日本中世都市の世界 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062921893

作品紹介・あらすじ

中世都市の市場原理や自治、自由の諸問題を考古学や文献史学等、多角的視点で実証的に探求。新たな中世社会像を提唱した記念碑的論集

感想・レビュー・書評

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  • 網野さんの歴史学書は文庫で出ているものをいろいろ読んできたが、本書はちょっと難しい。歴史学の専門誌に掲載された論文ばかり入っているからだ。一般読者には知り得ない他の論文への言及が多く、それは解説されずに呈示されるので、私たちにはその箇所は虫食いのように不可知の穴が空いたままになり、論理を追うのが難しくなってしまう。
    日本中世都市の庶民の生活について知りたかったのだが、本書はまだその研究の導入期におけるものであり、私たちには窺いきれない状態である。
    「公界」等については他の著作でおなじみのテーマだし、「地」なる語の概念の変遷に関する辺りも興味深いものではあった。
    日本中世の庶民の生活に関しては、もっとまとまった形での、平易な書物を読んでみたい。

  • 「素人目でみて、宗教、思想、文学、芸能等々は、みなそこ(無縁)に生まれ、そこから人間の魂をゆるがすに足る生命力を得ているように思われるのである。諸民族の農民反乱が、つねに、原始への復帰を根拠にもつ、宗教的な力を支柱にしていること、江戸時代の新宗教の教祖の多くが女性であること等々、こうした視角から、一つの解答をひき出しうる問題は、案外、多いのではあるまいか」中世とはむき出しの初源が近代社会を前に断末魔をあげた時代だったのではないかと思う。その断末魔をどうすくい取るのか、この本が示唆するところは大きい。

  • 祝復刊!

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    「流通や金融、商業の自立的組織を構築した非農業民の世界の形成と諸制度――
    「無縁」論をめぐる網野史学の記念碑的論集

    公権力の及ばない「無縁」の地で職人や芸能民などの非農業民が構築・統制した流通・金融・商業の自立的な組織。中世考古学や文献史学などを援用した多角的視点から市場原理や自治等の諸問題を実証的に探究、「無縁」論をめぐる思索の全容を描出する。都市民による交流と文化の場としての新たな中世社会像を提唱した、記念碑的論集。(解説・桜井英治)

    本書の刊行後、現在にいたる五年間に、中世都市研究は目覚ましい進展をとげたといっても、決して過言ではなかろう。……このような研究の発展を通して、中世都市の実態が鮮明に浮び上ってきただけでなく、「都市とはなにか」という最も根本的な問題がさまざまな角度から問い直されるとともに、さらに視野をひろげ、「人類の歴史とともに古い」とまでいわれるほどになった商業や都市の歴史を遡り、人類社会の中での位置づけ、その役割が問題とされるにいたっている。――<「文庫版あとがき」より>

    ※本書の原本は、1996年1月、筑摩書房より刊行されました。本講談社学術文庫は、同書を増補改訂し、2001年1月に同社より刊行されたちくま学芸文庫を底本としています。」
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    「自由、流通、自治等中世の諸問題を実証的に追究し、非農業民、都市民の世界である新たな中世社会像を提唱する画期的な論集。
    【解説: 桜井英治 】
    王朝・幕府などの公権力からの抑圧に抗い、流通、金融、商業の自立的な組織を構築・管理・統制した非農業民の世界、中世都市。中世考古学、文献史学などのさまざまな角度から、現代にも通底する市場原理、流通、自治、自由などの中世の諸問題を実証的に追究。また、「無縁」論をめぐる思索活動の全容をあますところなく伝える。都市民による交流と文化の場としての新たな中世社会像を提唱する画期的な論集。」

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著者プロフィール

1928年、山梨県生まれ。1950年、東京大学文学部史学科卒業。日本常民文化研究所研究員、東京都立北園高校教諭、名古屋大学助教授、神奈川大学短期大学部教授を経て、神奈川大学経済学部特任教授。専攻、日本中世史、日本海民史。2004年、死去。主な著書:『中世荘園の様相』(塙書房、1966)、『蒙古襲来』(小学館、1974)、『無縁・公界・楽』(平凡社、1978)、『中世東寺と東寺領荘園』(東京大学出版会、1978)、『日本中世の民衆像』(岩波新書、1980)、『東と西の語る日本の歴史』(そしえて、1982)、『日本中世の非農業民と天皇』(岩波書店、1984)、『中世再考』(日本エディタースクール出版部、1986)、『異形の王権』(平凡社、1986)、『日本論の視座』(小学館、1990)、『日本中世土地制度史の研究』(塙書房、1991)、『日本社会再考』(小学館、1994)、『中世の非人と遊女』(明石書店、1994)。

「2013年 『悪党と海賊 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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