- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062924450
作品紹介・あらすじ
漢字は言葉ではない。記号である。漢字にはオトは必要ない。どの言語ででも漢字を「訓読み」できる。では、中国文明の周辺地域を含めた「漢字文化圏」とは自明のものなのか。歴史上の突厥・契丹・西夏・女真・モンゴル文字など、漢字からの自立運動は何を意味するのか。漢字を残す日本語は独自の言語であることの危機に瀕しているのか。言語学者が考察する文字と言語の関係。
感想・レビュー・書評
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北京に向かう飛行機の中で読み始め、中国語の夢でうなされた北京のホテルで読了する。
夢の中で、一言もわからない言葉で人々がしゃべっている。
なのに、それが中国語だと鮮明にわかる。
中国語を学んできたのだから、聞き取れる語はあるはずなのにー、という夢。
この本をチョイスしたのは、異言語ストレスに直面する自分を何とか支えようとするつもりであったのかー。
内容としては、ソシュールの言語論と戦後民主主義の出会ったもの、とでも言おうか。
今やこういう意見は、絶滅寸前かもしれない。
言語の本質はパロールにあり、文字は副次的なもの。
日本語は漢字語を取り入れたために、表記の体系も複雑で、同音語も多く、聞いてわかりやすい言葉でなくなった。
特に特権的な知識人は難解な漢字語を多用して人々をけむに巻いている。
ごく単純に言えば、論旨はこんなところ。
中国語学習者として、音の大切さは身に染みて理解できる。
今だって、それで苦労しているのだから。
そして、漢語を廃した新しい日本語とはどういうものかにも興味が引かれる。
確かに、日本で暮らすことを選んで来日した「日本語人」のためにも、シンプルな日本語は必要だ。
が、一方では、漢語を廃したときどうなるのかというイメージが全くわかない。
それに知識人が難しい言葉を弄して空疎な議論を隠すことは、漢語がなくなっても、英語などの借用で取って代わられるのではないかという気もする。
読んでいて、これは現代の本居宣長なのかなあ、とも思えてくる。
個々の話題として面白いこともあった。
ドゥンガン語という、キルギスタン、カザフスタン、ウズベキスタンに広がる回族の言語の話。
言葉としては中国語なのに、旧ソ連に編入されたためにキリル文字で表記する。
漢字を今でも常用するのは台湾を含めた中国語と日本語だけだという。
表意文字はこの先、消えていくのか?という思いに駆られた。
ロシア語の話も出てきて、モンゴル語やチュルク語からの借用も多いということも初めて知った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
底本を読んだ感想:漢字帝国主義批判というか漢字本質主義というか。
ただ、素材の面白さは死んでいないと思う。文字の選択というのは永遠のテーマ。未だ現存するローマ字表記を推す一派を思い出した。
【書誌情報+内容紹介】
発売日 2017年08月09日
価格 本体1,050円(税別)
ISBN 978-4-06-292445-0
判型 A6
ページ数 312ページ
シリーズ 講談社学術文庫
漢字は言葉ではない。記号である。漢字にはオトは必要ない。どの言語ででも漢字を「訓読み」できる。では、中国文明の周辺地域を含めた「漢字文化圏」とは自明のものなのか。歴史上の突厥・契丹・西夏・女真・モンゴル文字など、漢字からの自立運動は何を意味するのか。漢字を残す日本語は独自の言語であることの危機に瀕しているのか。言語学者が考察する文字と言語の関係。
<http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924450>
【目次】
第一章 日本語という運命
母語ペシミズム
外国人をはばむ漢字語
日本人に八つもの言語が!
「言語共同体」とは
ことばの名に「国」をつけるな
言語共同体は運命共同体
第二章 「日本語人」論
日本語人にはみずからの意志によってなる
自分の意志でなるカナダ人
人類共用語のために母語を捨てられるか
漢字はローマ字に勝てない?
文法はかえられない
文字はかえられる
オト文字は言語の構造をより明らかにする
第三章 漢字についての文明論的考察
「漢字文化圏」論
日本は「漢字文化圏」の行き止まり
漢字文化圏からの離脱の歴史
進化する本家の漢字
中国語知らずの漢字統一主義者
漢字に支配されなかった周辺諸族
特に突厥文字の原理について
ウラル=アルタイ諸語を特徴付ける母音調和
チベット文字とモンゴル文字
漢字におと7は必要ない
訓読みはどの言語にも起きうる
音読みだって一通りではない
数字の訓読み
ローマ字にも見られる象徴性
ふりがな、訓読みは線条性(リネアリテ)に反する
歴史記述と線条性
筆談で伝えるのは言葉ではない
もしローマ帝国が漢字を使っていたら
漢字は言語を超えている
いまさら「音声中心主義」?
周辺民族の恐るべき言語本能
直接支配下にあった朝鮮語
ハングルによる朝鮮語の闘いはこれから
中国語そのものが漢字と闘っている
日本人と漢字――最後に残る漢字圏の問題
第四章 「脱亜入欧」から「脱漢入亜」へ
日本は中国と同文同種か
中国語は日本語よりも英語に近い
モンゴル語が開いてくれた世界
トルコ語もフィンランド語も
ラムステッドに導かれて
ウラル=アルタイ語世界
印欧語比較言語学と音韻法則
音韻法則を超えて
カタテオチのカタはウラル=アルタイ共有語
中国語はhave型言語
ロシア人を捉えて放さないユーラシア主義
東方性こそがロシアの特徴
ユーラシア・トゥラン語圏
トゥラン主義の日本への伝播
日本文化の基軸にかかわる漢字問題
漢字という障害物
ドゥンガン語――漢字抜きの中国語
「漢字文化圏」の外に経つ漢語 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741806 -
この言語学者さん、昔〜しから、気になってましたが、読んだのは、はじめて、、なんかワザと極論いってて、そこまで言わなくても、と思うところはあるけど、最近、漢文やんなくちゃ、とか、、こつこつサンスクリットかじってる自分には、相当ショッキングな、考え方だけど、よ〜く考えてみると、そんなに違った方向ではなく、例えばお経の扱いとか、日本語として考えてみると、とても変で、文字・オト・意味の関係がおかしい、、でも消え去ることがないって、どういうことなんだろうとか、、