲子夜話」のエピソードは、当時の大名の生活や人間関係を生き生きと伝えています。特に、大名の出世争いや隠居の理由、長寿化した武士...

感想・レビュー・書評

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  • 歴史

  • くどくなる気みじかになるぐちになる思い付【つく】事みなふるくなる
     横井也有

     希望する人には65歳まで雇用義務化となり、悠々の「ご隠居さま」生活はまだまだ先、という方も多いだろうか。調べてみると、江戸時代、幕臣たちの隠居の平均年齢がほぼ65歳という一時期もあった。
     氏家幹人「殿様と鼠小僧」によると、享保3年(1718年)に幕臣が隠居願いを提出した年齢は、平均で64.4歳。とはいえ興味深いのは、その後しだいに年齢が下がり、文化元年(1804年)には、平均52.2歳にまで下がっている。他方で、70歳以上の高齢現職者も増え、長く職にとどまるか、若くして隠居を選ぶか、二極化が進んでいたことがうかがえる。
     掲出歌は、横井也有【やゆう】という藩士が、老いた人間のくせを狂歌にしたもの。

      聞【きき】たがる死【しに】ともながる淋しがる出しやばりたがる世話やきたがる

     これらの狂歌を、隠居した人々は自戒をこめて書き写していた。その1人が、肥前国平戸藩(現長崎県平戸市)の第9代藩主松浦静山。40代で隠居し、随筆「甲子【かつし】夜話」に、この狂歌を書き写していた。
     ところで、静山は81歳で没するまで、30人以上の子宝に恵まれた。そのうち、隠居後に生まれたのが何と20人。70歳を過ぎても子どもを授かっていたことに驚かされる。
     女児の1人は、公家に嫁いだ中山愛子。その娘は、のちに明治天皇の生母となった慶子である。明治天皇の曽祖父でもある静山は、先の狂歌とは無縁の老境だったかも。

    (2013年4月14日掲載)

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著者プロフィール

氏家 幹人(うじいえ・みきと)
1954年福島県生まれ。東京教育大学文学部卒業。歴史学者(日本近世史)。江戸時代の性、老い、家族を中心テーマに、独自の切り口で研究を続けている。著書に『大名家の秘密』(草思社)、『かたき討ち』『江戸人の老い』『江戸人の性』(いずれも草思社文庫)、『増補版 江戸藩邸物語』(角川ソフィア文庫)、『武士道とエロス』(講談社現代新書)、『江戸の少年』『増補 大江戸死体考』(いずれも平凡社ライブラリー)、『不義密通』(洋泉社MC新書)、『サムライとヤクザ』(ちくま文庫)などがある。

「2021年 『文庫 江戸時代の罪と罰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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