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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784062931021
作品紹介・あらすじ
使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石……。「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている、世界で一番小さなアーケード。それを必要としているのが、たとえたった一人だとしても、その一人がたどり着くまで辛抱強く待ち続ける――。
みんなの感想まとめ
日常の中で忘れられがちな「とるに足らないもの」に対する深い思いが描かれた物語。小さなアーケードには、使用済みの絵葉書や義眼、玩具の楽器など、一見無価値に思える品々が並び、店主たちはそれを必要とする人が...
感想・レビュー・書評
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『アーケード』、それは”建物間を覆う屋根状の構造物”のこと。そして、そんな『アーケード』に覆われた商店街は全国各地に今も点在しています。そんな『アーケード』を想像する時、あなたはそこにどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?様々なお店に、様々な品物が並べられ、その横にはお客さんを迎え入れるお店の人が笑顔で立っている、そしてそんなお店にそれぞれの目的を持って訪れる人たちがいる。そこには、笑顔に溢れる人々の声が今にも聞こえてきそうな、そんなイメージが思い浮かびます。その一方で昨今ニュース報道されるように、様々な理由で寂れてしまい、シャッター街と化してしまった『アーケード』が存在するのも現実です。この世に永遠に存在するものなどないことを考えると、これはやむを得ないことなのかもしれません。
しかし、ここに時代の変化に関係なく、『「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかり』が集まった『アーケード』があります。多くの人々は『そこにアーケードの入口があることさえ気づかず通り過ぎてゆく』というその『アーケード』。この作品は、そんな『アーケード』で生まれ育った『私』と『アーケード』の日常が静かに描かれていく物語です。
『そこは世界で一番小さなアーケードだった。そもそもアーケードと名付けていいのかどうか、迷うほどであった』という『一様に古び』たその場所。『アーケードというより、誰にも気づかれないまま、何かの拍子にできた世界の窪み、と表現した方がいいのかもしれない』というまさにその場所で生まれた『私』。そんな『私が十六歳の時、町の半分が焼ける大火事があり』、『大家だった』父は『近所の映画館』で死んでしまったという苦い記憶。しかし『なぜかアーケードだけは屋根のガラスが割れただけで焼け残った』こともあって『ずっと変わらずそこに暮らしている』という『私』。『突き当たりに中庭があ』り、『飼い犬のベベと一緒に』、『中庭で長い時間を過ごす』という『私』。『お客さんの数はそう多くな』く、『大通りを行き交う人々のほとんどは』、『入口があることさえ気づかず通り過ぎてゆく』というそのアーケードでは、『「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている』こともあって来訪者が少なくても『仕方がなかろうと、店主たちは潔く自覚してい』ます。そんな『ある日、何の前ぶれもなく、誰かがアーチ形の入口に』現れ、『一軒の店の前で立ち止ま』りました。『ねえ、ちょっと。あの棚の一束、見せてもらえる?』とレース屋の店主に頼むその女性は『もう常連になって久しい老女』でした。『老女は昔、映画館の隣にあった劇場で長く衣装係をしていた女性だった』ことで、今も『皆彼女のことを衣装係さんと呼』びます。そんな衣装係さんは、麻紐で十字に縛ってあるその束を見て『他のお客に売ろうとして、私の目の届かないところへ隠したんじゃないだろうね』と『一人で愉快そうに笑』います。『いいえ。そんな…とんでもありません』と慌てて否定するのは『アーケードの中でも最も無口で、気の弱い店主』。『ここまで歩いてきた甲斐があった。これ、全部いただくわ』という衣装係さん。『かなりの量がございますから、ご希望の場所まで配達させていただきましょう。ここのアーケードにはちゃんと、配達専用の者がおります』と説明する店主に微笑む衣装係さん。そして『見事に晴れ渡った』翌日。『生地やボタンやリボンやもちろんレースが詰め込まれた荷物を抱え、衣装係さんの自宅へ向った。べべも一緒だった』というのは配達のアルバイトをしている『私』でした。『表札の隣には「舞台衣装研究所」の看板が掛けてあった』というその家に上がることになった『私』。そして…という物語。『アーケード』で暮らす『私』と『アーケード』を訪れる人々の日常が描かれていきます。
十編の短編が連作短編の形式を取るこの作品。何と言っても『アーケード』の独特な世界観の描写が何よりもの魅力です。『入口はひっそりとして目立たず』、『通路は狭く』、『ほんの数十メートル先はもう行き止まり』という『世界で一番小さなアーケード』。小川さんはその小ささを読者に印象付けるために、さらに『人々のほとんどは、そこにアーケードの入口があることさえ気づかず通り過ぎ』てしまうとまで書きます。アーケードが小さければそこにあるお店が大きいはずがありません。『天井は低く、奥行きは限られ、ショーウインドーは箱庭ほどのスペースしかない』とまで書く小川さん。『箱庭ほどのスペース』で何を売るんだ?とも思いますが、それを『使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石…』と例示していきます。何とも微妙感の漂うマニアックな品物ばかりですが、一方で『それを必要としているのが、たった一人だとしても、その一人がたどり着くまで品物たちは辛抱強く待ち続ける』と小川さんは書きます。そして、さらにこれらが『窪みにはまったまま身動きが取れなくなり、じっと息を殺しているような品物たちばかり』であると表現します。この『窪み』という表現は全編で合計二十箇所に登場しますが、この作品における一つのキーワードとなっています。それは、この『世界で一番小さなアーケード』を象徴的に指す場合もあれば、『Rちゃんの重みが窪みになって残っていた』と亡くなったRちゃんの存在を重ね合わせたり、または『窪みを満たしているのはあくまでも静けさだった』というようにノスタルジックに捉えられたりもしますが、共通して言えるのは、『窪み』というものが喪失感の象徴とされていることです。この『アーケード』で売られているものは一見需要が限られ、そんなもの誰が欲しがるんだというものばかりです。しかし、その一つひとつを見ていくとそこにはひとつの共通点があることに気づきます。例えば『義眼』ですが、それを必要とする人は普通には限られるはずです。しかも『兎』の『義眼』となればなおさらです。それを小川さんは『死んだものの声は全部、目に閉じ込められるのかもしれない』。だから『皆、義眼を買いに来る』というように『兎夫人』に語らせます。また、勲章店では『勲章を買い取ることは、そこに潜むさまざまな記憶も一緒に引き受けるということ』と書く小川さん。これらに共通するのは、何かを失った人々が、色々な思いの詰まったそれら品物を入手することで、自身の喪失感を埋めていく、一方でそれら品物からすれば、入手してくれた人の手により『窪みにはまったまま身動きが取れなくな』った状態から解放されることになる。そんな風にそこを訪れる人にも、そこにあることで身動きが取れなくなっている品物にとっても前に進んでいくための一つの場として機能しているのがこの作品の『アーケード』なのかもしれない。そんな風に思いました。
そして、この作品の主人公であり、最後まで名前が語られない『私』。そんな『私』は、『アーケード』で配達係のアルバイトをしています。『配達する品物が発する小さな音を耳と両手で感じるのが』好きという『私』。これを『生まれて初めての労働で得た、一番の収穫だった』とまで言い切る『私』。十六歳の時に映画館の火事で父親を亡くした『私』は、『アーケード』を離れることなく『アーケード』とともに生きてきました。そんな『アーケード』で売られる品物。上記したとおり、それらは色々な思いの詰まったものの象徴でもあります。そんな品物の側に立ってその気持ちを考えてみる時『自分を必要としてくれる人の元へたどり着けるのが待ち遠しくてならないという、品物たちの喜びの声』を聞く『私』はとても満たされた気持ちになります。『その声が自分の掌の中にあると思うだけで、誇らしい気持ちになれた』という『私』。それは『アーケード』の大家として『アーケード』を守ってきた亡き父の思いにも繋がるものなのだろうとも思います。この世に永遠に存在するものなどありません。それは物であっても命であっても同じことです。それ故に、人はどうしようもないほどの喪失感に苛まれる時があります。そんな時にその『窪み』を埋めたいと願うのは自然な感情の発露だと思います。そして、自らの心の『窪み』を埋めるために『アーケード』という『窪み』を訪れ、そこに嵌まり込んでいるものを拾い上げ、それによって自らの心の『窪み』を埋めていく。そして、そんな『窪み』を埋めるための品物を運ぶ仕事に喜びを見いだす主人公の『私』という図式。乱暴に扱うと壊れてしまいそうな、繊細な感情の世界の物語。『読者の中に物語が入っていった時、言葉の意味を言葉として受け取るのではなく、映像にしていただけると、文字で書かれていないことまで伝えられるのではないかと思います』と語る小川さん。優しく繊細に綴られる品物たちの姿を思い浮かべる時、そこには品物たちに宿る美しい記憶の数々を垣間見ることができたように感じました。
『「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている』という『アーケード』。そこには『いらっしゃいませ』という一言でお客さんをねぎらう人たちが営むお店がありました。『はるかな道のりの果て、ようやく求めるべき品に巡り合えた彼ら』、そして『窪み』の中で彼らの訪れをじっと待っていた品物たちとの出会いの先に、解放感に満たされた人々の笑顔がありました。
「最果てのアーケード」という書名から抱く寂しさの極限の感情が先行するこの作品。乱暴に扱うと壊れてしまいそうなその絶品の表現の数々。その中から浮かび上がる静かな死の世界の前に、優しく、柔らかく、そしてほんのりと温かく燃える炎の揺らぎを感じた、そんな小川さんらしさに包まれた作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この物語は「小さい時の思い出から」と、エッセイ『遠慮深いうたた寝』に書いてあった。
だから、このアーケードでの出来事を語る「私」とは小川洋子さんだ。
小川洋子さんは、岡山市中区森下町で生まれ育ち、11歳に祇園町に引っ越している。
岡山市のどのアーケードの思い出なのだろうと思っていたが、パリのパサージュをイメージしていたそうだ。
日常の「とるにたらないものもの」への想いを綴った、江國香織さんの作品を思い出したが雰囲気は違った。
「最果てアーケード」は、だれがそんなものを必要とするの?という品物を扱っている商店の人々の物語だった。
『ブラフマンの埋葬』でもそうだったが、本書も人の名前が出てこない。
舞台となるお店が違う10篇の物語でできているので、"店主さん"と呼べばどの店の店主さんか分かるのだ。
人物が多人数登場する小説が苦手な私にとってはありがたい。
名前で呼ばれるのは飼い犬の べべ だけだ。
登場人物は、
物語を語る「私」。私の「父」。
レース屋の店主、かつて衣装係だった老女。
百科事典のセールスマン、同級生のRちゃん。
義眼屋の店主、(店主の)婚約者さん、兎夫人。
輪っか屋(ドーナツ屋)さん、元体操選手。
紙店の店主(レース屋の姉)、雑用係のおじいさん。
ドアノブ専門店の店主"ノブさん"。
未亡人の勲章店の店主。
遺髪レース編み師。
軟膏屋さん。
大学の助手。
どんな商品を扱っているお店かは、登場人物の呼び方でわかると思うが、
こんな(商売になりそうもない)お店が連なっているアーケードなどあり得ない風景だ。
だが、昔はアーケードの中のどこかに、似たような雰囲気のお店が紛れ込んでいた記憶がうっすらとある。
その品物が必要で探し求めてくるお客さんと店主さんのこだわりや想いが伝わってきます。
さり気ない動作や心情の描写がうまい小川洋子節が堪能できる物語だと思います。-
2024/07/20
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2024/07/20
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良かったです。
小川洋子さんの作品で今まで読んだ中では「ことり」が1番好きですが、同じ位大切にしたい本になりました。
いつも独特な世界観で中々感想を書くのが難しいのですが、この作品は読みやすく主人公の気持ちに触れ合えるような気持ちになれました。
変わらず不思議な世界です。 -
小川洋子さん初読みです。
静かで不思議な世界観と、小川さんの美しい文章がとても心地よい作品でした。
使用済みの絵葉書や義眼、ドアノブなど、その物から持ち主の思いが感じられ、その思いを大切にしている店主たちのまなざしに心があたたかくなりました。主人公の「私」の存在が少しずつ明らかになり、読み終えると『最果てアーケード』の意味がわかります。
また読み返したくなる作品でした。 -
使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石……。「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている、世界で一番小さなアーケード。
そこは誰にも気づかれないまま、何かの拍子にできた世界の窪みのようなアーケード。
自分を必要としてくれる人に巡りあう事を店主と一緒にずっと待ち続ける商品たち。そんな彼らの元に、愛するものを失った人々が色んな思いを抱えて訪れる。
それを見守る配達係の「私」と犬のべべ。「私」にも色々ありそうで目が離せない。
私も毎日30分だけその不思議な商店街を訪れた。静かで優しくて幸せだけど、迷子になったようにどこか不安で寂しい、どう説明すればいいのかわからないこの世界。起きているのに深い眠りの中にいるような毎日だった。
本当にこの世界はあるのか?「私」のラストをどう捉えればいいの?誰かと語りたいような、自分の心にそっとしまっておきたいような、小川洋子さんの世界には毎回悶々とさせられる。-
杜のうさこさ〜ん、こんばんは(^-^)/
いつもコメントありがとう(*^^*)♪
毎日30分というのは、1章読むのにちょうど3...杜のうさこさ〜ん、こんばんは(^-^)/
いつもコメントありがとう(*^^*)♪
毎日30分というのは、1章読むのにちょうど30分だったのです(笑)
杜のうさこさんなら毎日15分かもしれないね♪
そうそう、小川さんは独特だよね。
なんとも言えない雰囲気にちょっともやもやが残る物語。
アーケードにあるステンドグラスがこの物語の不思議感を増してるからアーケードなのかな。
でも、訪れたと書くなら商店街の方がいいかも。
いつかこの商店街を訪れたらまたお話しましょう(*^^*)♪
うさちゃんの特集見なかった。
残念だなぁ。
最近うさちゃんを飼う人が増えてきて嬉しいんだ!
特集を見た人がうさちゃんの可愛さをわかってくれたらいいなぁ。
私の事思い出してくれてありがとう!2016/03/17 -
けいたんさん、お久しぶりです(^^♪
昨年ブクログで本棚をリニューアルされてから、
すっかり使いにくくなってしまい、遠ざかっていました。...けいたんさん、お久しぶりです(^^♪
昨年ブクログで本棚をリニューアルされてから、
すっかり使いにくくなってしまい、遠ざかっていました。
また(四苦八苦しながら・笑)ゆるゆるとレビューを載せていきますので
よろしくお願いします。
小川洋子さんのこの作品、懐かしいです。
ひとつひとつの編が印象的で、ラストで一気に繋がるのが素晴らしかったですね。
悲しいけれど、美しい。素敵な一冊だと思います。2016/05/30 -
nejidonさんへ♪
お久しぶりですね(^-^)/ コメント嬉しいです♪
ブクログのリニューアルでは、皆さん戸惑われたみたいで...nejidonさんへ♪
お久しぶりですね(^-^)/ コメント嬉しいです♪
ブクログのリニューアルでは、皆さん戸惑われたみたいですよ。
私は元々よくわかっていなくて、間違ったり失礼があったりするかもしれませんがよろしくお願いします。
ブクログでお話できる人が少ないのでnejidonさんがレヴュー再開してくれて本当に嬉しいです♪
月1冊絵本を読むことにしました。
参考にさせてください。
小川洋子さんいいですよね。
悲しいけれど、美しい本当にそうですよね。
不思議な心地よい世界でした。
まだまだ読みたい本がたくさんあります。2016/05/30
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とあるアーケードを軸にした短編集。それぞれの話が絡み合って短編集全体として一つの作品となっている。何かをテーマにした短編集は小川洋子さんのよくあるパターンだが、それぞれの話が関連し合うというのは意外と珍しいかも。こういう個別の話はそれぞれで完結するものの全体として大きな話が流れてる、というのは連続もののTVドラマとかでよくある手法と思うが、1話ずつの長さがちょっと読むのにちょうどいい分量なのもあり、TVドラマを見ているような趣もある。
内容は小川洋子さん特有の現代のファンタジー。レースの切れ端、使われた絵葉書、義眼など、何だか美しくて儚い雰囲気がいい。特に以前読んだ『猫を抱いて象と泳ぐ』の空気感と似たイメージ、好きな人には堪らないと思う。また最後のエピソードもとても素敵。全体の儚さをまとめ上げるような役割で、これがこの作品全体の読後感を決定付けていると思う。
意味だけではなく、文章そのものが生み出す空気感を堪能できる小川洋子さん好きなら必ず満足のいく作品だと思います。 -
レース屋さん、義眼屋さん、輪っか屋さん…
最果てアーケードの店主たちと、そこに訪れるわけありのお客さんたち。
主人公の生まれ育ったアーケードのひっそりとした懐かしい空気にひき込まれ、最終章で涙が出そうになった。
どんなに時が流れても、悲しみを癒すことのできる静かな場所がここにはある。 -
最初は大人のための童話・おとぎ話を読んでいるような気持ちだったけど、
だんだん主人公の輪郭がぼやけていくような不穏な感覚が高まっていく。
外国のようで、昭和の日本のようで
本当に不思議な世界観。
不穏さ、奇妙な売り物。
全部好きです。 -
アーケードの天井にあるステンドガラスを何度も想像して読みました。光が優しく差し込んで照らしているのを想像していると、とても綺麗なのに、照らされているアーケードの下はなんとなくひっそりしているのかなと思わされて、またどんどん小川洋子さんの世界にはまりこんでしまいました。
小川洋子さんの作品はたくさん読みましたが、これもまた哀愁の漂う、ひっそりとした物語でした。
最後のお父さんとのデートのところでは、何かが起こるな、と不穏な感じを漂わせた幸福感のある「私」に少し緊張感を感じながらも、ああやっぱり…と。
人さらいの時計や、遺髪だとか、やっぱりちょっと不気味なワードが多いのに、なんでしょう、小川洋子さんの作品はいつも美しいと思います。 -
不思議なアーケードの片隅で起こる「死」を弔う話。異国の童話のような不思議な世界観だった。「死」を美しく拾い集めた話の数々は、読後に喪失感を感じながらも、どこか心の傷を埋めてくれるような不思議な気持ちになった。ライオンのドアノブの奥の窪みのような場所はどんな人にもあるのだろうか。きっと誰にでもそんな場所はあって、見つけたいような見つけたくないような不思議な場所だと思った。
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アーケード街大家の父親を亡くしたわたしが、お店を訪れるお客様と織り成す小さな物語。
どこかもの悲しい雰囲気のなかに灯る小さな光、お店それぞれの味わいがありました。
小川洋子さんの作品に漂う雰囲気は本当に独特。
穏やかで静謐な世界観。
レース屋、義眼屋、ドアノブ店、勲章店など、
「一体こんなもの、誰が買うの?」
という品を扱う店ばかりが集まってるアーケード。
買いに来る人は少ないけど必要とする人がいて、そんな人のためにお店がある。
お気に入りは、
*衣装係さん
*百貨辞典少女
*紙店シスター
小川さんの作品は、個人的にやっぱり静かな環境でゆったり落ち着いて読みたい。
小川さんの文章表現がとても好き。
やっぱり良いなぁ。
アーケードの突き当たりの中庭で愛犬ベベと過ごす時間が愛おしい。
店主だけじゃなく、配達屋さんの思いも胸に響くものがありました。
小川ワールド堪能しました。 -
この本を読んで「ジャワマメジカ」に興味を持ち
上野動物園に見に行きました。
まっくらやみの中で暮らしていました。 -
アーケードの人は、下世話な噂ばなしはせず、みんなひそかに、お互いを温かく見守る。お父さんと「私」のことも、輪っか屋さんの恋模様も。
「私」ももう亡くなっていて、霊のようにゆらゆらと出てきては思い出を語っているのかな。小さいもの、目立たないもの、死んだものに視線を向ける。このアーケードでは、そういうものが大切にされ、尊重されている。
目立たないけど、役に立つかどうかわからないけど、そのままでいいよ、と言ってもらえるような物語だった。
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これは文庫よね…。わたしが読了したのはハードカバーやけど、ブクログでは探しきれなかった。ブクログの検索下手芸人。
さてこちらも、年末に棚に差してあった背表紙と目が合って借りた。
著者は未読。いつか読みたいと思っていたので、たぶん、アーケードのいろんな店舗がテーマになる連作短編なら読みやすいんじゃないか、と、思った。
…んやけど、著者のファーストタイトルがこれでよかったのか…とは、なった。(悪い意味ではなく)
童話のような世界観で進んでいく。
矛盾も、やるせなさも、包み込むような雰囲気にすれば飲めるでしょ、って感じが、童話のよう。
夢のなさが7割、残りの3割がきれいなもの、て感じ。
取り扱ってる商品がわりとファンタジックなので、そのあたりは切り離して読めてたんやけど、最終章がねえ…。
ねえ…。
最初は「私」がどのくらいの年齢で何をしている子なのかがつかめなかったけど、読み進めていくうちにそこはつかめなくてもええんかもしれんとすら思った。
いや、あかんか。ちゃんと読んだらちゃんとそのあたりも明確に散りばめられているか。
そんなふうに、いろんなものを繋ぎ合わせてひとつの物語になるところが、まさに「アーケード」。
一見まったく関係のないものが隣同士で並んでいる。
その多様性? が、アーケードなのか、商店街なのか、と、思うと、昔にも多様性ってあったよなと思う。
商店街は、わたしが小学生のころは当たり前のように存在してた。
スーパーと商店街が混在してたかな。
中学生になるころにはもう、スーパーマーケットのほうが主流になりつつあった。
タイトルは「最果て」って言うてるけど、「最果て」なんてない。物事に終わりなんてないんやなと思ってしまうわたしはどうも、ロマンがすぎる。
ある大雪の日に読了した。とてもよかった。
著者の本のおすすめを聞きたい。 -
ものがなしい。
小川洋子の扱うモチーフらしく、義眼・勲章・レース・遺髪・ドアノブ……。
これらが語ってくれる物語を予想するだけでも、ドキドキする。アーケードを舞台にした連作短編集。
中でもお気に入りは、「百科事典少女」と「輪っか屋」、「ノブさん」かな。
ライオンが守るドアノブの向こうの、密やかな窪み。
すっぽりと包み込む心地良い闇に、泣き疲れて眠ってしまう情景がとても良い。
うそのおはなしより、ほんとのおはなしが好きなRちゃんが出てくる百科事典少女も、上手く言葉では言えないのだけど百科事典のリアリティーに没頭する女の子という光景がチグハグで好きなのだ。
けれど、連作短編集であるこの一冊は単なるモチーフ語りでは終わらない凄みがある。
「最果て」を冠する、光と闇、生と死のあやふやが全編を通して側に迫ってくるのである。
物語を行ったり来たりしながら、彼女の歩んだ時間軸を追い直してしまう。ものがなしい、けれど楽しみ方の豊富な一冊。 -
誰にも見つけられることがない自分だけの秘めた約束.それらの想いに寄り添い丁寧に紡いでいる.決して汚されてはいけない,そんな宝物のような作品でした.
以下あらすじ(背表紙より)
使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石…。「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている、世界で一番小さなアーケード。それを必要としているのが、たとえたった一人だとしても、その一人がたどり着くまで辛抱強く待ち続ける―。
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