- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062931168
作品紹介・あらすじ
あの頃、すべての日本人は銀幕の中に恋人を探していた。「銀幕の花嫁」と呼ばれた女優、千鶴。彼女が生き抜いた時代は、力強かった。
感想・レビュー・書評
-
図書館でタイトル借りした一冊。
木下千鶴という一人の女優の一生。
かなり壮絶な人生なのだけれど、性格がサッパリしており、また書かれ方も同様に痛さを感じさせないと言うか、あっさりとしているので余りドロドロした感じは受けず。
昭和の銀幕のスターたちも千鶴に負けず劣らず、壮絶な道を歩んだ人が多かったのだろうな、と想像しながら読み進めていました。
昔、父がよく観ていたテレビ『いつも波乱万丈』を
思い出し、何だか懐かしい気持ちになりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まさに「木守り」のような人生をおくった千鶴。冬枯れの木にひとつ残された柿の実は、ひとり息子のようでもあり、自分自身のようでもある。そして愛憎乱れ最後に残った鈴子。最後の実がもたらす日々の生活への影響、人生のベクトルを見届ける。これも自分自身なんだな。
-
昭和を生きたある女優の生涯を描いた作品。全体的に暗く、ほとんど救いがない。表面上は華やかな女優の内情、たかってくるが切り捨てられない家族、通りすぎて行く男たち。なんだか似たような話を読んだことがある気がする。
-
激動の昭和初期に「銀幕の花嫁」と呼ばれた、女優・木下千鶴の愛と憎しみの一代記。
懐かしの昼メロドラマのような設定。女優として成功を修めながら、家族の幸せを味わうことはなかった千鶴。その影にはいつも異母妹・鈴子の姿があった。一方、身体を病んだ鈴子の視点は一切描写されないものの、千鶴以上の愛憎を感じる。持つ者と持たざる者、そして持ったからといって幸せとは限らない人生の不可思議さ。表面だけでは分からない奥の深い作品である。 -
『銀幕の花嫁』と呼ばれた昭和初期を代表する女優・木下千鶴。その清純な見た目と役柄から結婚したい女優として、戦火においては戦女神として名を馳せた名女優でもある。しかし彼女の生き様は銀幕の中では想像も出来ない程に鮮烈だった。
血の繋がりがこんなにも浅ましくうっとおしく、負担でしかない関係性で、振り払おうと思えばいつでも振り払えるのに、千鶴は我が身を削っても面倒を見続ける。何故だろう? 大切にされたことも無いし、どちらかと言えば疎まれて育った少女時代だ。
核となるもう1人の女性・鈴子。美しく気高い異母姉妹だけが千鶴の支えだと思っていた、あの日までは。たった5年間、僅かな時間を共にした事実だけで人は一生を相手(とその一族)を援助出来るものなのだろうか。
幼き頃の華やかさを丸切り千鶴に譲り渡したかのように舞台から降りた鈴子。その存在は光と影。千鶴が輝けば輝くほどに鈴子の影は濃く重く塗り込められていくようだ。
彼女たちはその後1度も交わることはない。いや交わる必要はないのだ、その魂は双子のようにいつまでも結びついている。 -
「愛憎」って、紙一重というよりほぼ同義なんだろう、とそう思う。
芸者の子として産まれた少女が女優としてのし上がり、腹違いの兄妹たちとの複雑な感情に絡み取られつつ駆け抜けた生涯。たった5年、同じ家で過ごしただけの兄妹たちになぜここまで搾取され続けなければならないのか。ひどすぎる。ひどすぎるよね。でも切ろうと思えば切れるその関係をもしかすると、そんな関係であったからこそ千鶴は必要としていたのだろうか。
昭和の時代の「映画」という世界。華やかで広いその世界と、千鶴が抜け出せない狭い「家族」という世界。二つの世界がぐるぐると渦巻いて一人の女を翻弄する。愛と憎の渦の中で千鶴が本当に求めていたのはいったい誰の手だったのだろう。
そして最低の、ひどい女として描かれる鈴子が最後まで求め続けたのは千鶴そのものだったのかも。 -
激動の昭和初期、「銀幕の花嫁」と呼ばれる女優・木下千鶴は、清楚な外見とは裏腹に勃興期の映画業界で成功を収めていく。だが彼女には、少女時代に別れて以来、一度も会うことのない美しい異母妹がいた。大スタアの生涯から消えることのない十歳から十五歳のたった五年間の記憶とは。『流転の薔薇』改題。