オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062924931

作品紹介・あらすじ

民族・言語・宗教が複雑に入り組み、多様な人々を包み込む中東・バルカン。その地を数世紀の長きにわたり統治したオスマン帝国の政治的アイデンティティ、社会統合、人々の共存システムとはどのようなものだったのか。帝国の形成と繁栄、解体の実像、そして文化世界としてのイスラム世界の伝統を世界史的視点から位置づけ、現代にまでつながる民族紛争の淵源を探る。

感想・レビュー・書評

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  • オスマン帝国の歴史に触れたくて読み始めたところ、第1部が理論編で思いのほか難しく、うぅ、これは厳しいかも…と、尻込みしそうになりましたが、我慢して1部を読んだら、2部以降が俄然面白く読み切れました。
    構成の妙ですね。

  • 『オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」』の姉妹編!

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741952

  •  イスラム教を母体とするオスマン帝国について学ぼうと手に取った。
     著者によると、オスマン帝国時代、いわゆるイスラム世界は、他宗教を排他的に扱うのではなく、他宗教に課税等の義務を課しながら共存する社会を構築していたという。本著ではイスラム教の融和的な側面に焦点が当てられている。
     人間というのは、宗教や民族、肌の色、言語、出自地域などで括ることができる何らかのまとまりに固執し、かつ政治の多数派になることにより、生活の安定若しくは優位性を確保しようとする。そして結局は多数派と少数派の間で諍いが生ずる。これは科学がいくら進歩しようと人類の根っこの部分に残る抗えない性なんだろうか。

  • 最高に勉強になった
    ただ、最初の方に、オスマン帝国の歴史をざっとまとめてあるが、それでもその部分は長く、早く本題に入ってほしいと思った。
    割と薄い本だが、オスマン帝国が、その版図にあった現代の国家に与えた影響を考える上では重要。

  • 題名はオスマン帝国の勃興とその落日のようだが
    主役はそこでなはなく
    現代でも主要な民族紛争の舞台である
    バルカンおよびパレスティナ
    その原因のひとつとして地域的特性を挙げ
    近代以前のオスマントルコによる統治と
    近代以降の
    西洋ナショナリズム(ひとつの民族ひとつの国家)による
    「西洋の衝撃」を解く論考
    近代西洋における国民国家思想と現実はなぜ生まれたか
    その対比として近代以前のイスラム世界はどうあったか
    そしてそれを継いだオスマン帝国が影響力を失っていき
    トルコ共和国となっていく過程で何が起こったか
    というようなことが説明される
    当然ながら民族紛争はイスラム西洋間のみの衝突でなく
    歴史という大局からは現実への反抗に際しての
    宗教とならぶ旗印でしかないはずではあるが
    民族の一体という夢が多くの人々の独立欲を駆り立て
    そして帝国主義に対抗した原動力であるのもまた事実
    平穏と豊かさを誰もが求める一方で
    公共にそぐわなくとも個人利益と功名を求める欲こそが
    世界を前に進めてきたのもまた現実
    ローマもイスラムもモンゴルもアメリカヨーロッパも
    現代中華も
    世界国家であるところに大きな華があった一方で
    停滞と退廃があり
    小国家の貧しさと引き換えの盲目の幸せと
    いずれが優れた世界システムであるかは難しい
    寛容も合理も総論反対しようがないが
    その匙加減に誰もが納得することは有り得ない
    歴史は現実と向き合って
    全ての歴史の構成者が
    よりよく賢明であるべきを示唆するが
    答えを教えてくれるわけではない

  • 小笠原弘幸「オスマン帝国」に触発されて。大づかみに言うと、宗教を軸に統治しようとしたオスマン帝国が、支配下の「民族」の「国民国家」による統合の熱望に、対抗し得なかった、ということに。また、多様性を認める社会の困難さのモデルとして、崩壊過程のオスマン帝国がケーススタディーとしてあげられる。

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著者プロフィール

1947年生
1982年 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、法学博士
東京大学東洋文化研究所教授などを経て、
現 在 東京大学名誉教授

著書:
『オスマン帝国――イスラム世界の「柔らかい専制」』(講談社現代新書、1992年)
『オスマン帝国の権力とエリート』(東京大学出版会、1993年)
『オスマン帝国とイスラム世界』(東京大学出版会、1997年)
『世界の食文化(9) トルコ』(農村漁村文化協会、2003年)
『ナショナリズムとイスラム的共存』(千倉書房、2007年)
『文字と組織の世界史』(山川出版社、2018年)
『オスマン帝国の解体――文化世界と国民国家』(講談社学術文庫、2018年)
『文字世界で読む文明論――比較人類史七つの視点』(講談社現代新書、2020年)
『食はイスタンブルにあり――君府名物考』(講談社学術文庫、2020年)
『帝国の崩壊――歴史上の超大国はなぜ滅びたか』(編著、山川出版社、2022年)他

「2023年 『オスマン帝国の世界秩序と外交』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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