世界史への扉 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062920650

作品紹介・あらすじ

疫病が世界を一体化した。鎖国は一七世紀の世界的流行だった。歴史上には各地にいくつもの"ルネサンス"があった-。モノとヒトの組み合わせから世界史の同時性を探り、歴史学の内外で唱えられる新視角を紹介・検証する小論集。西欧の歴史を普遍のモデルとせず、多様性と日常性に着目しながら、現代の激動を解読する「歴史への感受性」を磨く。

感想・レビュー・書評

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  •  予想をこえた規模と質でのモノとヒトと情報の交流。そこにうみおとされる、異形の文明の顔つき。陸の文明ですらそのたすけをうけざるをえない海の文明の数々。
     残念ながら、海の文明は移籍を残さず、遺物は失われやすい。島と岸とにわずかに刻まれた痕跡をもとにして、過去が語られる。そんな制約に耐えて、海の歴史学を浮かびあがらせることが、できるだろうか。(p.60)

     この現代世界のただなかにあって、わたしたちは奇妙な当惑にさいなまれている。「一つの歴史」の可能性が高まるほどに、かえって、「反・歴史」の直覚に心を動かされる。ふたたび、人類は、「二つの歴史」のモチーフをとりもどそうとするのだろうか。異形とユートピア、死後と宇宙への想像力のなかに、もう一つの歴史への端緒を見つけながら。(p.133)

     贅沢という「背徳」が、世界史をつくってきた。煙草も宝飾品も、いや、コーヒー、カカオ、ラム酒、そして陶磁器から茶まで。節倹の美徳に浸された歴史家の怒りの対処である贅沢は、けれどもしたたかな自信によって歴史の主役のひとりを演じてきた。16世紀の後半は、その舞台として「背徳」の異臭にあふれている。(p.240)

  • 世界史のさまざまな場面を
    随筆の形式でつながりなく点描して
    改めてつながりを点検するような作品
    折に触れて確認し返して
    立ち位置地点を確かめる一冊

  • 新書文庫

  • 世界史上のさまざまなテーマについて、1項目につき約4ページほどの分量で、コンパクトに論じた文章が収録されています。世界史の全体を俯瞰して統一的な見方を示すのではなく、多様なトピックをそれにふさわしい仕方で取り扱う手法がよく示されています。

    アナール派以降の歴史学は、実証的に細かいトピックを取り上げるばかりで、歴史の全体像を描き出そうとする志向に乏しく、ずぶの素人としてはどうにもとっつきにくい印象があるのですが、本書にも同じようなことを感じてしまいました。

    かといって文明史のような大掛かりな話が展開されている本を読むと、どうにもうさんくさく感じてしまいますし、まだ歴史との付き合い方がうまくつかめないでいます。

  • また誤ってコラム集を買ってしまった。

    半分酔っぱらってても読める気軽さ故に、
    半分酔っぱらってる時に少しずつ読み進め、
    「新視覚」とある割には心に刺さるところが少なく、
    結果、ほとんど印象に残らなかった。

    新聞以外で樺山氏の文章は初めて読んだが、
    その真髄はテーマを絞ったほかの本で味わおう。

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著者プロフィール

 印刷博物館館長。東京大学名誉教授。専門は、西洋中世史(フランス中世史)、西洋文化史。
 1941年東京都生まれ。1965年東京大学文学部卒業、1968年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1969年京都大学人文科学研究所助手。1976年東京大学助教授、1990年東京大学教授、2001年退官。この間、文学部長(1997年4月〜1999年3月)、史学会理事長(1999年6月〜2001年5月)を歴任。2001年国立西洋美術館館長を経て、2005年10月より現職。2005年紫綬褒章受章。
 東京大学在学中は、日本における西洋史学研究について、その文明史的な存在意義を主張して西洋中世史研究の「中興の祖」とされる堀米庸三の下でフランス中世史を学ぶ。12世紀中葉からの北フランスに勃興した大聖堂などの宗教建築様式で知られる「ゴシック」を生み出した中世思想をテーマとして研究者歴を刻む。次第にその後、研究領域を西洋文化史全般へと移行させていったことから、おのずと対象とする時代も拡張されて近世・近代にもおよぶ。風土や町、身体や美術、とりわけ絵画などを題材とすることにより、斬新な視点から西洋史の読み取りに挑戦していく。こうした新しい歴史記述の試みは、その平明な記述とあいまって、研究者だけでなく多くの一般読者にも支持されている。

「2015年 『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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