ソシュールを読む (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062921206

作品紹介・あらすじ

近代言語学の父、フェルディナン・ド・ソシュール。残された手稿と「一般言語学講義」聴講生のノートから三度の講義内容を復元し、コトバを手がかりに文化や社会の幻想性を解明・告発する、その思想と方法を精緻に読み解く。二〇世紀の諸科学、とりわけ構造主義やポスト構造主義に多大な影響を与えた思想の射程と今日的な可能性が、あざやかに甦る。

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740841

  • 最後の2章で提示される〈身分け構造〉、〈言分け構造〉の世界観は、私自身薄らと感じてはいるものの言語化できない文化的なモノのズレ感を言語化しているように感じて感動した。
    ただの言語学ではなく、生き生きとした丸山言語哲学の語りは読んでいてとてもワクワクする。

  • 丸山圭三郎によるソシュール読解。ソシュールを勉強したわけでもないし、丸山の哲学についてもズブの素人だが、何となくこの本はソシュールを読むことによって丸山が自分の哲学を披露している、そういう印象だった。ソシュールは自分で書いた本を残してないので、その思想については講義録や未発表の手稿によって推し量るしかなく、研究者それぞれによって違うソシュールが現れてくるのは当たり前なのかも知れない。原本は1983年刊行。どこかで読み易い最新のソシュール論を見つけるべきか。

  • すごい。
    バルトやボードリヤールの著作を事前に触れていた身として、ソシュールの主張する事柄のほとんどが二十世紀哲学、思想、文化、芸術等々へ浸透している実態に衝撃を受けた。
    言葉の実質性や概念の絶対性に信頼を置くロゴス中心主義のヨーロッパで、ソシュールが唱えた言葉の根本的曖昧性、体系のうちに差異をもとにして生み出されるのが価値。
    まさに視点の変化でもって知の枠組みに新基軸を打ち立てたソシュールに拍手を。
    ラングという言語の社会的性質を認めた上で、それをどう撹乱し、新たな思想やアイディアを生み出していくのか。

  • 10回の講義をまとめた内容。8回まではソシュールのテキスト(?)に基づいた逐語的な解説。9,10回で著者の主張。言葉によって、人間がマイナスになったという指摘が面白い。ホモ・デメンス。索引付き。

  • 借り物

  • 【版元による内容紹介】
     コトバが指す実体はなく、そこには差異しか存在しない。その差異に意味は生じる――ひらかれてゆくコトバの謎

     近代言語学の父、フェルディナン・ド・ソシュール。残された手稿と「一般言語学講義」聴講生のノートから三度の講義内容を復元し、コトバを手がかりに文化や社会の幻想性を解明・告発する、その思想と方法を精緻に読み解く。二〇世紀の諸科学、とりわけ構造主義やポスト構造主義に多大な影響を与えた思想の射程と今日的な可能性が、あざやかに甦る。

     そもそもソシュールの文化記号学とは「読み」の営為なのである。そこで読まれるものは自己完結的な作品ではなくテクストであり、或るテクストを読むことが、既成の思考形式を批判し、これをバネとして変形的実践を行いながらもう一つのテクストを生産するという意味でのエピステモロジーでもある。ソシュールにあっては、「読むこと」と「書くこと」と「生きること」との間には柵がない。――<本書「あとがき」より>
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062921206


    【目次】
    目次 [003-007]

    第一講 ソシュールと現代 011
    1 ソシュール思想の現代性 011
    問題の所在/構造主義ブームから記号論ブームへ/構造主義者と反構造主義者/構造主義論争/アメリカの実体論的構造主義/ソシュール思想への誤解/トーロッパ的知への異議申し立て/科学批判としてのエピステモロジー/科学的真理とはなにか/十九世紀パラダイムの変革/「脱領域的営為」としての記号学/現代社会を批判する装置/文化のフェティシズム/一般言語学と神話・アナグラム研究
    2 『一般言語学講義』とは何か 026
    小林英夫の訳/未完の講義/第一回講義/第二回講義/第三回講義/『パンセ』/断章形式/『講義』の原資料/講義の出席者/「ソシュール未刊手稿」/行方不明のノート/ルガールの批判
    3 「読む」とはどんな営為か 035
    表現と内容は一体/読みは解読行為か/新しい生命の付与/テクストの快楽

    第二講 『講義』と原資料 040
    4 ゴデルの『原資料』とエングラー版 040
    原資料の発見/二回目の発見/三回目の発見/『原資料』の刊行/エングラー版/『校訂版』の問題点
    5 言語価値形相論 046
    『講義』とエングラー版との照合/反要素主義/コトバと思想は分離できない/〈メニング〉/主知主義批判/音も未分節/ランガージュの役割/「思考=音」/ラングとランガージュの差異/相互差異化活動/指向/認識=命名/幼児の言語習得/ヘレン・ケラーの言語体験/シーニュの二重性/シーニュとラングの混同/記号学とは何か/編者による転倒/記号の恣意性/価値は記号である/即時的価値の否定/恣意的価値体系のア・ポステリオリ性

    第三講 講義I ――言語学批判 070
    6 講義Iの構成と視点 070
    言語学とは何か/実証主義批判/講義Iの構成
    7 実体論批判  073
    言語学のイドラ/四つのイドラ/言語変化を転訛とみる誤謬/書記言語を優先させる誤謬/規範文法批判/「音声学の原理」/〈音韻論〉の誕生/否定的要因の重視とラングの関係性/実体的同一性と関係的同一性/意味をもつのは差異だけ/否定的な本質体/関係=形相としてのラング/物的世界像批判
    8 言語の非自然性 084
    三つの批判/コトバと諸制度/言語有機体論/言語能力は本能ではない/言語の非自然性/音声変化の偶然性/音の変化は体系の変化を意味しない/二項の差異/価値は差異から生じる/語の不透明化/二種の〈変化〉

    第四講 講義I ――言語学批判(続) 094
    9 類推現象とラング、パロールの相互依存症 094
    関与的変化/類推的変化/類推と音声変化の差異/ラングとパロールの相互依存関係/ラングとパロールの弁証法
    10 「客観的分析」批判 100
    言語の単位は主体の分節により発生/語る主体による主観的分析の重要性/〈形態素境界画定〉/客観性とはなにか/主客未分離の〈生ける自然〉/浅薄なジャパネスク論/素朴な科学信仰/科学という名のイデオロギー/質を計量することの危険性/パラダイムを超える困難/静態言語学への絶望と沈黙

    第五講 講義II ――記号学とは何か 111
    11 講義IIの構成と視点 111
    二つの序説/講義II「序説」の重要性/記号学の提唱/ラングには差異しかない/講義IIの構成
    12 コトバの両義性とランガージュ、ラング、パロール 117
    言語のもつ二つのパラドックス/両義性/広義のコトバ/ランガージュとラングの定義/パロール/ランガージュの特性/ランガージュの普遍性とラングの個別性/マルティネのラング-パロール観/機能主義的情報理論の限界
    13 記号学の誕生 126
    記号学の要請/言語学と記号学/バルトによる転倒/記号学の対象/差異と対立/記号とシニフィアンの混同/記号の価値の否定性と示差性の好例/指向対象はコトバ以前に存在しない/ソシュールにおける恣意性の意味/語の価値は関係のみにより決まる/記号の形相性/言語学者でない人々の言語研究/悪しき循環論/言語=名称目録観批判/アトミズム批判/ラングの物神性/記号の非自然性

    第六講 講義II ――記号学とは何か(続) 146
    14 単位、同一性、価値 146
    単位の非現実性/関係の一次性/〈同一性〉とは何か/二種の同一性/〈形相〉の世界/実体は同じでも関係が異なる場合とその逆の場合/文化の本質は形相/本質体を構成しているもの/体系に関与するもののみが内的だ/〈関与性〉pertinence/語の価値と意義/価値・意義はラングに、意味はパロールに属する
    15 構造と歴史 160
    歴史における関与性と非関与性/〈構造史〉/〈実質1〉と〈実質2〉/実質2の再分節化/〈特定共時的〉/対立化現象/単位とは対立の差異化現象/二つの言語学――共時的つ通時的/共時言語学の方法論的優先/実態の変化と価値の変遷/個的現象を体系の中で捉える方法/点の歴史から面の歴史へ/〈出来事〉/歴史における法則性への懐疑/言語の歴史・社会性
    16 連辞関係と連合関係 177
    言語学の伝統的区分/記号の表現と内容は不可分離/主体は差異しか意識しない/語同士の関係の二つの領域/〈群化〉=〈差異化〉/ディスクールとラング/連辞・連合関係に対応する人間の機能/語の〈結合価〉

    第七講 講義III ――ラングの解明 188
    17 講義IIIの構成と視点 188
    講義IIIの特徴/事実としてのパロール、本質としてのラング/記号学的装置としてのラングとパロール/恣意性と必然性/ラングのデジタル性/〈否定性〉の積としての〈実定性〉/講義IIIの構成/構造主義的分析思考の壁
    18 恣意性の原理 196
    言語学の領域/ランガージュ解明の手順/諸言語からラングへ/文脈のなかで意味が生れる/パロールの二重性/ラングの支えとしてのパロール/差異化活動としてのパロール/ラングとパロールの相互依存性/〈聴覚映像〉 と〈概念〉/用語上の混乱/シーニュの〈非記号性〉/〈セーム〉/術語シニフィアン、シニフィエの採用/恣意的な絆/根強い「言語=名称目録観」/二つの恣意性/記号学の領域/言語記号の特徴/事物や概念の分節の基盤/シーニュの恣意性と必然性/バンヴェニストの誤解
    19 線状性の原理と言語の本質性 218
    シニフィアンの線状性/線状性の二側面/デジタル化された時間/論述的推論の陥穽/モノのコト化/言語の本質体をとらえる困難さ/記号学的還元/二重にして不可分離な本質体/文化と自然のはざまにある身体/関係を実体と錯覚/シニフィアン・シニフィエの誤解/シニフィエは潜勢としての価値/〈同一性〉と主観/結合価/二つの抽象/構成するものと弁別するものは同一物

    第八講 講義III ――ラングの解明(続) 234
    20 相対的恣意性 234
    相対的動機づけの存在/個別言語内のシーニュの合成/体系内の辞項間の連帯性//文化の恣意的動機づけ/語の透明度
    21 時間のファクター 239
    ラングの恣意性と必然性/人間のになう二重の必然性/シーニュの不易性と可易性/ラングの恣意性のもたらす二つの結果/価値の変動/分節線のずれ/人間の自由
    22 価値の恣意性と示差性 247
    記号学の対象は恣意的価値/経済学と言語学/シーニュ内の絆の恣意性/シーニュ間の関係の恣意性/価値の恣意性/連合関係の恣意性/連辞関係の恣意性/言語の中には差異しかない/シーニュの実定性/関係の物神化/恣意性と示差性は相関的

    第九講 ソシュールと人間学 258
    23 ヒトと動物のあいだ 258
    西洋思想の系譜/根強い人間至上主義/動物のコミュニケーション/チンパンジーの身分け行為/ヒトと動物の不連続性/ヒト=動物+(-α)
    24 身分け構造と言分け構造 266
    身分け構造/ユクスキュルの〈環境世界〉概念/ホモ・ロクエンス/ホモ・ロクエンス先行説/ランガージュの概念/〈演じられる記憶〉と〈表象される記憶〉/言分け構造/人間は裸のサルではない/欠陥動物/〈言分け構造〉の出現による〈身分け構造〉の破綻/人為による動物の退行/認識が知覚を蝕む/文明の畸形化/生理的欲求から文化的欲求へ/〈欲求神話〉経済主義の誤り/コスモスと共に生じるカオス/脳の爆発的進化と直立歩行/欲望を生むランガージュ/内なる自然の破壊/人間文化の異化

    第十講 ソシュールと文化記号学 288
    25 記号学的還元 288
    リクールのソシュール批判/二分法への誤解/静態と動態/力動的一元論/二つの記号学/人間文化の解明/カオスを読む/所与としてのラング、パロール/記号学的還元の装置としてのラング、パロール/理論モデルとしてのラング、パロール
    26 解明のための記号学 298
    ランガージュの解明/不在の現前/映像的なものの復権/記号の世界/表象世界の破産/パロールの解明/形相の実質化と実質の形相化/パロールによるラング変革
    27 乗り超えのための記号学 306
    コスモス、カオス間の往復運動/「記号の世界」の否定/コトバの多義性の回復と「記号の本質」の否定/コトバの映像化/コトバの未分節化/アナグラムの示唆するもの/コトバの身体性/記号学の円環運動
    28 文化のフェティシズム 313
    新しい人間学としての記号学/コトバと文化現象のパラレリズム/事物の記号化/使用価値と交換価値/コト→記号→物神/〈文化のフェティシズム〉/解明の記号学のメリットと限界/反構造的契機としての非記号性/反機能化・反制度化活動/「制度の機能」の否定/四つのイドラの破壊/異文化による相対化/影の部分への照射/根本原理としての〈恣意性〉/文化記号学の射程

    あとがき(一九八三年二月 丸山圭三郎) [329-331]
    ソシュール略年譜(1857~1913) [332-335]
    ソシュール著作目録 [336-339]
    参考文献 [340-351]
    解説(末永朱胤) [352-359]
    索引 [361-373]

  • シニフィエ、シニフィアンを始め、言語の構造を言い表す言葉が、冒頭で定義されることなく講義が続いた。中盤終盤に、言語の構成要素の度重なるたとえの中でようやく意味が掴めてくる。これこそ、物の名前を差別化を以ってのみ習得する一連の流れの再現である。終盤、他の学派との比較では、また更に多くの用語が怒涛に現れ、心を折られての読了となった。

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