市民の科学 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062922289

作品紹介・あらすじ

公害、薬害、巨大事故。
我々のあずかり知らぬところで進行し甚大な被害をもたらす悲劇は、なぜ繰り返されるのか。それを防ぐため、専門的能力を持たない市民に何ができるのか。
科学者として生涯、原発の危険性を訴えつづけた著者は、市民が国家・企業・アカデミズムからも独立して専門的批判の能力を組織・維持・育成する方策を構想し、その実践報告とともに本書を遺した。
3・11後の日本に向けた最もポジティブな提言。

感想・レビュー・書評

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  • 原子力発電所という、多分にして専門的かつ閉鎖的な巨大システムは、得てして市民とは程遠いところで勝手に管理運用されています。それを担うのは政府と官僚機構、そして国家の忠実なる下僕と化した一部の科学者たち。この事実を正確に認識している市民は多くはないでしょう。科学者の中には原発の恐るべき実態を知りながらも反抗することが出来ない者もいると本書では述べられていますが、このような現状の社会は、非常に怖いなと感じました。
    しかし、本書の著者は「専門的批判の組織化」という、専門的な原発システムに対抗し得る唯一の手段を確立し、あるべき社会へ向けて着実にその歩みを続けています。著者ご自身は現在はお亡くなりになってしまいましたが、そのご遺志は確実に原子力資料情報室や高木学校のメンバーに受け継がれていると思われます。
    私たち自身も3.11を経験したことで、原発の在り方を考える「よすが」があります。本書を読むことで、人間と自然の関係などをもう一度考えるきっかけになることは間違いないでしょう。

  • 旧西ドイツの独立研究機関のあり方に触れている箇所に線を引いた。
    利害ある公的機関からの調査だけでなく、併せて批判的な立場の機関にも調査を委託するのだとか。両者の言い分を聞いたうえで、判断するという考えだ。
    原発を推し進めたい政府が、脱原発を掲げる研究機関にも調査を委託するようなものだろう。
    日本とは大きな違いがある。
    そしてまた、独立研究機関にとって、決して少なくはないこの委託費用が、機関の存続のための貴重な財源となっている。
    多様な意見が認められることが、最終的に社会に利益をもたらすのは言うまでもない。

  • 「専門的能力を持たない市民」、だから簡単に「安全」を信じちゃうのかも、、、

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    「公害、薬害、巨大事故。
    我々のあずかり知らぬところで進行し甚大な被害をもたらす悲劇は、なぜ繰り返されるのか。それを防ぐため、専門的能力を持たない市民に何ができるのか。
    科学者として生涯、原発の危険性を訴えつづけた著者は、市民が国家・企業・アカデミズムからも独立して専門的批判の能力を組織・維持・育成する方策を構想し、その実践報告とともに本書を遺した。
    3・11後の日本に向けた最もポジティブな提言。」

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著者プロフィール

理学博士。核科学専攻。原子力の研究所、東京大学原子核研究所助手、東京都立大学理学部助教授、マックス・プランク研究所研究員等を経て、1975年「原子力資料情報室」の設立に参加。1997年には、もうひとつのノーベル賞と呼ばれる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞。原子力時代の末期症状による大事故の危険性と、放射性廃棄物がたれ流しになっていくことに対する危惧の念を最後のメッセージを記し、2000年10月8日に死去。

「2004年 『高木仁三郎著作集 全12巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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