ある神経病者の回想録 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (2015年10月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (632ページ) / ISBN・EAN: 9784062923262

作品紹介・あらすじ

「神」の言葉を聞き、崩壊した世界を再生させるために女性となって「神」の子を身ごもる……そんな妄想に襲われた一人の男は、みずからの闘いを生々しく書き綴った。それは、1903年に公刊されて以来、フロイト、ラカン、カネッティ、ドゥルーズ&ガタリなど、幾多の者たちに衝撃を与え、20世紀の思想に決定的な影響を及ぼした稀代の書物である。世界を震撼させた男が残した壮絶な記録を明快な日本語で伝える決定版。


本書の著者ダニエル・パウル・シュレーバーは、ライプツィヒ大学を優秀な成績で卒業したあと、裁判官としてのキャリアを築き、ザクセン王国の最高裁判所にあたる控訴院の議長にまで昇りつめた人物である。ところが、まさに議長に就任した直後、彼を狂気が襲った。
壁の中からかすかな物音がするのを聞くようになったシュレーバーは、やがて絶えず自分にささやかれる声を耳にするようになり、うんざりするような幻覚を見るようになる。彼に語りかけてくるのは「神」だった。世界は崩れ去り、人々はかりそめの存在に変貌する。主治医をはじめ、さまざまな人の姿をとって迫害を始めた「神」が望んでいたこと。それは、シュレーバーを「脱男性化」し、女性となったシュレーバーが神によって懐胎させられて新しい人類を生み出し、その新しい人類によって崩れ去った世界を救済することだった。
……こんな前代未聞の妄想に悩まされた男が書き上げ、1903年に公刊されたのが本書にほかならない。この書物は、まず精神分析の創始者フロイトに衝撃を与え、自分の患者ではないどころか、会ったことすらないシュレーバーを症例とする長大な論文「自伝的に記述されたパラノイアの一症例に関する精神分析的考察」を書かせた。その後、フロイトの衣鉢を継ぐ精神分析家ジャック・ラカンによってたびたび取り上げられたほか、エリアス・カネッティはパラノイアと権力の関係を論じるため、ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリは資本主義と統合失調症の関係を論じるために、シュレーバー症例を重大な足がかりにしている。
こうして幾多の人々に決定的な影響を与えてきた本書は、20世紀の古典として今後も不滅の価値を持ち続けていくことは間違いない。壮絶な記録を明快な日本語で伝える決定版、全面改訂を経て、ついに学術文庫に登場。

みんなの感想まとめ

精神的な闘争と妄想の深淵を描いた本書は、著者のシュレーバーが自身の経験を通じて、正常と異常の境界を問いかけます。元裁判官であり教養ある人物である彼が、女性としての存在を求める妄想に悩まされる様子は、驚...

感想・レビュー・書評

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  • 注目新刊:エーコ編著『異世界の書』、ほか : URGT-B(ウラゲツブログ)2015年 10月 18日
    https://urag.exblog.jp/21752708/

    狂気と理性の同居――『ある神経病者の回想録』 ダニエル・パウル・シュレーバー | 考えるための書評集(2016-12-18)
    https://ueshin.blog.fc2.com/blog-entry-2295.html

    ひとでなしの猫 ダニエル・パウル・シュレーバー 『ある神経病者の回想録』 渡辺哲夫 訳 (講談社学術文庫)(2019-03-02)
    http://leonocusto.blog66.fc2.com/blog-entry-3896.html

    『ある神経病者の回想録』(講談社) - 著者:ダニエル.パウル・シュレーバー 翻訳:渡辺 哲夫 - 吉本 隆明による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS(2020/03/08)
    https://allreviews.jp/review/3076

    『ある神経病者の回想録』(ダニエル.パウル・シュレーバー,渡辺 哲夫):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000211806

  • 『シュレーバー症例』として知られる一連の精神分析の元になった本。
    シュレーバー本人の経歴を読めば解る通り、元々は高等教育を受けた教養ある人物だと思われる。事実、本書も論理的でしっかりした文章で構成されている……が、その中に、明らかに『オカシイ』ことが普通に混じっているのが凄い。何と言うか、色々と圧倒される内容だった。

  • 原書名:Denkwürdigkeiten eines Nervenkranken

  • ある朝に、女性になってみたらどんなに素晴らしいかという思いを持った男の回想録。そうした思いに病気のさまざまな症状が重なった結果、異様な妄想世界が作り上げられている。彼は今でいう統合失調症と診断されてはいたものの、しかし現にこれだけまとまりのあるものを理性的に書きあげている点で正常であると言える。(実際に裁判でも、この手記を基に禁治産者宣告が解除されている。)

    彼は本当は正常なのか、それとも異常なのか。そうした正常と異常の境界を問う格好の材料となる書物であり、理性的なものを強く打ち建てようとする西洋思想の中でも重要な書物。

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著者プロフィール

1949年、茨城県生まれ。東北大学医学部卒業(医学博士)。都立松沢病院、東京医科歯科大学、栗田病院、稲城台病院などを経て、現在、いずみ病院(沖縄県うるま市)勤務。専門は、精神病理学。
主な著書に、『シュレーバー』(筑摩書房)、『死と狂気』(ちくま学芸文庫)、『〈わたし〉という危機』(平凡社)、『20世紀精神病理学史』(ちくま学芸文庫)、『祝祭性と狂気』、『フロイトとベルクソン』(以上、岩波書店)など。
主な訳書に、ジークムント・フロイト『モーセと一神教』(ちくま学芸文庫)、ダニエル・パウル・シュレーバー『ある神経病者の回想録』(講談社学術文庫)など。

「2018年 『創造の星 天才の人類史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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