死海写本 「最古の聖書」を読む (講談社学術文庫 2321)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062923217

作品紹介・あらすじ

さまざまな解釈を生み、世界を騒がせてきた死海写本。この「最古の聖書」には何が書かれているのか。書き残したクムラン宗団とは何者で、いかなる思想を持っていたのか? 「義の教師」「悪の祭司」「なめらかなものを求める者たち」……。本書は、公刊された死海写本の記述に即し、外典・偽典を含めた旧・新約聖書や歴史的背景とも関連づけながら、その内容を読み解く。膨大な研究成果をコンパクトにまとめた「死海写本」入門。


さまざまな解釈を生み、世界を騒がせてきた死海写本。しかし本当のところ、この「最古の聖書」には何が書かれているのだろうか。書き残したクムラン宗団とは何者であり、いかなる思想を持っていたのか。
「義の教師」「悪の祭司」「なめらかなものを求める者たち」……本書では、公刊された死海写本の記述に即し、外典・偽典を含めた旧約・新約聖書や歴史的背景とも関連づけながら、その内容を読み解くことで、淡々と「謎」に光を当ててゆく。
膨大な研究成果をコンパクトにまとめた、絶好の「死海写本」入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 私も死海写本について、なかなか、その内容が公表されないこともあり、原始キリスト教、あるいは、イエスについて書かれているとか、キリスト教の秘密が書かれているとか、あるいは、今のカトリックに不利な内容が書かれていて、公表されないのではと、ミステリアスな、あるいは、通俗的な興味を持って、考えていたが、この本を読んで、そのようなことはなく、クムランという宗教団体について書かれていて、旧約聖書について、書かれているが、キリスト教、イエスについては、まったく、書かれていないとわかった。
    内容は、クムランというもうなくなった宗教団体の宗教的な考え、その規則、入会規則、また、旧約聖書に関する写本が主であった。宗教にそれほど、関心がない私はクムランの宗教規則、入会規則は、退屈であった。

  • 1947年より死海の北西岸のクムランにて発見された写本群――通称「死海写本(死海文書)」について解説した書。紀元前後のユダヤ教の一派「クムラン宗団」が残したこれらの写本群の内容や思想を紹介すると共に、その歴史的背景や聖書との関連、そして写本発見の意義について解説する。
    本書は、同著者が2003年に講談社現代新書より出した『はじめての死海写本』の文庫版である。前3世紀から後1世紀にかけて成立したと目される死海写本は、その数奇な来歴も相まって(時にイエスや初期キリスト教にまつわる新事実を明らかにするものとして)センセーショナルに扱われてきた。本書は学術的に行われてきた長年の研究の成果を踏まえ、実際の死海写本とはどのようなものなのか、そこには何が書かれてあり、そのような思想が込められているのかを分かりやすく解説している。
    即ち、死海写本(特にクムランの洞窟から発見された「クムラン写本」)とは、紀元前後のユダヤ教の一派であるクムラン宗団の所有していた写本群である。当時のユダヤ教三大教派の一つエッセネ派の一派であったクムラン宗団は、厳格な禁欲主義と生活規定に基づいてクムランの荒野にて集団生活を行っていた。写本群中の宗団由来と目される文書から見えてくる宗団の神学とは、「善の教師」と「悪の祭司」が対立し光と闇の勢力が相争う終末論的二元論の思想である。
    本書は写本の内容のみならず、その成立の背景となる当時のユダヤの時代背景、遺跡の考古調査の結果、写本時代の来歴などについても解説している。特に旧・新約聖書との関連について述べた章では、死海写本の発見が旧約聖書の本文研究に大きな進展をもたらしたこと、死海写本中の文言や思想が新約聖書中のそれと重なっている(=死海写本と新約聖書を生み出した思想的背景が重なっている)ことが指摘されている。死海写本の発見の意義とはまさにここにある。
    作者があとがきで「聖書とその周辺に関する、(中略)知識を前提としたものとなっていた」とコメントしているように、内容は少々専門的な所がある。とはいえ、死海写本の概要をコンパクトに知れる一冊といえよう。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741232

  • コンセプトや内容など「死海文書のすべて」とかなり被っているのだが、こちらの方が多少詳しいし最新の研究の内容など取り込んでいて良い。「死海文書のすべて」の後で研究の結果がひっくり返ってることがある(クムラン遺跡のドゥ・ヴォー説の修正や、第一エノク書と巨人の書の関係など)ので…その辺は後発の利だろうけども…。翻訳でないから読みやすいし、出典等もかなりフォローしてあるのでこれを文庫で読めるのか!と感動してしまった。
    そして最後に補遺でヨセフス、プリニウス、フィロンのエッセネ派について言及した箇所の日本語訳が載っていて本当にありがたい!そこが読みたかった!

  • 難しすぎて歯が立たなかったけれど、一応全部読んだ?ことになるのだろうか?理解もせずにダラダラと終わりまで。ただ、エッセネ派の人々の生活は興味深く読んだ。

  • 『死海写本』には何が書かれているのか、ということについての解説書。
    というと、ついオカルト的な本を期待してしまうが、オカルトとは全く無縁の内容。巻末の『あとがき』にもある通り、現在、旧約聖書として纏められていない文献の解説が多勢を占める。その『旧約聖書からこぼれ落ちた部分』というのが妙に心に引っかかる。

  • 1947年にベドウィンの3人の若者たちによってクムランの洞窟から発見された旧約聖書の写本。僅か14ドルで古物商に持ち込んまれた。牧歌的な情景で単なる美しい話のようで、具体的にはあまり知られていない。同年5月14日に行われたイスラエル建国宣言の直前の大混乱時期、パレスティナ独立戦争開始前夜のさなかで、命がけで有刺鉄線の戦線を越えてヘブライ大学のスーケニーク教授にわたったという。そして永年に亘って説き明かされてきた。旧約聖書がほぼ完璧に含まれていた他、外典・偽典、そして多くの独自文書。それがバチカン、キリスト教にとって不利な内容は全く含まれていなかった!そのクムラン教団とエツセネ派の関係は。そして彼らの信仰はどういうものだったのか?ヘロデ大王がエツセネ派に尊敬の気持ちを持っていたとは全くの驚き。

  • 死海写本に関する基本的情報等。

  •  オカルト的な解説ではなく学術的な解説。公開に至るまでの紆余曲折、写本が書かれた背景を経て、写本に何が書かれているのかが示されている。
     クムラン宗団(ユダヤ教の一派であるエッセネ派ないのグループ)による写本であり、宗団の思想を反映した取捨選択や註解が付けられている。しかしながら、かなり古い時期の写本であり、旧約聖書・新約聖書の編纂の過程で失われてしまったり、散逸してしまったために詳細不明となっていた部分が多く存在しているため、新たな発見の多い写本でもある。また、クムラン宗団そのものの思想も明確となり、古代ユダヤ教の実体や、キリスト教に至る過程も見えてくる。さらに当時のパレスチナ地域で何が起きていたのかもうかがい知ることができる記述も見つかっている。古いから大発見というのではなく、歴史、宗教においても新たな発見をもたらしたという点で大発見であったということが分かる。

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著者プロフィール

土岐健治(とき・けんじ)
1945年名古屋市生まれ。一橋大学名誉教授。聖書学。東京神学大学卒業。東京大学大学院西洋古典学博士課程修了。主な著書に『初期ユダヤ教と聖書』(日本基督教団出版局)、『旧約聖書外典偽典概説』『新約聖書ギリシア語初歩』(ともに教文館)、『ヨナのしるし』(一麦出版社)、訳書にO・クルマン『クリスマスの起源』、J・テイラー『西洋古典文学と聖書』(いずれも教文館)などがある。

「2015年 『死海写本 「最古の聖書」を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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