道化師の蝶 (講談社文庫)

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  • 講談社
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感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062930079

感想・レビュー・書評

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  • まるで言葉遊びをしているように感じられ,その実,言葉という事象の可能性を追究し,延いては知的生命体としての人間の限界を探っているのかも知れない.文学という名を借りた哲学的ディベート.平易にして難解,とは正にこのこと.

  • 分からなかった。再読した方がよいのだろう。
    解説を読んで思ったことは、読むことも翻訳であるなら、これは読む人によってどのようにも翻訳されうる小説なのではないか。
    とにかく、ページ数は少ないがやたらに時間がかかってしまった。

  • 100%理解できたとは言いません

  • 円城塔は苦手意識があって読んでいなかったが、今読んで正解だった。
    道化師の蝶:全体を読んだ読者の脳内に、物語を捕らえさせる網のような作品。
    松ノ枝の記:人類の発生からの移動の道筋は人間の頭骨の曲線に似る。終着地ニュージーランドでの邂逅。

  • スラスラ読めるが内容がよくわからない

    原作に対する翻訳は完全なコピーにはならずオリジナルになり、翻訳を読む読者の頭の中でさらにオリジナルができあがる?

  • 読書開始日:2021年9月19日
    読書終了日:2021年9月27日
    感想
    難解な作品だった。
    特に道化師の蝶は全く分からなかった。
    初めて美術館に行った時のような感覚。
    なにかを読み取ろう感じ取ろうとするが、全く歓迎されていない感じ。
    その雰囲気さえ読み取れればいいのだろうか。
    なにか気取った綺麗な映画を垂れ流し見た感覚。記憶に残らない。
    この読後感が正解なのだろうか。
    松の枝の記についても、やはり道化師の蝶と同じような展開となったが、
    太古の記述を乗り越えた先に大きな感動があった。
    これは途中で引き返してしまったものには見れない景色だ。
    意味不明な展開にも理由付けが出来て、かつ彼女と彼の成長も見れた。
    「彼は、自分が彼女の脳機能の一部であると、ついに自力で考えついたような男だ。」
    この一文がなんともかっこよい。
    そして図書館のラストシーンが温かい。
    探検のような小説だった。

    道化師の蝶
    わたしにとって動くことは衝動ではない。留まり続けることが衝動なのだ
    作品ではなく、作品の作り方を交易している。
    法人格とは時にそうした不死を生み出す
    貴重な標本なんていうものが他人の手で採取されるくらいなら、決して見つからないまま失われた

    松の枝の記
    原文と翻訳をわざわざ対照してみる奇特な読み手のために
    他人との異なり方が似ている
    全てのものは殻を持つ
    「見知らぬ人々」を見出したのは滑稽だ。彼らはそれをただ忘れていただけに過ぎないのに
    彼は、自分が彼女の脳機能の一部であると、ついに自力で考えついたような男だ。

  • 折を見て再読したい欲求は浮かんだが、奇妙なことに腹が立つ。

  • 中篇が二つ。どちらも頭の中がグルグル回るが、円城塔の醍醐味が満載★
    友幸友幸はハンバート・ハンバートだし、「蝶」だし、おお、ナボコフ〜!

    解説が拘りの翻訳家・鴻巣友季子、ってのがグッドチョイスだと思った。

  • 無活用ラテン語で書かれた小説『猫の下で読むに限る』で道化師と名指された実業家のエイブラムス氏。その作者である友幸友幸は、エイブラムス氏の潤沢な資金と人員を投入した追跡をよそに転居を繰り返し、現地の言葉で書かれた原稿を残してゆく。幾重にも織り上げられた言語をめぐる物語。芥川賞受賞作。

  •  SNS上の知人が好きな作家、ということでこの人を知り、どうやら「シュールな」系の作風らしいと興味を持ち、読んでみることにした。
     フランツ・カフカを嚆矢とする「シュール」文学は、日本ではまずは安部公房だが、安部公房の初期の作品はやたらに饒舌でドタバタで、奇想の背後には、現代音楽の作曲家で言うと三善晃さん辺りに近いような「熱い魂」が持続していた。
     その点では、円城塔氏の文章はもっとクールで情動をあまり前面に出さないことからカフカに近い感触だ。どことなくボルヘスのような寓話的な雰囲気も感じるが、もっと「意味が無い」。
     各国のホテルを転々としつつテクストを残していく多言語作家・友幸友幸や、虫取り網で着想を捕らえようとするエイブラムス氏、あるいは「何故こうしたのか意図が分からない」構成法、全体が絶対に解き明かし得ない「謎」である点など、さまざまな要素は記号として意味内容=シニフィエを欠くシニフィアンであり、この小説はさまざまなシニフィアンだけが織りなすラカン的な現代芸術である。これは現代詩の言葉が常識的な意味の体系から解き放たれて飛び立つのとおなじ態様であり、近年の現代音楽、現代美術とも同等の領域を示している。
     この「無意味さ」の中でも、一応、テーマは「言語」であるらしいのだが、結局はそのテーマも無意味な遊戯であるかのようだ。
     2012年に芥川賞を受賞した本作は現代芸術の一典型と思える。ただし、この無-意味なシニフィエ世界が、読んで面白く思われるかどうかは、読者次第という感じはする。特定の情動を惹起しないためにその「無味乾燥」に人は惹かれるものを感じないという場合もあろう。カールハインツ・シュトックハウゼンのある種の音楽が強い情動性を拒みつつも、そこに深い味わいを感じるような感性が、読者に要求されているのかもしれない。
     併収されている「松ノ枝の記」は同様に言語をめぐって複雑化された構造を示しており、表題作と似すぎているように感じた。
     どうやら円城塔さんはSF小説のジャンルにも進出しているようで、ディック賞なんかも受賞しているらしい。本書の他にどんなふうにこの作風を展開させているのか、興味を持っている。

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著者プロフィール

1972年北海道生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベー
スボール」で文學界新人賞受賞。『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊
藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞

「2023年 『ねこがたいやきたべちゃった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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