興亡の世界史 ロシア・ロマノフ王朝の大地 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062923866

作品紹介・あらすじ

講談社創業100周年記念企画として刊行された全集「興亡の世界史」の学術文庫版。大好評につき第2期スタート!
「ロシア」は初めから現在のような「大国」だったわけではない。しかし、チェチェン紛争をはじめとする民族問題や、シベリアの資源開発など、現在のロシアが抱える問題の多くは、帝政ロシア時代にすでに始まっていた。本書は、ロマノフ王朝の300年を中心に、その継承国家であるソ連邦の74年間をも通観する、広大無辺を誇る多民族国家の通史である。
大改革を強行したピョートル大帝、女帝エカテリーナ2世と寵臣ポチョムキン、ナポレオンを敗走させたアレクサンドル1世、革命の中で銃殺されたニコライ2世一家……。「よきツァーリ」「強いツァーリ」たらんと奮闘を続けたロマノフ家の群像と、暗殺・謀略に満ちた権力のドラマ。
また、騎馬遊牧民との長い敵対、シベリア・中央アジアへの移住と植民。こうしたロシア特有の地理的条件は、歴史に何をおよぼしたのか。そして「第三のローマ」モスクワを中心に社会に根をおろし、ソヴィエト崩壊後に復活をした「キリスト教」は? ヨーロッパとアジアの間に生きた民衆と社会を、社会史の観点から描いて高評を得た、新しい「ロシア史」を試み。
原本:『興亡の世界史 第14巻 ロシア・ロマノフ王朝の大地』講談社 2007年刊

感想・レビュー・書評

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  • 意外だったのは、ソ連という国がアメリカと張り合っているかに見えたのは歴史時間としては一瞬に過ぎなかったこと。スターリンが死んで、フルシチョフが立ったころになって初めて「アメリカに追いつき、追い越せ」というアピールが始まる。そのフルシチョフもやがて倒れて、あっという間にゴルバチョフの登場、雪融け、ペレストロイカにグラスノスチ、ソ連崩壊、と事態は進む。

    西側諸国にも社会保障の充実を強いた東西冷戦とは、鉄のカーテンとは何だったのか?そして、冷戦終結とともに今やいともたやすく放棄されつつある自由主義福祉国家という理想像を現実化するためには、今後何が必要なのか?

    ずいぶん考えさせられる本だった。といって、この本の主題はあくまでロシア通史であって社会考察の本ではないのだけど。

  • 先日ほかの本で、ロシアの歴史がウクライナから始まったことに驚きました。
    この本でさらに驚いたのは、ウクライナも、イギリス、フランスのノルマンディー公国、シチリア王国と同様
    ノルマン人の移動から始まった、ということです。
    人数が多くはなかったので、スラヴ人との通婚により同化していったということですが。

    上に書いたように、この本は、ロマノフ王朝だけでなく、その前後も一章ずつ書かれているので、ロシア通史といっていいと思います。
    ロシアがいろいろ大変だったのは、広すぎたということが大きい理由でしょうね。
    ピョートル大帝の時代からの200年間で、ロシアの領土は平均すると一日400k?の割合で増加しました。
    6日で東京の広さ増加したということです!

    日本みたいに狭かったらその中でなんとかしようと思うけど、
    広いものだから逃亡農民とか出てきてしまうわけです。
    だからずーっと農業の問題をかかえ続けているのですね。

    そして、いろいろまとまらないのです。
    日露戦争で苦戦しているとき、プレハーノフ(ロシア最初のマルクス主義者と公認されている)は
    「日本は圧迫された諸民族に代わって復讐しているのだ」と演説しました。
    しかも日露戦争の理由の一つが
    「治安を回復するために残された最後の手段が、極東での戦争であった」とのこと。

    けっきょくロシア革命のあとのソ連も大変な国だったということがわかっていますが、
    今のロシアはどうなんでしょう?

  • ・ロシアとモンゴルの深いつながりが理解できた。
    ・広大な土地という地理的条件が歴史を作ってきたのだと感じた。日本の歴史とは全く違う足取りに驚いた。
    ・人口が何度も激減するさまが凄まじかった。
    ・ツァーリという専制的な君主が統治し、彼らによってロシアの命運が左右されていたのが面白い。日本の歴史にはそのような圧倒的な権力が存在しなかったのではないか。
    ・ロシアが多民族国家であるという認識が深まった。

    【全体的な感想】
    歴代の専制君主の人物像や思想へも記述が豊富で、統治者の視点で(当事者意識を持って)歴史を見ることができる優れた本だと感じました。

  • 新しく知ったこと
    ・シベリア移民には陸路の他に、オデッサ→スエズ→極東の海洋ルートがあった。(281ページ)
    シベリアにウクライナ系が多い理由の一つではあると思う。
    ・ゴスプランにはゼムストヴォの統計官がシフト。(324ページ)
    地方の司祭層から統計局や歴史家になる例が多かった。(227ページ)
    ということは、ゴスプランで計画経済作っていたのは元々は司祭とか地方の読み書きできた広義のインテリだったのか。

  • ウクライナ侵攻を機に手に取った。

    これまで中学校の世界史レベルにしか知らなかったロシアの歴史を概観するには、とても良かった。文章も読みやすく、楽しい。

  • 「タタールのくびきを経験することでロシアはヨーロッパとは異なる道を歩むことになった」

  • リューリクからおまけでソ連史まで

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741460

  •  ロシアって世界の情勢に大きな影響を与えてる大国ですが、殆どその歴史を勉強したことがないのではないでしょうか?社会主義革命を起こして、世界中を革命の渦に巻き込もうとしていたのに、その理由や背景は何もわかっていない。
     戦争と平和とか罪と罰とか世界的な名作を産んだ国土なのだけれど…
     ロシアの歴史って面白いですね。

  • ロシア。イメージが沸かない。

     世界史を勉強しなかった40歳代のおっさんだと、ロシアのイメージというと、社会主義、ゴルバチョフ、チェルノブイリ、シャラポワ、ピロシキ。あ、あとマトリョーシカ。ようは散発的なもの以外に包括的なものがない。敢えて言えば、何か暗い、みたいな。

     しかし、この本を読んで、おかげでロシアのイメージが少し形づくられたと思う。

     講談社学術文庫はどれも値段が張るが、この興亡の世界史シリーズは本当に高い!文庫なのに1,360円!新刊本の値段と同じじゃないですか!若干買うのをためらったが、結果としては非常に面白い本だった。

     印象的だった部分を挙げると、皇帝の専制、多数の農奴、オスマンとの領土争い、ヨーロッパの辺境。

     皇帝という権力者とその取り巻きによって政治と金が牛耳られる構図はどこも同じなのかもしれないが、各皇帝の話は面白く読めた。特にエカテリーナ二世については事前にHuluで”エカテリーナ”を見ておりそこで見聞きした内容とオーバーラップして勉強できました。ちなみにドラマは愛人との描写が生々しく、子供と見ると大分お互い照れます笑

     また農奴の解放と近代化の描写(6章)のあたりは地方の農奴の都市流入、労働力の供給、放蕩、賭事、飲酒、などまさに暗ーいロシア文学の舞台設定(というかこれが事実か)そのものでした。改めてトルストイとかドストエフスキーを読み返したくなりました。
    また、社会主義への変革を鮮やかに描いた”王朝なき帝国”(9章)は激しかった。ニコライ二世一家の惨殺やレーニンの半端ない殺戮。妥協とか余地とかを許さない社会主義者の専制は読んでいて悲しくなりました。

     そんな中でつらつら読んでいて感じたのは、ロシアと日本との共通性です。皇帝と天皇、ラスプーチンと東郷、農奴解放の貧民層と日本現代社会のニート、急進的社会主義者とネット右翼。単純なインスピレーションですが、日本の現象を理解するのにロシアの歴史の出来事を援用したりできそうな気がしました。

     最後に纏めますと、この本は非常に面白く読めました。特に世界史初学者にはおすすめします。
    本の主旨はロシア通史の描写であり、これを読んで筆者の意見を受け取るとかそういう話ではありません。しかしながら、ロシアってこんな感じの国で成り立ちなんだと理解する上では非常にいい本だと思います。願わくばもう少し価格が安いと嬉しいけど笑

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著者プロフィール

1947年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程満期退学。現在、一橋大学名誉教授。訳書、クリュチェフスキー 『ロシア農民と農奴制の起源』 未来社、1982年。著書、『岐路に立つ歴史家たち―二十世紀ロシアの歴史学とその周辺』 山川出版社、2000年。

「2010年 『V・O・クリュチェフスキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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