地下水と地形の科学 水文学入門 (講談社学術文庫)

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  • 講談社 (2013年2月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784062921589

作品紹介・あらすじ

黒部川扇状地、武蔵野台地、千葉・市原、熊本市……。三次元空間を時間とともに変化する四次元現象である地下水流動を可視化する水文学。地下水の容器としての不均質で複雑な地形と地質を解明した地下水学は、改めて環境問題に取り組む。地下水=共有財(コモンズ)を、単に資源としてではなく、文化・心理的な環境要因とみなし、自然と人間の幸福な関係を探究する。


「地球水循環システム」と「地域水循環システム」が生命の源である。武蔵野台地、黒部川扇状地ほか、国内外の実地調査により、地形・地質・気象と水循環の関係を解読し、「コモンズ」としての水の利用を考える。

黒部川扇状地、武蔵野台地、千葉・市原、熊本市……。三次元空間を時間とともに変化する四次元現象である地下水流動を可視化する水文学。地下水の容器としての不均質で複雑な地形と地質を解明した地下水学は、改めて環境問題に取り組む。地下水=共有財(コモンズ)を、単に資源としてではなく、文化・心理的な環境要因とみなし、自然と人間の幸福な関係を探究する。

環境問題は、ひらたくいえば、人々が「らく」や便利さを求めた結果である。ヒトがらくを求めれば、ヒトをとりまく自然は必ず変化する。……袋小路から抜け出す一つの道は、水に注目することである。……水は循環する過程で熱や物質を運び、生物を育てる。気候の形成、地形の形成、生態系の形成には、いずれも水循環が強く関与している。水循環のエネルギー源は、……尽きることのない太陽光と重力である。……望みは水にある。――<「はじめに」より>

※本書は、1992年にNHK出版より刊行された『地下水の世界』を原本に、加筆・改訂を加え、改題をしました。

みんなの感想まとめ

地下水と地形の関係を深く掘り下げた本書は、フィールドワークや研究者の視点を交えながら、地下水流動の複雑さをわかりやすく解説しています。地球の水循環と地域の水循環が生命の源であることを強調し、地下水を単...

感想・レビュー・書評

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  • 地下水について長年研究してきた筆者が、地下水の流動に関する水文学の基本的な内容を解説しつつ、そもそも目に見えない地下水を研究するということを通じて筆者が感じた科学的な知の可能性と限界、科学的知見を土台にしながら地下水の利用に関する社会的な合意を作り上げていくことの大切さといったことを論じている。


    地下水を涵養するのは主に河川や湖沼、田畑などから浸透した地表水であるが、この水が数十年、ときには百万年以上の長い年月をかけて地下を移動し湧き水として地表に再び現れる。その間の地下水の動きは、不透水層の勾配に従って流下するというシンプルなものではない。

    地下水は電流などと同じポテンシャル流と言われる性質を持っており、「与えられた位置に、与えられた状態で存在する水のポテンシャルは、単位質量の水をある任意の標準状態から、その与えられた状態にまで変化させるのに必要な仕事量に等しい」と定義されるポテンシャルに従い、ポテンシャルの高いところから低いところへと流れる。このポテンシャルを決めるのは、地下水の密度・圧力・高度の3要素である(通常ポテンシャルに影響する速度は、地下水の場合は無視できるほど小さい)。

    地下水のポテンシャルは圧力ポテンシャルと重力ポテンシャルの和である。地下において圧力ポテンシャルがゼロ(圧力が大気圧と等しい)ところをつなげていったものを地下水面と呼び、地下水面が決まると地下の内部構造(地質)に応じた地下水ポテンシャルの分布もきまる。地下水はこの地下水ポテンシャルの変化の割合である動水勾配が最も大きい方向へと流れていく。

    地下水ポテンシャル自体は井戸の集水器と同じような構造を持つストレーナーと呼ばれる機器で簡単に計測することができる。一方でそのようなポテンシャルを生む地下の構造は、ボーリングなどの地質調査で把握する。また、地下水の流動の状態は古水文解析とトレーサー追跡で把握することになる。

    本書ではこのようにして探索された地下水循環の図が数多く掲載されている。地下水は水平方向の動きだけではなく高さ方向にも移動し、より高い場所の方がポテンシャルが低い状態であれば、地中深くから地表近くに向かって地下水が上昇していくこともある。そして、それが地表面に到達すると自噴がおこる。地下水の流動が非常に立体的であることに驚かされた。


    また、地下水は地下の中で循環するだけではなく、地表を流れる水とも行き来がある。河川の水も流下するだけではなくかなりの割合が地下浸透しているところがある。また特に日本においては田んぼが地下水の大きな涵養源になっているという。

    このような地表と地下の水の関係性を調査するためには、多くの観測井を設けそれらの水の同位体比や地下水位を計測することによって、様々な涵養源からやってくる水の起源を推測していくという調査が必要となる。

    本書では、黒部川下流の扇状地や武蔵野台地において筆者らが行った長年の調査の結果が紹介されている。このような調査を行うことで、ダムの設置や河道の付け替えによる影響や地上の土地利用の変化、工場等による地下水のくみ上げが地下水位や地盤沈下とどのような関係にあるのかといったことを検討することができるようになる。

    筆者は、発電計画に伴う黒部川の流域変更の影響の検討や東京都における地下水の適正な利用と保全に関する調査に長年関わり、このような総合的な視点から地下水のあり方を考えることに取り組んできた。


    これらの調査の記述を読んで感じるのは、地下水の流動は扇状地を形作った長い間の地殻の変化と、その上で展開された人の営為の積み重ねによって形づくられているということである。これからも持続的に地下水を資源として活用しながら生活していくためには、地下水が形作られてきたこのような複雑な仕組みを理解し、現在の地下水循環の状況を把握した上で、地域の中でこの地下水を管理していく必要がある。

    日本の法律では河川水は公水であるが地下水は私水であるという。しかし、筆者は地下水はコモンズであり地域によって適切に管理されなければ「コモンズの悲劇」が生じると述べている。

    コモンズは、①明確な境界の定義、②モニタリング、③段階的な拘束力、④争いを調整する関係者間のメカニズム、⑤規則と地域条件の一致という5つの原則があることで守られるが、地下水においてもこのような仕組みを整えていくことが必要であるというのが、筆者の提言である。筆者の長年の経験においても、熊本市のように水道水を100%地下水に頼り、このような地下水管理の仕組みを作り上げてきた地域もあるという。

    地下水という目に見えない相手に対して、可能な限り科学的な知で迫りながら社会的な仕組みの中でその管理を行っていくということは、複雑かつ臨床的な問題である。筆者も言及しているが、このような新しい問題に対応できる総合力のある科学のあり方が必要である。地下水や水文学について知ることができるとともに、社会的課題における科学の役割ということも考えさせられる本であった。

  • 「地下水は地質に規制されて動くと、ほとんどの人は考えている。しかし、地下水の全体としての(広域の)流れを決めているのは地形である。地形にならって地下水面の形が決まり、その地下水面が地下水流動の上部境界条件となって、地下水ポテンシャルの三次元分布が決まる。地質は、地層内部の地下水の動きのパターンを決める条件として働いている。」

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/16227

  • 第14回アワヒニビブリオバトル「根」で紹介された本です。
    2016.06.07

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000965630

  • 地下水の本。原著がNHKブックスらしいので、比較的わかりやすいほうか。

  • 地下水の流れについて一般的な知識を得ようと手に取った本書だが、素養がなく地下水ポテンシャルについて十全に理解できたかといえばはなはだ心もとない。
    一般向けを意識してか、エッセイのような部分と科学的な説明とが混在している印象はあった。
    だが特に武蔵野台地の湧水が、古多摩川が形成した扇状地の端、標高70メートルあるいは50メートルのところに位置するなど、具体的に地形を見ながらの解説は分かりやすく、非常に面白かった。
    読み直しつつ、他の地下水についての本も読んでみようと思う。

  • この著者は知らなかったが、地下水学における第一人者?的な研究者らしい。
    これまでの長きにわたる研究の成果として、地下水のトレース(同位体とか温度とか…)、扇状地地形との関係、武蔵野の谷戸地形形成との関係、地下水保全と利用について等、あらゆる方面について示唆に富む内容であった。

    岐阜、長良川扇状地において地下水や水循環のことを少しかんがえ始めると気になるようなことがちりばめられていたので有益だったし、読んでよかった。別の著書『扇状地の水循環』とかも読んでみようかという気になった。

    ただし、ところどころ(大御所らしく)感情的になっていたり、ナルシスト風に語っていたり、にわかに社会科学寄りに走っているところがあったりするのは、いくら一般むけ書物であるとはいえちょっと鼻につく。

  • (後で書きます。フィールドワークや研究者としての交友関係もざっくばらんに交えたわかりやすい入門書。参考文献リストあり)

  • 地下水をめぐるこれまでの問題点とそれに対する原因と対策を俯瞰的にまとめられた1冊。学術文庫版になる際に、近接のトピックも付加されており一読の価値あり。筆者自身の分野横断的学問への関心が色濃く反映されているため、科学としての地下水と社会学としての地下水が交差する形で描かれている。

  • 【読了レビュー】自分には面白さがわからなかった。科学、と銘打っている割には、あまり科学的ではないというか。。
    構成も発散しているように思う。珍しく、最後まで読めなかった。

  • 夜空の星を扱うのが天文学であるのに対し、地球上にある『水』を扱う学問を水文学というそうである。この本は凡そ20年前に執筆されたものを、ほぼそのまま文庫化したものだが、本質は色あせず、まさに入門書として好適であるように思う。

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