- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062923255
作品紹介・あらすじ
ジル・ドゥルーズ(1925-1995)は、20世紀後半を代表する哲学者、哲学研究者です。
わが国でも、早くは、浅田彰『構造と力』、蓮實重彦『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』などにより、紹介されてきました。21世紀の現在でも、なお、現代思想を代表する哲学者といえます。
ただ、日本への移入は、ドルゥーズのある一面に焦点をあてたという側面があり、また、日本の読者もそれを受容してきた歴史があります。
ドゥルーズの主著は『差異と反復』です。「差異」とは何か、「反復」とはどういうことか、それこそが、ドゥルーズの哲学の根本と言えます。
本書は、このテーマに真正面からとりくみ、ドゥルーズ研究の画期をなした力作です。
『差異と反復』は、分子生物学が誕生して間もない頃、その自然科学が持つ潜在力を認識しながら、新しい生命哲学を示そうとしました。そこには、微分という契機が不可欠でした。
では、なぜ、微分なのか?
本書は、そのスタート地点から始めて、周到にドゥルーズの思考をたどり、やがてスピノザ研究やニーチェ研究、また映画の研究を通じて、新しい倫理を引き出そうとした彼の哲学のみちすじを明らかにしていきます。
「差異」とは、乱暴に一例をあげれば、たとえば、誰も同じ人間ではない、あるいは「私」自体も、時間とともに変化して同じ存在ではありえない、ということです。世界はそのようにして出来ている。
紛争や格差が広がる現代世界の困難な状況を見ても、誰も、何も、同じでないことが、問題の根本の契機になっていることはあきらかでしょう。
では、「差異を生きる」とは、どういうことなのか。それを考えるうえでも、本書は必読の入門書といえます。
感想・レビュー・書評
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ドゥルーズの単著としては、彼の主著と呼ぶこともできる『差異と反復』の議論を紹介しつつ、ドゥルーズの思想を新しい「生命論」に根ざした自然哲学として読み解く試みがなされています。
普遍数学や分子生物学、スピノザ、ニーチェ、フーコーといった思想家たちや、画家のフランシス・ベーコンなどにかんする章がならんでいますが、基本的には著者の解釈する生命論的な世界像にもとづく議論がくり返し語られているという印象です。ただし著者の考える生命論は、一元論的な生命への還帰を説くものではなく、微分にかんするドゥルーズの議論を踏まえて、世界のうちに身を置くわれわれが、無数の差異を認めつつも、その差異を肯定することのできるような倫理を可能にするものとして考えられているところに、ポイントがあるように感じました。
本書は、ドゥルーズの解説書という体裁をとっていますが、本書をおもしろく読むことのできるのは、ドゥルーズの思想の解説ではなく、著者の倫理学的な考察そのものに興味を惹かれるような読者なのではないかという気がします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
p.2015/11/17
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微分方程式としてのドゥルーズの哲学を、この現実に敷衍してみせようとしている。その熱意に、「革命2.0」を見た。
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テキストの印象は確かにドゥルーズに似ている。ドゥルーズのやったと著者が思うように様々なことについて書いている。が、ドゥルーズそもそもが具体的なことをいろいろと語っている人なのでそれをなぞるとドゥルーズに注目するピントはどんどんぼやけてくる。あくまでも著者のドゥルーズ理解に基づく個別の話で、ドゥルーズ理解そのものではない。内容もやや込み入った話が多く素人には難しめ。
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151024 中央図書館
ドゥルーズ哲学=生命論なの?