天災と国防 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062920575

感想・レビュー・書評

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  • ‪寺田寅彦が大正〜昭和初期に書いた災害に関する随筆の再構成集。
    古さを感じないのは、作者の視点と行動の原則が的確だから。そして人が変わっていないから。この後の戦争や災害を経ても哀しいくらい人は変わっていない。ロジカルに考えず忘れっぽい。
    文明が進化するほど非常時の被害は甚大になる皮肉。‬

  • 名大の福和先生が著書で何度も引用していたけれど、そこまでの濃密さがある訳ではない。
    むしろ、雑記的な性格の強い本と思った。

    そんな中でも、
    「人が絡んでいるからこそ完全な対策は無理」
    「優先学的災害論(防災できる人が生き残る)」
    「災害とメディア(大げさに切り取る?)」
    といった点は印象的。
    また、ラストの「厄年とetc.」は、40前後にして惑っているような哲学的内容。

  •  本著も「ドストエフスキイの生活(小林秀雄著)」同様、「地震と社会〈下〉(外岡秀俊著)」に言及があったので読んだ。
     ほんと、寺田寅彦の「「地震の現象」と「地震による災害」とは区別して考えなければならない。現象のほうは人間の力でどうにもならなくても「災害」のほうは注意次第でどんなんにでも軽減されうる可能性があるのである。(p 38)」のひと言は、当たり前ながらも、秀逸だ。
     でも、学者が前もって警告しても被災者(一般人)は時が過ぎれば覚えてられないということを「つまり、これが人間界の「現象」なのである。(p137)」と至極ニュートラルな立場で語る。でも寅彦は悲観して終わることなく、「教育」の大切さを説く。
     一方、「文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向があるという事実を十分に自覚して(後略)」という寅彦の言葉、これをどれほどの現代人が心して科学技術を享受しているのか...。寅彦にしてみれば氏の憂はより確実なものになっている。透徹した見識を持つ寺田寅彦に、改めて、会えた一冊だ。

  • 震災直後によく取り上げられたエッセイ。

    「為政の枢機に参与する人々だけは、この健忘症に対する診療を常々怠らないようにしてもらいたいと思う次第である」
    「数千年来の災禍の試練によって日本国民特有のいろいろな国民性のすぐれた諸相が作り上げられたことも事実」

  • 関東大震災の頃に書かれたとは思えないくらい今の状況にぴったりと当てはまる意見が多かった。人間は学ばないいきものなのね。

  • 残念ながら地震雑感とそれほど変わりない。重要な事を言っているのはわかるけど、出版社側のちょっとした怠慢じゃないだろうか?

著者プロフィール

1878–1935
東京に生まれ、高知県にて育つ。
東京帝国大学物理学科卒業。同大学教授を務め、理化学研究所の研究員としても活躍する。
「どんぐり」に登場する夏子と1897年に結婚。
物理学の研究者でありながら、随筆や俳句に秀でた文学者でもあり、「枯れ菊の影」「ラジオ雑感」など多くの名筆を残している。

「2021年 『どんぐり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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