地方の王国 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062921657

作品紹介・あらすじ

新潟、徳島、千葉、滋賀、鹿児島、北海道……。日本中で戦後保守政治の支柱となった〈王国〉。それらに潜り込み選挙の構造を調査した地方政治研究の重要古典。高度成長の終焉がもたらした各地の構造的変容は、「豊かさはもはや手放すべきものなのか」という問いをめぐって揺れる現代日本を照らし出す。日本政治の底の底、そこに映る日本人像にまで肉薄した迫真のルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

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  • バーチーの金権体質のすごさとか、越山会のカルト的狂信性とか、いろいろ面白く読ませていただきました。
    これって結局選挙民を映し出してるんですよねぇ。
    なんか2020年の惨状は当然の帰結と感じた次第。

  • 東大の選挙研究者(故人)によるルポタージュ。

    取り上げられた地方の全てが全てではないが、北海道にせよ千葉にせよ鹿児島にせよ、終点地というか地理的に端にあたる部分が多い気がする。他には滋賀や徳島など。

  • 【目次】
      講談社学術文庫版のための序文/五十嵐暁
      同時代ライブラリー版へのはしがき

    ■越山会の強気と弱気──新潟三区
    一九八三年十月十二日、第一審判決の日/越山会/田中ファンの気質/社会党と越山会/越山会と一新会/西山町に共産党町議誕生/元全共闘闘士の田中擁護論/第三世界と新潟三区

    ■金権王国の深層海流──千葉
    一票二千円の買収の構造/地域開発の病理学/どこから千葉の金権体質は生まれたか

    ■最後の社会党王国──北海道五区
    五区の有権者層/農民の政治意識/中川一郎の政治経歴/中川は〈殺された〉/北方領土観/北海道気質/横路知事の最大の問題

    ■保守王国の地割れ──鹿児島三区
    日本の低開発地帯の典型/政治家・二階堂進の経歴/山中貞則と橋口隆/“社会保障のご用聞き”/種子島と屋久島/百年前の小学校教師の観察

    ■政争王国の十年戦争──徳島
    “阿波戦争”のなかみ/徳島県における後藤田体制/「社会党は解散して再結集……」/新潟三区と徳島全県区/徳島県内の三木体制/もうひとつのキーワード

    ■“揺れる湖国”の大政翼賛体制──滋賀
    無競争の協調政治体制/武村知事登場の引き金/武村知事の人となり/西武グループと武村知事/司馬遼太郎の武村観/「大政翼賛」のイメージ

    ■越山会“角さん音頭”の気勢──新潟三区再訪
    田中角栄の演説/「問題は次の次……」/越山会大衆/気宇広大な“雪国市”構想/若者の野坂批判/さて、新潟三区は

      あとがき
      参考文献
      解説 「地方の王国」のその後/五十嵐暁郎

  • 初出は1986年の本である。中選挙区制の時代の、新潟3区、北海道5区、鹿児島3区、千葉、徳島などでの取材を通して、日本の政党政治の病が地方において症状として現れる姿を描いた。

    本書を読むと、地方の大物議員は決して"遅れた村人の無知を利用して"熱烈な支持を得たわけでなく、そこに土地の歴史や産業と密接に関係する支持される理由があることが理解できる。
    例えば田中角栄は新潟の豪雪地帯の人々に対して「雪は宿命ではない、国が救助すべき災害である」と説く。であればこの地の道路が次々と国道に昇格され、公共事業が舞い込むのも説明がつく。そうやって夢をかたり、民衆にイデオロギーを植え付けた点に田中角栄の凄さがあるということだろう。

    選挙に「足代」などと称して現金が配られるので悪名高い千葉の話も、地元の漁師にとって日曜日は漁に出て稼ぐべき営業日であり、その埋め合わせとして僅かな謝礼をという感覚は、理解できる。

    現代において、本書に描かれるのとは大きく異なるのは、小選挙区制が採用され政策で競うことが可能になったことである。また本書において選挙で現金を配るときはまず秘書が金を各地域の有力者に渡し、有力者がそれを家の家長に渡し、そして家長から選挙権をもつ各人に渡されるというプロセスが紹介されている。そしてこの慣習をきらい直接手渡そうとしてトラブルになった選挙戦についても触れられる。このようなやり方はしかし、地域と家族の結びつきが弱まっている現代においては使いにくい手段なのではないかと感じた。

  • 141122 中央図書館
    1980年代半ば、自民党支配の55年体制が最後の頂点を迎える頃の、政治家、選挙と地方の関係を、政治学者の「臨床報告」としてまとめたルポである。
    田中角栄、薩摩の二階堂、徳島の後藤田、千葉の金権選挙体質など、濃厚な主観を交えながらであるが、昭和の末期、まだ政党政治や地元への利益誘導が濃厚に見られた時代の選挙の実態が良く見える。

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著者プロフィール

1933~2004年。東京生まれ。日比谷高等学校、東京大学法学部卒業。東京大学法学助手、イェール大学留学を経て、立教大学教授、駿河台大学教授を歴任した。日本における計量政治学の草分け的な存在として独自の選挙分析方法を確立した。
 学生時代から「思想の科学研究会」同人として『共同研究 転向』に参加し、佐野学・鍋山貞親を論じた「一国社会主義者」、大河内一男・風早八十二を論じた「生産力理論」で注目を浴びた。1960年代には鶴見俊輔らとともに「声なき声の会」を組織するなど継続して市民運動に参画し「市民のための政治学」を提唱した。
○著書:『政治の論理と市民』(筑摩書房1971)『政治の発見』(三一書房1983/岩波同時代ライブラリー1997)『新保守の時代はつづくのか』(三一書房1987)。『政治学のフィールド・ワーク』(三一書房1989)『日本政治の構造転換』(三一書房1994)『現代における政治と人間』(岩波書店2005)『平和研究講義』(岩波書店2005)『高畠通敏集』1~5巻(岩波書店2009)
○訳書:ロバート・A・ダール『ポリアーキー』(三一書房1981)。

「2013年 『地方の王国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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