バロックの光と闇 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062924641

作品紹介・あらすじ

「バロック」という言葉を目にして、何を思い浮かべるだろうか?
もともと「歪んだ真珠」、「いびつな真珠」を意味する形容詞として生まれた「バロック」という言葉は、「粗野な」、「劣った」、「価値の低い」というニュアンスを帯びて使われるようになった。しかし、その一方で、バッハに代表される「バロック音楽」や、サン・ピエトロ大聖堂前の広場に見られる列柱廊に代表される「バロック建築」など、雄大にして壮麗な作品群が「バロック」の名で呼ばれてもいる。
──では、「バロック」とはいったい何なのか?
パリのポンピドゥー・センターの建築から始まる本書は、西洋美術史研究の第一人者が、音楽や建築にとどまらず、美術、演劇、文学にまで及ぶ多彩な分野を、さまざまな時代にわたって縦横無尽に駆けめぐりながら、バロックの本質に迫っていく魅惑の旅の記録である。ジャンルとしての「バロック」でもなく、時代区分としての「バロック」でもなく、現代にまで至る全時代に見て取られるものとしての「バロック」を、無数の作品を渉猟しながら求めていった先には、現代こそバロックの時代である、という事実が浮かび上がる。
多数の図版を収録した原本に、さらに新たな図版を加えた決定版が登場!

感想・レビュー・書評

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  • バロックの華々しい宮廷文化を創出したのは太陽王ルイ14世です。代表作はヴェルサイユ宮殿ですね。そして、ロココが生まれたのはルイ15世の時代、作品はマリーアントワネットが好んだプティ・トリアノンでしょう。
    私が惹き寄せられてやまないのは、バロックが終焉しロココの扉を開く架け橋のようなときに、ヴァトーが描いた「シテール島への巡礼」です。そこには愛の成就とともに愛の終焉を同一作品に描き込まれていて、その時代精神が「源氏物語」と共振するように思えるからです。
    バロックを時代概念で捉えるのではなく、様式概念で捉えるならば、本朝の桃山文化はまさにバロックであり、寛永文化はロココでしょう。そこには共通する時代精神が流れています。高階さんはバロックの永遠性を見出されたが、洋の東西を問わない普遍性もあるのではないでしょうか。

  • バロック絵画は、作品のインパクトが強くて、「すごい!」とか「ああ、こういう場面ね」「うっとり・・・」とか、実物を見てわかった気になって満足してしまいがちで、それ以上深く考えなかったりしてしまいがちだったのだけれど、これを読んでずいぶん眼力が上がったように感じました。絵画彫刻だけじゃなくて、建築やそのほかいろいろ幅広いです。著者の教養には、いつも驚いてます。すてきです。

  • 「バロック」に関する知識を得るにはとっておきの本。それ以上の面白さはなく、淡々と読んだ。けれども、掲載されている図版が多いのは良かった。改めて、ベルニーニに注目。あと、ロココにも注目。

  • バロック芸術の成立とその文化的影響を、ルネッサンス後期からロマン派と新古典派の対立時期にかけての時代背景の考察を交えつつ、きわめて簡明な文章で綴る。プッサンのいくつかの作品やヴェルサイユ宮殿にまでバロック的要素が見られる、とするのはやや牽強付会の観もないではないが、その興隆が西洋文化の大きな転換点であったことは間違いない。「バロックは意志である」との著者の言葉が重く響く。

  • バロックの意味とその芸術作品における表れ方を的確に分かりやすく解説されていて,頭の中を整理するのにぴったりの本.作品の写真もかなり掲載されていて非常に良かった.

  • 『バロックとは何か?』というテーマについて、主に絵画や彫刻といった視覚芸術をメインに解説されている。
    文庫版という判型では図版がどうしても小さくなってしまうので、パソコンで時々、画像検索をかけながら読むともっと楽しい。

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著者プロフィール

高階 秀爾(たかしな・しゅうじ):1932年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1954ー59年、フランス政府招聘留学生として渡仏。国立西洋美術館館長、日本芸術院院長、大原美術館館長を歴任。現在、東京大学名誉教授、日本芸術院院長。専門はルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術、西洋の文学・精神史についての造詣も深い。長年にわたり、広く日本のさまざまな美術史のシーンを牽引してきた。主著に『ルネッサンスの光と闇』(中公文庫、芸術選奨)、『名画を見る眼』(岩波新書)、『日本人にとって美しさとは何か』『ヨーロッパ近代芸術論』(以上、筑摩書房)、『近代絵画史』(中公新書)など。エドガー・ウィント『芸術の狂気』、ケネス・クラーク『ザ・ヌード』など翻訳も数多く手がける。

「2024年 『エラスムス 闘う人文主義者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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