デカルト、ホッブズ、スピノザ 哲学する十七世紀 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062920766

作品紹介・あらすじ

近代哲学の祖とされ、「心身二元論」に拠ったデカルト。国家契約説をとなえ、「万人の万人に対する戦争」で知られるホッブズ。「神即自然」を主張したスピノザ。十七世紀の哲学シーンを彩る三人の思索は、動乱期のヨーロッパを生きたゆえの魅力にあふれている。神、国家、物体と精神…、根本問題をめぐる三様の思索を、鮮やかに浮き彫りにする。

感想・レビュー・書評

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  • ホッブズ、デカルトの議論を参照しながらも、後半には、スピノザの人間論と政治論に収斂していく。

    中でも、スピノザの人間の本質に対する捉え方と政治体制論のつながりが論じられている点が非常に興味深かった。

    17世紀は、現在の経済学が基盤としているような合理的な人間の捉え方が主流になった時代と考えていたが、スピノザは必ずしも合理性だけでとらえられない人間像を論じている。

    さらに、そこから社会のあり方として、科学的合理性を基盤に置く社会のあり方だけでなく、聖書の教えを基盤にする社会のあり方を理解しうる政治論を検討していたということは、あまり知らなかった。

    その後の政治学、経済学の中であまり議論がされることのなかったような論点があるように思い、視野が広がった。

  • 大変むずかしい本だった。読むのに苦労した。デカルト、ホッブズ、スピノザについて予備知識がほぼない状態で読んだのが間違いだった。原著を読むなどのレベルになってから補助的に読むものであるように思われる。本の中で展開される論理自体は面白かったのだが、原著を知らないのであまり理解しきれなかったのが残念だ。

  • 読んでる途中だが、すごく面白い。最初の論文も面白かったが、2つ目の「社会契約」にかんするところとか、すごく納得。ホッブズのやり方では契約が成立しえず、そこでスピノザが集団の圧力というのを持ち込んだという話とか。この本を読む限り、自分はスピノザと仲良くなれそう。21世紀になって、ようやく庶民でもスピノザが理解できるほどに時代が進んだということか。続きも楽しみ。

  • 『エチカ』とドゥルーズ『差異と反復』のミッシング・リンクたりうる「無数に異なる同じもの」以下、主にスピノザを論じた論文集。先に『スピノザの世界』を読んでおいたほうがいいのか迷ったが、元になった単行本は『世界』よりも古いようなので気にすることもなかった。それにしてもスピノザ本人の用いていない"反復"というタームが、何故にこうもスピノザ思想と高い親和性を持っているのだろう。"それ以外に理解しようのない怪物的思考"について、更に思索を深めていく必要性を感じた。

  • 難しい。こういう西洋哲学・思想ものは久々だったので、歯応えがありすぎでした。ところどころ理解できる部分もあるのですが、用語にしても思考経路にしても、つまりどういうことなの(?)と何度も自問しながら読みました。ただ、こういう刺激は気持ちよく、たまには哲学書も読んでみるものだなあと思いました。それにしても、最近はスピノザがブームなのでしょうか?

  • ちょうどスピノザブームまっただ中のとき生協で見つけて購入。三人を架橋する内容かと思っていたらそれぞれについての論考集というかんじですこし残念ではあったけれど、スピノザの自我論についての見識を深められたのでまんぞく。聖書読解のあたりはもう一度読み返してきちんと自分の中で咀嚼したい。

  •  タイトルから十七世紀哲学を俯瞰するような類の本かな、と思い、デカルト目当てて読み始めたのですが、見事にスピノザの本でした。しかし面白かった。
     スピノザは棘であり、そして哲学史における一つの断絶である。断絶が起こっているということはその先が更新されていないということでありますから、スピノザは今もって現代性に富んでいる。といった信念の元で、時にドゥルーズ、フーコーなどを参照し接続しながら、スピノザ像の更新を図ろうとする、そんな著者の研究成果がたくさん詰まった一冊。ということでいいのかな。
     ホッブズの問題意識を引き継ぐ形で契約説を更新し、そのことでかえってその不可能性を暴き立ててしまった、という「残りの者」、無神論者と非難されるきっかけを作った論文を紐解き、徹底したテクスト内在性に立脚したスピノザ独自の文法を引き出し誤謬を糺す「スピノザと敬虔の文法」「スピノザの聖書解釈」、論証という形式を徹底することで主体の消失を目論見た思考方法を追った「精神の眼は論証そのもの」、そして神の実体をめぐる二つの矛盾した議論を反復によって調停し、小文字の神としての人間の心身二元論に一つの回答を提示する「無数に異なる同じもの」といった論文が特に素晴らしかった。上野さんの文章は、コンパクトかつスマート。徹底した読解から導き出される論理的帰結を足がかりとした記述は、本来鈍重さすら感じさせてもおかしくない慎重さでありますが、それでいて夾雑物などまったくないスマートさのためでしょう、どこか軽やかさすら感じられます。
     決して易しい論文ではないのですが(掲載誌はがちがちの学術誌)、その素敵な文章と、また節々から感じられる情熱から、一気に読ませていただきました。情熱はこの本の一つのキーワードです。最後に掲載された論文は、日本スピノザ協会創立を記念しての演説文ですが、これが熱い熱い。著者にとっては、これまでの論文を追い全部を理解した上でこの演説文に触れ、未来のスピノザ研究者を触発したいとの意図でこの位置の収録だったのでしょうけれど、門外漢はこの文章から読み始めるのがいいかもしれません。とにかく、読んでてわくわくする文章です。その上で著者の着眼点も全部披露されているのだから、書き下ろしの序文も素晴らしいのだけれど、こちらの方が最初の挨拶に相応しいと思いました。

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著者プロフィール

1951年生まれ。大阪大学大学院文学研究科教授。
著書
『スピノザの世界―神あるいは自然』(講談社、2005年)
『デカルト、ホッブズ、スピノザ―哲学する十七世紀』(講談社学術文庫、2011年)
『哲学者たちのワンダーランド―様相の十七世紀』(講談社、2013年)
『スピノザ『神学政治論』を読む』(ちくま学芸文庫、2014年)などがある。

「2017年 『主体の論理・概念の倫理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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