- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062919852
作品紹介・あらすじ
ソウラヴァ(首飾り)とムワリ(腕輪)をそれぞれ逆方向に贈与していく不思議な交易「クラ」。「未開社会の経済人」は、浅ましい利得の動機に衝き動かされる存在なのか?物々交換とは異なる原理がクラを駆動する。クラ交易は、魔術であり、芸術であり、人生の冒険なのだ。人類学の金字塔が示唆する「贈与する人」の知恵を探求する。
感想・レビュー・書評
-
拾い読みして必要そうなところのコピーをとった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
膨大な記述に圧倒されて途中で心が折れつつ気を失いつつ、いちおう最後まで。これが100年前(1922)に書かれているということにただただ驚く。自分が「フィールドワーク」などと呼んでいるものはなんとちっぽけなものなのかとも思うけど、文化人類学者じゃないので仕方ないことにする。
序論 この研究の主題・方法・範囲 は、フィールドワークのマインドセットや方法論として得るものが多かった。また、十一章までの膨大な記述を経た上で十二章を読むと、フィールドでの参与観察から積み上げた事実を整理し解釈して「意味」を見出していくまでの著者の思考を垣間見ることができた。 -
ソウラヴァ(首飾り)とムワリ(腕輪)をそれぞれ逆方向に贈与していく不思議な交易「クラ」。「未開社会の経済人」は、浅ましい利得の動機に衝き動かされる存在なのか? 物々交換とは異なる原理がクラを駆動する。クラ交易は、魔術であり、芸術であり、人生の冒険なのだ。人類学の金字塔が示唆する「贈与する人」の知恵を探求する。
-
マリノフスキの全文かと思っていたら、訳者が訳者が縮小したものであると書かれていた。だから、カヌーと呪文のことが多かったわけである。全文500ページが訳されるのはいつであろうか。世界の名著を訳者が補足したと書いてあるので、世界の名著であれば、どこの図書館でもおいてあるのでそこで読んでもいいと思われる。
-
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740703 -
マリノフスキーによるトロブリアンド諸島の民族誌。贈与交換の制度的な結晶としてのモカの慣行と、それを支える呪術に関する生き生きとした叙述もさることながら、以後の比較・理論的研究に資するように貴重な文化事例を記録するための方法論についてしっかりとした議論がなされる。
モカではまさにモカの中で交換されるための希少品(首飾りと腕輪)を当該地域に住む集団間で一方は右回りに、他方は左回りに交換する。モカは互酬的な贈与であり、首飾りをもらった後に数年おいて腕輪を返礼する(もしくはその逆)。モカでの交換に伴って、生活物資の物々交換も行われるが、住民たちの心理にとって重要なのは儀式的に贈与される装飾品である。ここで、モカの参与者をまとめ上げるためにも、モカにおける贈与の価値を高めるためにも重要なのが呪術である。
マリノフスキーは参与観察を通じて、モカの慣習と呪術の意義に特に注目したためにこれらについては詳しく論じられているが、例えば首長位がどのように受け継がれるか、一般人と首長の格差は何によって決まっているかなどはあまり論じられていない。それよりもむしろ、丁寧な描写を通じて、未開人は生活上最低限必要な身体的欲求を充足するための経済活動のみを行うなどといった当時の未開人観を覆すことに主眼があるようだ。
マリノフスキーはトーテミズムヤタブーなどの概念のように一地域で見つかった文化事例が、その概念を知ってから世界を見ると世界中多くの場所で独立に発見されることがあることを参照しつつ、モカが象徴する贈与の問題系を新たに切り出している。そしてそれはモースの『贈与論』で結実することになる。近年はこのような態度を逆に先入見を持ってフィールドに行くものが陥る誤謬と考える向きもあるかもしれないが、他の現象と比較可能な認識が得られて初めて学問的意義を持つのだというマリノフスキーの主張は意義深いと思う。 -
「西太平洋の遠洋航海者」というこの本のタイトルが示すのは、ポリネシアの島々の異なる部族の住民たち。
彼らは、特別高価でもなく、実用性もたいしてない装飾品を交換し合う、「クラ」という儀式を行います。
その儀式のために、頑丈なカヌーを作り、そのカヌー作りのために技術者を支え、必要な木材を調達すべく森林を管理している島の人々の生活は、このクラが大きなものを占めていることがわかります。この儀式で交換されるのは物質的な価値ではなく、交流という社会的価値。
「経済学」のスタートラインはこのような贈与のかたちだったのかも。「なぜ人は交流するのか」「なぜ外に出て行くのか」その根源的な問いへのヒントはあるでしょう。
もうひとつ、この本の中で非常に重要な要素が「呪術」
いかがわしく思えますが、「おまじない」とでも言えば多少マシでしょうか。カヌー作りのあらゆるステップ、農作業、船出、あらゆるタイミングで呪術の出番は来ます。
きっとこれには宗教または科学の原点があるんだと思います。正直理解は追いついていないのですが、自然の中に、人々の行動の中に内在する「不安定さ」を説明する呪術は、単に「未開文化」といえない要素が含まれていると思います。
難しいところもありますが面白いです。「贈与」を考える上では必読でしょう。巻末の解説で中沢新一が言うように、経済の形が変わってきた時代にこそ、読まれるべきなのかもしれません。 -
[ 内容 ]
ソウラヴァ(首飾り)とムワリ(腕輪)をそれぞれ逆方向に贈与していく不思議な交易「クラ」。
「未開社会の経済人」は、浅ましい利得の動機に衝き動かされる存在なのか?物々交換とは異なる原理がクラを駆動する。
クラ交易は、魔術であり、芸術であり、人生の冒険なのだ。
人類学の金字塔が示唆する「贈与する人」の知恵を探求する。
[ 目次 ]
この研究の主題・方法・範囲
トロブリアンド諸島の住民
クラの本質
カヌーと航海
ワガの儀式的建造
カヌーの進水と儀式的訪問―トロブリアンド諸島の部族経済
渡洋遠征への出発
船団最初の停泊地ムワ
ピロルの内海を航行する
サルブウォイナの浜辺にて
ドブーにおけるクラ―交換の専門技術
呪術とクラ
クラの意味
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
文化人類学の始まりともいえる本。