- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062924139
作品紹介・あらすじ
侠客の原点は、信義を重んじ個人的利害を度外視して、時には命がけで弱きを助け強きを挫くことにあります。わが国では、侠なる人々が表立って登場するのは、近世江戸時代以降だが、中国の侠の歴史は、古代にまで遡ります。
中国史上、「侠者」が出現するのは、諸国が分立した春秋時代(前七七〇―前四〇三)以降です。春秋時代も後期に入ると、老子、孔子、墨子など、乱世において、人はどう生きるべきか、社会はどうあるべきかを模索する思想家があらわれ、こうした思想家と侠者の共通性があります。
孔子は、「義を見て為さざるは勇無き也」など、信義を重視しました。また、「言必ず信、行必ず果」など、個人の不屈の意志や行動力を称揚します。老子にも「大道廃れて仁義有り云々」と仁義を強調する発言があり、墨子は大国が小国をむやみに圧迫・攻撃することに反対して、「非攻」論を唱え、「弱きを助け強きを挫く」を実践しました。道家にも墨家にも侠者の精神に通じるものがあるのは確かです。
信義を重んじ、果断に行動する侠者的存在は、乱世のエトスのなかから、儒家、道家、墨家などの思想と軌を一にして生まれたようです。侠の精神に、これらの思想と共通点があるのも当然でしょう。
本書は、歴史と物語の両面から、『史記』『三国志』などの歴史書、『水滸伝』『聊斎志異』や元代の戯曲などから、選りすぐりの中国の侠者の変遷を具体的にたどり、スケールの大きな大陸的「侠」の世界に遊びます。
感想・レビュー・書評
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著者の他の列伝本との比較だが、人物数を絞って掘り下げるか、又は多くの人物を簡潔にテンポよく取り上げるかであれば自分にはより読みやすかったと思う。読みにくい最大の原因は自分の予備知識不足なのだが。
春秋戦国から三国六朝までは実在の、唐から清代までは創作上の人物を取り上げる。義侠心タイプとならず者タイプがおり(水滸伝の面々は両方だが)、「侠」とはこの2つの意味を併せ持つと実感。本書に出てくる侠出身の著名人としては劉邦や劉備、そして水滸伝の面々。著者は彼らを、春秋戦国時代に多かった個人としての侠と対比させ、軍団・組織の侠と分類。劉備は演義の仁愛イメージと異なり、正史では結構な遊侠・無頼の人物だったようだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
侠客という言葉は、人物やカテゴリというより、その精神から出ずる行動そのものを指している。何がを突き動かすという点、吉田松陰が言うような「狂」と通じるものがあるようにも感じた。途中、三国志や水滸伝など物語の紹介に終始しがちな部分もあったが、長い中国史全般をカバーして、そこにおける侠の意味合いを追う内容は、テーマとして興味深かった。
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170402 中央図書館
膨大な情報量。現代中国はキライでも、中国史には興味を持つ人が多いと思う。