- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062920742
作品紹介・あらすじ
一九二〇年代以降、田邊元と西田幾多郎は日本的・独創的哲学=「京都学派」を創造する。田邊哲学=愛の哲学と西田哲学=欲望の哲学との対決から誕生した「種の論理」。その最重要の達成は、二十世紀後半から展開する現代思想、構造主義、ポスト構造主義、「野生の思考」、認知科学を先取りしていた。豊饒なる田邊哲学の全貌に迫る。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
種の論理―来るべき哲学(微分的練習曲◆ある種の社会主義◆構造主義と種の論理◆多様体哲学としての種の論理◆個体と国家)
「場所」の精神分析(欲望としての西田哲学◆場所‐の‐名前◆狂気と叡智◆対決西田哲学)
最期の田邊哲学(愛の戦いとしての哲学◆哲学から非哲学へ◆絶対無に結ぶ友愛)
第12回伊藤整文学賞評論部門
著者:中沢新一、1950山梨市生、哲学者、東京大学文学部宗教学宗教史学科→同大学院人文科学研究科、明治大学特任教授/野生の科学研究所所長
解説:鷲田清一、1949京都市生、哲学者、京都大学文学部哲学科→同大学院文学研究科、大谷大学教授・大阪大学名誉教授 -
中沢新一さんが何故か日本の哲学者田邊元について書いた本だが、これ自体がひとつの哲学書であり、中沢さんの本はいつも非常にわかりやすいのに、今回は抜群に読み応えがあり、難解な部分もあった。
田邊元の「種の論理」が、なぜ中沢さんの興味をひいたのだろう、とずっと不思議だったのだが、これを読んだら納得がいった。田邊元「種の論理」(岩波文庫)を読んだときにはイメージしていなかったような解釈が施され、「ああ、そういうことだったのか」という感じだ。
西田幾多郎に関しても章を割いて記述されているが、そのへんがさすがに難しい。田邊元は数学の話題が出てこない限り、さほど難解な印象はないが、西田は最初から最後まで難しい。
中沢さんはここで、西田哲学を浮き彫りにするためにラカンを引っ張り出してくるのだが、その辺はどうも腑に落ちない気がした。
ちょっとすっきりしない部分もあったが、この本は中沢さんの著書としてはずいぶん濃密に「哲学」であり、ラカンだのドゥルーズだのマラルメだの、多様な知識を一挙に放出するかのような、息をのむ鮮烈さを有していた。