再発見 日本の哲学 吉本隆明――詩人の叡智 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062923132

作品紹介・あらすじ

戦後日本の思想界において、圧倒的な人気を誇り、厖大な著作をあらわした吉本隆明。著述だけではなく、インタビューや講演などをふくめ、社会現象と言っていいほどの幅広い活動で注目を集め続けた。
では、彼の思想の根本とは、どのようなものだったのか。
著者は、初期の詩集『固有時との対話』に、その思想の本質がすべて含まれているという。
詩『固有時との対話』を詳細に読み解きながら、主著である『共同幻想論』や『言語にとって美とはなにか』などの思索の本質にまで説き及ぶ、画期的な吉本論。
鹿島茂さんが、「週刊文春」誌上(私の読書日記)で激賞された力作の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 吉本隆明という思想家を、「個」のありようについて問い続けた「哲学者」として読み解いています。とくに『固有時との対話』についての突っ込んだ考察を展開しており、興味深く読みました。

    人間は、単独では自然から自立することができず、みずからを類的存在とすることによって、つまり社会の共同性というもう一つの全体性の部分へと吸収されることによってしか、「個」としての自立をなしえないというのが、吉本の思想の基礎をなしています。しかし、そうした「個」は明晰判明な自己意識などではなく「違和としての自己」であると見定め、そこから思索を開始しようとしたところに、吉本の思想の特異性があると著者は考えます。そして、このような吉本の思想の原点を、敗戦によって経験することになった「断層」に求めるとともに、吉本の転向論が、伝統的な生活意識と近代的な市民社会的意識との間の「断層」を問題にしようとしていたことを明らかにしています。

    さらに『固有時との対話』を手がかりに、吉本が自己の内部世界と現実的な秩序との「違和」を「違和」として認めつつ、そのはざまで(ハイデガー的な言い回しを借りるならば)詩作=思索をおこなっていることを確かめようとしています。

    『転向論』『固有時との対話』『共同幻想論』などの仕事を一本の太い線でつなごうという試みがなされており、おもしろく読みました。

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著者プロフィール

皇學館大学文学部神道学科教授

「2019年 『本当の武士道とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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