- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062920896
作品紹介・あらすじ
フロイト精神分析を構造主義的に発展させ、二〇世紀の思想潮流にあって、確固たる地位を占めたラカン。本書は、ラカン最初期の一九三〇年代に発表された五篇の論考を収録。「症例エメ」「"吹き込まれた"手記」「パラノイア性犯罪の動機」の三篇は、症例報告の記録性があり、明澄ですらある。現代思想の巨人の哲学の出発点を探るための必読書である。
感想・レビュー・書評
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ジャック・ラカンがとうとう文庫になった!と妙に感慨深く、早速購入して読んでみた。
ラカンごく初期の、症例報告などが5編収められている。訳者は宮本忠雄・関忠盛両氏。宮本氏は訳者たち自身がラカンをぜんぜん理解していないという悪訳『エクリ』(弘文堂)の翻訳者の一人で、「戦犯」(笑)である。精神医学の専門家であって、思想や文学にはあまり明るくないと思われる。
このごく初期の文章を読んでみてなにより衝撃的なのは、「ラカンが<ふつうの、わかりやすい文章>を書けている!」という事実である。
従って後年のあの超難解な、文脈が崩壊したような文章は、言語障害によるものではなく、思考があまりにも飛翔しすぎて文章として破綻してしまっているのだということがわかる。
症例として、エメ・A、マルセル・C、パパン姉妹が挙げられており、これらの名前は後年のラカンの著書で確か、何度か言及されていた。ということで、この本はラカンを読み込む過程で必要なものだ。
ただし、ここでの分析はあまり深くなく、後年のラカンの着想からはちょっと遠い。
最後の「家族複合の病理」は1938年頃のもので、これはちょっと「ラカン流」の色が出てきている。
それにしても何故訳者は「複合」なんて言わず「コンプレックス」と素直に訳さないのか。「エディプス複合」なんてわざわざ言う必要がどこにあるのか。すでに「エディプス・コンプレックス」という訳語がじゅうぶんに日本で定着しているにも関わらず。これだから、専門馬鹿の学者さんは困ってしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
幻想小説ですよこれ。
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症例エメ◆《吹き込まれた》手記◆パラノイア性犯罪の動機◆様式の問題◆家族複合の病理
著者:ジャック・ラカン(Lacan, Jacques, 1901-1981、フランス・パリ)
訳者:宮本忠雄(1930-1999)、関忠盛(1942-1992) -
薄いから読みやすいだろうと思ったんだけど、話はそう単純じゃなかった。でも家庭とか育った環境によって、精神がバランスを崩してしまう過程は漠然と拾えような気はする。しかし精神の話も難しい・・・。
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『エクリ』以前の論文集で、有名な「症例エメ」を含む。
「社会的緊張」「常同反復」「アンビバレンツ」などが頻出するキーワードで、テキストから探る分裂言語症やパラノイア象徴の分類など初期ラカンのエッセンスである。
妄想(吹き込み)の自動現象は不十分で貧困な思考を補償であるという指摘はあらためて注目だろう。
「家族複合の病理」はフロイト解釈として重要だが、難解である。 -
症例エメとか、パラノイア性犯罪とかの事例が手記等交えて詳しくあるから、興味深かった。
が、どうしても哲学よりな感じがした。哲学…構造主義は勉強しておく必要があるぽい…。 -
友達からおススメされて。
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時間をかけたくないと思ってしまい、拾い読み。ワル気はなしで、★を2にします。
買う本を失敗したパターン入りました。ラカンを読んでみたいと思い、最も薄い(自分の視野の中で)本だから読みやすそうだ、との憶測で購入。それだけで購入。(ま、本を買うのに毎度事前調査はしません。)ガチな学術論文ですな。これ。症例と推察・考察。
加えて、どうやら、ラカンの“ラカン以前”のテキストだそうで、ラカンを読む、という意図との乖離がありました。 -
はっきり言って,理解できなかった・・・。
私の頭が未熟なのか,
翻訳のせいかどうかは分からない。
もっと簡単な本にすれば良かった。
自然科学分野の心理学の本でも,
もっとかみ砕いて理解しやすい本はあるのに。
やはり,私の頭のせいか???