怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
4.14
  • (11)
  • (20)
  • (2)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 116
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062920179

作品紹介・あらすじ

偉大な皇帝ナポレオンの凡庸な甥が、陰謀とクー・デタで権力を握った、間抜けな皇帝=ナポレオン三世。しかしこの紋切り型では、この摩訶不思議な人物の全貌は掴みきれない。近現代史の分水嶺は、ナポレオン三世と第二帝政にある。「博覧会的」なるものが、産業資本主義へと発展し、パリ改造が美しき都を生み出したのだ。謎多き皇帝の圧巻の大評伝。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いやー、こりゃすごい。
    ナポレオン三世の人となりだけでも十分に予想外の記述だけど、19世紀後半のフランス社会の変貌ぶりの記述がすばらしい。有名なパリ大改造にとどまらず、金融産業資本主義の誕生にバブル経済、貧民対策としての公団建築。
    特に金融に焦点をあてた章は面白い。利率を下げて投資を刺激した件はマクロ経済学のテキストに載っててもおかしくない。ソシエテ・ジェネラルが設立された経緯も興味深い。発券機能をめぐってのすったもんだも面白い。

    政治・外交に関しても、イタリア・ドイツの国民国家成立やクリミア戦争の展開、英仏の融和 などいろんなことに目配りされている。
    いや、たしかにこの時代の前と後ではフランス社会や外交の風景がガラッと変わったんだろうな、と思える本。

    次はナポレオン三世が範としたイギリス社会に関する本を読んでみよう。

  • 分厚い本ですが、短く区切られた構成と堅苦しさとは無縁な文章のおかげでちょっとの空き時間でも気軽に読める親しみやすさがあります。しかも時間を忘れてしまうほどの面白さ。ユゴーやマルクスなどのビッグネームにこきおろされたり、普仏戦争の惨敗が目立って後世に散々な評価を残したナポレオン3世ですが、この本を読むと「それなりに上手くやったトボけた味のおとっつあん」という印象を持ちます。もちろん看過できない失点もいくつかありますが、経済・産業政策では素晴らしい功績を残しています。ただこの人、女性関係があまりにも...

  • 幕末といえばフランスではナポレオン三世の第二帝政に相当する、ということで読み始める。正直、悔しいけどやられた……。面白いじゃないかナポレオン三世。

    これまでナポレオン三世についてはユゴーやマルクスのような左翼史観により、大ナポレオンの不肖の甥、滑稽でどこかカリカチュア的な愚物といった否定的なイメージが付与され、あまりまともには評価されてこなかった、という。だが、こういったある意味間違ったイメージを払拭し、正当な評価を下そうとの趣旨で書かれたのが本書である。確かに「産業皇帝」の異名にふさわしく、ナポレオン三世が実現した社会・産業分野での改革は、オスマン男爵のパリ大改造をはじめとして、その先見性もさることながら大いに評価されてしかるべしと思う。その墓所さえ未だに本国ではなくイギリスにあるというから、実に不当な扱いを受け続けてきた皇帝の運命を思うにつけ、なにやら哀れを催します。

    19世紀のフランス史について知識があったほうが、わかりやすいとは思うけれども、なくても基本的なところは理解出来るかと思う。文章は簡潔で、ユーモアに富む。譬えがいちいちおかしくて笑える。左翼言説の「水戸黄門性」って最高。

  • 全600ページに上る長い評伝だが、飽きさせない。文学者の鹿島氏が書いており、左翼史観に偏らず、産業皇帝として、フランスの近代制度の礎を築いた人物として、ナポレオン3世を正当に評価しようとしている所が勉強になる。なかでも、オスマンによるパリ改造、ペレール兄弟のクレディ・モヴィリエ(投資ファンド)、鉄道敷設、ロスチャイルドとの抗争、皇帝の発案による労働者慰労施設の建設や、労働者の集会を擁護する法律、関税クー・デタによる産業の育成、高級娼婦の暮らし、デパートの発展などはたいへん興味深い。モルリー公・ペルシニーを中心とした権力奪取の様相も面白い。ナポレオン3世は96%という大変高い得票で、「民主的」に皇帝に選ばれたのである。フランス革命は重要な歴史的事件であったが、右に左にゆれたフランスの歴史のなかで、民衆はいつも不幸であった。このなかにあって、「帝国とは平和である」というナポレオン三世の言葉は重い。普仏戦争で負けたときも、メンツを保つために、最後の突撃を進言する臣下を斥け、「私には兵士を殺す権利はない」といい、自ら捕虜となったところは、なかなか偉大な人物であったと思わせる。明治維新前後にフランスの皇帝だった人だから、渋沢栄一の銀行設立や、「坂の上の雲」の秋山好古の「馬術」にも関わってくる。ナポレオン三世は、日本の近代を理解するうえでも重要な人物である。

  • 三世というと、ルパン三世を思い出す。
    しかし、同じフランスが生んだこちらの三世は、とらえどころがない。

    学校の世界史を普通にさらっただけの知識では、叔父のナポレオンの威光で皇帝となり、普仏戦争で捕虜となった残念な皇帝、というイメージくらいか。
    もう少し詳しいと、今のパリの街並みを整備した人、という程度。
    当時、ヨーロッパ各国にいた”皇帝”像をもって捉えようとすると理解に苦しむ。
    かといって共和制寄りかというと、そうでもない。

    彼の時代を第二帝政と呼ぶが、”第二”と言っても実質ナポレオン三世の時代。
    彼だからこそあのような時代になったのだろう。
    帝政ではないが、その後のファシズムもシステム上はさほど差異はない。そのような意味で極めて幸運な時代、ベルエポックだったのかもしれない。

  • 『英国マザーグース物語』を再読したので
    『やる夫が鉄血宰相になるようです』を再読し
    『やる夫で学ぶ第一次世界大戦』を再読しつつこれも再読する
    ナポレオン三世はあんまり好きになれないが
    フランツ・ヨーゼフ1世はいいよね
    ヴィルヘルム1世もいいよね
    ビィクトリア女王もいいし
    ヴィルムヘルム2世も人間味があるね
    ナポレオン三世はフランス近代化に功績があったことは間違いないし
    イタリア戦争も普仏戦争もナポレオン三世でなかったからと言って
    結果が変わったかどうかはわからないから
    もっと評価されていいのはわかるが
    嫌われるのもわからないでもない

    2013/2/22
    ナポレオン三世=フランス第二帝政
    とすれば否定する余地はあまりないが
    「怪帝としての評伝」とフランス第二帝政の概観が
    整理されておらず読みづらい
    第二帝政について概説が不十分かつ主旨曖昧で
    第二次産業革命に結局王政でも共和制でもなく帝政が
    すなわちナポレオン三世がどれだけの役割を果たしたのか
    結論づけれらておらず怪帝のまま

    マルクスユーゴーへの批判もわかるけれど
    プロイセンフランス戦争の敗北は
    指導者ナポレオン三世の敗北と同時に
    同時代フランスの敗北でもあり
    そもそも相手にするほどのものでもないはず

    近世から近代へのいつでも急激な変移において
    国家指導者が理想主義であることがどれだけできるか
    後世からの成功したから良い政治
    失敗したから大悪人というのも
    結果からの一面でしかない

  • まあなんという振り幅の激しい人であったことか!
    あるときは慎重過ぎ、あるときは大胆過ぎ。
    どちらの場合も、成功と失敗があった。
    社会保障の先駆けやインフラの整備、パリの大改造等の
    功績は」素晴らしいけれど、同等にとんでもない事も多し。
    最後は捕虜になり、英国で余生を過ごす・・・あぁ怪帝!
    産業革命、旧新入り混じった政治情勢・・・加速する歴史に
    振り回されながらも、フランス最後の皇帝となった男の
    生涯を詳細に綴っている。
    女性関係もすごいもんだ!
    画像と不随する説明が多く、長文でもわかりやすい。
    なんといってもこの一冊で歴史とその当時の情勢がわかる。
    鹿島先生の渾身の一冊ですね♪

  • パリについての紀行文なら、鹿島茂氏が第一級。何より、詳しいし、文章も上手い。
    但しこの本は、筆者が少し構えて、研究者の側面を前に出した本格本。ナポレオン三世については、ちゃんとした本がないので、貴重な良書だ。以下別途

  • その生い立ちから、傍目には「無茶?」と見える振る舞いで権力奪取を目指してみて失敗し、やがて大統領となり、クーデタで皇帝となり、敗戦で廃されてしまうまでのナポレオン三世の歩みが本書には網羅されている。彼と行動を共にした、または対立した男達や、彼の人生を彩った女達に関する言及も多く、それぞれ面白い。更にナポレオン三世の強い望みを受けて、彼が抜擢したオスマンが推進した“パリ改造”に関する話題も、「ナポレオン三世の事を扱った本だったよな?」と一瞬思う程に詳しく綴られ、非常に興味深い…

    決して評価が高いでもない皇帝…しかし、「現代の基礎」を整えた側面もある、理想家肌な皇帝…非常に興味深い出会いということになった!!

  • 偉大な皇帝ナポレオンの凡庸な甥が、陰謀とクー・デタで権力を握った、間抜けな皇帝=ナポレオン三世。しかしこの紋切り型では、この摩訶不思議な人物の全貌は掴みきれない。近現代史の分水嶺は、ナポレオン三世と第二帝政にある。「博覧会的」なるものが、産業資本主義へと発展し、パリ改造が美しき都を生み出したのだ。謎多き皇帝の圧巻の大評伝。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

フランス文学者

「2020年 『「悪知恵」のすすめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鹿島茂の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
J.L. ボルヘ...
有効な右矢印 無効な右矢印

怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史 (講談社学術文庫)を本棚に登録しているひと

新しい本棚登録 1
ツイートする
×