欺きの家(下) (講談社文庫)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062931557

作品紹介・あらすじ

一八歳の夏、地元企業でアルバイトをするケラウェイは創業家の姉弟と出会う。多くの謎を残して死んだ弟、美しい姉との運命の恋。その後も一族では不審な死が重なり、企業は拡大していく。裏切り者は誰なのか? 結末まで全貌が見えない洗練のプロット、豊かな含蓄がちりばめられたセリフ。ミステリ読みのための快作。

感想・レビュー・書評

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  • 中断不可能の一気読み。ゴダード久々の大ヒットかな? ブラボーです。

    歴史上の謎や国際的謀略といったゴダードお馴染みのテーマからはちょっと外れてるけど、とある一族の40年間を、丁寧に紡いでじっくりと読ませる。主人公が、心に重くのしかかる過去を振り返るといったよくあるストーリーなのだが、深まる謎と旅情タッチの対比が抜群で、一気に作中に引き込まれる。

    前半の、創業家の姉弟との出会いから不審死までのストーリーが秀逸。際立つキャラクターに加え、奇妙な友情と微妙な恋愛から目が離せなかった。ジェフリー・アーチャーを連想させる展開ではあるが、アーチャーよりも感情のデリケートな部分を刺激してくるのだわ。恋愛は全体を通して描かれる。ここまで追って描くラブ・ストーリーも久々で、サスペンスを盛り上げる重要な要素となっている。

    謎解き目線で見るとイマイチかな。でもここまで辿りつくまでの紆余曲折のストーリーに堪能してるから、予想通りの真相でもノー・プロブレム。むしろ、鮮やかなラストに全盛期のゴダードを見たような気がして、じわじわと嬉しくなった。

  •  定年退職を控えていたジョナサンは、社史編集のための記録探しを命じられる。

     その会社の創業一族には不審な死者が多い。
     記録探しは、ジョナサンの回想につながり、それは事件の真相へつながっていく。
     とはいえ、派手な推理なんかはありません。
     丁寧に、一族の出会いとつながりと何があったのかが語られるだけ。なのに、この重さ。ジョナサンが、感傷的じゃないからこそ、過去の輝きがまぶしい。そして、過去が輝いているからこそ、今の零落が切ない。
     老いたジョナサンに現状を変える力はない。

     切ない。
     何もかもが切ない話だった。

  • なんだか”普通”だった。

    なんだか軽く感じる。

    過去と現在を、緻密にそして重層的に積み上げていく初期のゴダード作品の重さに比べたら、なんだか軽い。

  • ネタバレを書くので、これから読もうと考えている方はこの先を読まないでください。
    ゴダードの作品はほぼ読んでいると思っていたが、ここ数年の作品は気が付いていなかった。練られたプロットが売りの作家の割りには多作だ。
    本作は本格ミステリーといってよい作りになっており、初期の作品のような重層さはないけれども、さすがにプロット名手だけあって謎が謎を呼ぶ展開は読ませる。
    ただ、フーダニット型のミステリーとして読むと、非常にがっかりする結末だ。勿論ミステリーの形式が途中で提示される訳ではないのだけれど、本作はあホワイダニット型として読むのが正解だと思う。それにしても、「蒼穹のかなたへ」を超える作品はもう出ないのだろうか。

  • これぞゴダード、今作もうなるほど巧い。ケラウェイは、自身の過去に向きあい、犯した多くの過失と判断ミスを痛感することになる。信念はたやすく経験によって覆され、ありそうもないことが決して起こりえないものではないことを思いしる。彼の人生は、紛れもなくこうした過去によって形作られていた。しかしだからといって過去に生きることはしていない。未来というものが過去になってからしか見えないものなら、「後悔などしてなんになる? きみにはまだわからないだろうが、人生は後悔するには短すぎる。これはほんとうだ。あまりに短すぎる」

  • 引っ張った割にはオチはなかったのが・・・

  • 久しぶりにゴダード節を満喫した。物語は、主人公の視点から、丹念にフェアに語られる。過去と現在を行き来する書き方だが、流れるような進行で違和感がない。練達の筆だなあと思う。謎に導かれて、イギリスの片田舎から喧噪のナポリ、陽光きらめくカプリ島へと舞台は巡る。読み出したらやめられない。

    だがしかし。ラストの「真相」がもう一つすっきりしないんだよね。ミステリとしての出来はそんなに良くないのでは。

  • 下巻。
    派手さは無いが余韻のあるラスト。ゴダード作品のラストシーンの中でもかなり好きな方だった。
    この後、主人公はどうしたのだろう?

  • 粛々と進行、ほろ苦い感じ。
    平易やしさくっとは読める。

  • 一八歳の夏、地元企業でアルバイトをするケラウェイは創業家の姉弟と出会う。多くの謎を残して死んだ弟、美しい姉との運命の恋。その後も一族で不審な死が重なり、企業は拡大していく。裏切り者は誰なのか? 結末まで全貌が見えない洗練のプロット、含蓄がちりばめられたセリフ。ミステリ読みのための快作。

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著者プロフィール

1954年英国ハンプシャー生まれ。ケンブリッジ大学で歴史を学ぶ。公務員生活を経て、’86年のデビュー作『千尋の闇』が絶賛され、以後、作品を次々と世に問うベストセラー作家に。『隠し絵の囚人』(講談社文庫)でMWA賞ペーパーバック部門最優秀賞を受賞。他の著作に、『還らざる日々』『血の裁き』『欺きの家』(すべて講談社文庫)など。

「2017年 『宿命の地(下) 1919年三部作 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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