十二世紀のルネサンス ヨーロッパの目覚め (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062924443

作品紹介・あらすじ

中世は、決して暗黒期ではない。中世とルネサンスの間に、断絶はない――。

ルネサンス(古典復興)は1400年代(クァトロチェント)のイタリアで突然起こったのではなく、ヨーロッパ各地でそれに先駆け、すでにさまざまな創造がなされていた。
「中世」というとギリシア・ローマ文化を破壊、封印した陰鬱な時代、と捉えられがちだが、それはまったくの誤解である。とりわけ12世紀頃における文化復興は「中世ルネサンス」と呼ばれ、新鮮な活力にあふれている。


ラテンの古典と詩が息を吹き返し、遊歴詩人たちから聖俗混ざった抒情詩『カルミナ・ブラーナ』が生まれる。ローマ法の復権が見られ、ギリシアをはじめアラビア、スペイン、シチリア、シリア、アフリカと多方面から知識が流れ込み、それは哲学、科学の発展をもたらした。そして七自由学芸(リベラル・アーツ)のさらなる充実、知識の膨張による、必然としての大学の誕生……

「他に例を見ないほど創造的な、造形的な時代」(ホイジンガ)の実像をたどり、中世の歴史的位置づけを真っ向から問い直した問題作。アメリカの中世史家はこの大著で歴史的転換を迫り、従来の暗黒史観に衝撃を与えた。
(C.H.Haskins,The Renaissance of the Twelfth Century,Harvard University Press,1927.邦訳『十二世紀ルネサンス』みすず書房、1989初版、1997新装)

感想・レビュー・書評

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  • 豊富な知識や調査、鋭い分析に裏打ちされた西洋中世史の専門的書物である一方、分かりやすさ、という点にも配慮されている。素晴らしい。
    また章を分け、それぞれの分野に沿って十二世紀ルネサンスを多角的に解体していく著者の胆力には圧倒される。
    中世暗黒時代と呼ばれる決まりきった歴史概念と対峙していく精神にも拍手を送りたい。
    千年以上にも長きにわたる大きな時間を安易にダークだと断定するのは勿体無い。
    日本のファンタジー愛好者たちの作品を分析する際、強い批判的視点にもなり得る。

  • 2017.09―読了

  • ルネサンスと言われてすぐに頭に浮かぶのは、イタリアを中心とする14~16世紀のイタリア・ルネサンスであろう。そしてそれ以前の中世は、18世紀の啓蒙主義者たちによって、人間精神が停滞した「暗黒時代」だとみなされた。このような偏見に対して、イタリア・ルネサンスに先行する12世紀ルネサンスの存在を明らかにし、中世からイタリア・ルネサンスへの連続性を強調したのが本書である。12世紀のヨーロッパはイスラム勢力からイベリア半島やギリシアなど「失地」を回復しつつあり、それに伴いイスラム世界に温存されていたギリシア・ローマの思想や科学と再会することになる。イタリアを中心とする商業活動の活発化に応じてローマ法も復活し、ラテン語の文芸作品は聖俗に及びキリスト教を風刺するラテン詩も生まれた。著者は当時の膨大なラテン語文献を渉猟して、活性化していく自由な人間精神の諸相を浮き彫りにしていく。その圧倒的な知識と筆力には驚嘆するばかりだ。

  • 第一章 歴史的背景
    第二章 知的中心地
    第三章 書物と書庫
    第四章 ラテン語古典の復活
    第五章 ラテン語
    第六章 ラテン語の詩
    第七章 法学の復活
    第八章 歴史の著述
    第九章 ギリシア語・アラビア語からの翻訳
    第十章 科学の復興
    第十一章 哲学の復興
    第十二章 大学の起源

  • 原題:The Renaissance of the Twelfth Century (1927)
    底本:『十二世紀ルネサンス』(みすず書房 1989初版 1997年新装版)
    著者:Charles Homer Haskins (1870-1937)
    訳者:別宮貞徳(1927ー)
    訳者:朝倉文市(1935ー)

    【書誌情報+内容紹介】
    発売日 2017年08月09日
    価格 本体1,280円(税別)
    ISBN 978-4-06-292444-3
    判型 A6
    ページ数 424ページ
    シリーズ 講談社学術文庫

     中世は、決して暗黒期ではない。中世とルネサンスの間に、断絶はない――。 
     ルネサンス(古典復興)は1400年代(クァトロチェント)のイタリアで突然起こったのではなく、ヨーロッパ各地でそれに先駆け、すでにさまざまな創造がなされていた。
     「中世」というとギリシア・ローマ文化を破壊、封印した陰鬱な時代、と捉えられがちだが、それはまったくの誤解である。とりわけ12世紀頃における文化復興は「中世ルネサンス」と呼ばれ、新鮮な活力にあふれている。
     ラテンの古典と詩が息を吹き返し、遊歴詩人たちから聖俗混ざった抒情詩『カルミナ・ブラーナ』が生まれる。ローマ法の復権が見られ、ギリシアをはじめアラビア、スペイン、シチリア、シリア、アフリカと多方面から知識が流れ込み、それは哲学、科学の発展をもたらした。そして七自由学芸(リベラル・アーツ)のさらなる充実、知識の膨張による、必然としての大学の誕生……

     「他に例を見ないほど創造的な、造形的な時代」(ホイジンガ)の実像をたどり、中世の歴史的位置づけを真っ向から問い直した問題作。アメリカの中世史家はこの大著で歴史的転換を迫り、従来の暗黒史観に衝撃を与えた。
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924443


    【簡易目次】
    はしがき
    第一章 歴史的背景
    第二章 知的中心地
    第三章 書物と書庫
    第四章 ラテン語古典の復活
    第五章 ラテン語
    第六章 ラテン語の詩
    第七章 法学の復活
    第八章 歴史の著述
    第九章 ギリシア語・アラビア語からの翻訳
    第十章 科学の復興
    第十一章 哲学の復興
    第十二章 大学の起源
    原注
    解説(朝倉)
    あとがき(別宮)
    文献書誌

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