天翔る (講談社文庫)

  • 講談社 (2015年8月12日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784062931779

作品紹介・あらすじ

札幌に住む看護婦の貴子は、学校に行けなくなった11歳の少女、まりもと知り合う。自分が通う牧場(ランチ)にまりもを誘うが、そこで待っていたのは、風変わりな牧場主と、エンデュランスという乗馬耐久競技だった。馬をいたわりながら、野山にめぐらされたルートをたどり、長距離を翔けぬける。競技に魅せられた者たちだけが見ることのできる世界とは? それぞれに喪失感を抱えた男女たちが生きることに向き合っていく感動作。

みんなの感想まとめ

心の痛みを抱えた人々が、馬を通じて再生の道を見つける感動的な物語です。物語は、看護婦の貴子と11歳の少女まりもが出会い、エンデュランスという長距離乗馬競技に挑む過程を描いています。静かな風景の中に潜む...

感想・レビュー・書評

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  • 村山由佳さん『天翔る』読了。

    静かな熱を内側に抱えた物語。

    表面は静か。でも、その奥には揺るがない意志がある。

    村山由佳さんの描写力に、何度も自然と涙がこぼれた。とくに、11歳の少女まりもが父の死を受け止めるあの瞬間には胸が締めつけられた。

    馬と出会い、馬に魅せられ、少女が出場することとなったエンデュランスは「馬のマラソン」とも言われる競技で、トップレベルの競技会では160kmにも及ぶ長距離を24時間以内に走る。

    主人公のまりもの再生の物語のようで、それだけではなく、ここに登場する人たちがそれぞれが心に痛みを抱えながら、互いに響き合い、共鳴しあい、前に進んでいく…そんな物語。

    血縁や種を越えて結ばれていく、信頼と絆。

    私自身が幼少期を過ごした懐かしい北海道と、その言葉が舞台の作品。目に浮かぶのは、実家からそれほど遠くはなかった社台。馬たちが広い大地に放牧されている光景。

    それぞれが互いに響き合いながら前に進んでいく姿が、静かに胸に残る物語だった。

    (2026.3.5読了)

  • 長年積読になっていたけど、GWに読むぞと決めていた本。村上由佳さんの文章は先へ先へと引っ張られる感覚があり、するすると読めてしまう。
    のどかな風景がベースにありながら、要所で気持ちが大きく揺さぶられる物語だった。

  • 人と馬の成長の物語。登場人物のそれぞれが過去に闇を抱えてて、少しずつ乗り越えて行ってる様が競技を通して描かれてて、読み応えがあった。ただもう少し貴子の過去が深掘りされてたらなお良かったかな…

  • 村山由佳さんは初読。なんとなく濃密な恋愛小説のイメージが強い小説家さんでしたが、それがいい意味で裏切られる爽やかな成長物語でした。人と人とのかかわり、馬とのふれあい、そして競技にかける情熱を織り込み、登場人物の成長と再生を描いた作品です。

    いじめと父の死で不登校になってしまった少女のまりも。ひょんなことからまりもと知り合った男性恐怖症気味の貴子は、まりもを自分が通う乗馬のできる牧場につれていく。
    牧場主はアルコールにはまった結果、妻と離婚し子どもの親権も失った志渡。
    それぞれに喪失やトラウマを抱えた三人。彼らがときに厳しく、そして優しく支え合っていく姿がまず好印象。

    そして馬にも慣れ三人の信頼関係も深まっていく中で後半転機が訪れます。風変わりな芸能プロダクションの社長に誘われ、まりもが騎手となりエンデュランスとよばれる耐久レースに、三人で挑むことに。

    エンデュランスというのはレースであるものの、馬の体調や疲労具合も審査されます。過酷な道のりをいかに馬を気遣いながら、心を合わせて走るかも重要なポイント。そこに志渡と過去に遺恨ある相手も現れ波乱含みの展開に。

    臨場感のあるレースシーンに、登場人物たちのそれぞれの思いやドラマも相まって物語は佳境を迎えていき……

    まりもの成長が爽やかでよかったのはもちろんのこと、大人たちの物語にも要所要所でスポットをあて、それぞれの再生を描いていくのも非常によかった。著者の村山さんの優しい視点が物語全体に感じられます。

    そしてエンデュランスという競技の魅力も伝わってきます。競技のシーンやまりもと馬の信頼関係もさることながら、エンデュランスに掛ける芸能プロダクションの社長の思いも熱く、それがまた物語に盛り上げる。

    ラストシーンもとてもよかった。冒頭のまりもと父親のシーンと結び付き、落ち着くところに落ち着きます。とにかく読後感のいい一冊でした。

  • 心が疲れた時読みたいと思える本でした。
    心が暖かくなります。
    辛いことを乗り越えるのはどんなに周りに良くしてもらっても、最終的に自分しかいないんだなと痛感。
    何も抱えてない人はいない。大なり小なり人生には全て付きまとうからね。
    エンデュランスという競技も初めて知りました。
    本当に馬の競技は多岐に渡るんだなぁと…。
    動物も大好きなので、手元に置いて折に触れまた読み返したいです。

  • 感動的なラストが2回もあってお腹いっぱい。傷ついた人が他の人との関わり合いの中で成長していく姿をうまく描写できていると感じました。
    そしてエンデュランスという競技の中で、チームで戦い抜く素晴らしさも感じることができました。

  • 私は競馬ファンであり、馬術はそれほど興味はないですが、
    馬は好きです。
    ある意味ジャケ買いの小説でしたが、良かったです。

    登場人物それぞれのお話も無理矢理感がなく、
    いい味付けとキャラ付けになったかと思います。

  • 村山さんの作品は厳しさと優しさのバランスが絶妙、
    弱っている時には優しく包まれるような感覚もあり、それでも自ら切り開いて生きなくてはいけないと背中を押されるようなきもちにもなる。
    だから、読後感が心地よい。

  • 競走の俊足とは違う耐久の力強さと、まりもの素直さが光る。喪失と思春期と二つの不安定要素を内包しつつも、芯の強さを存分に発揮して頑張る姿が頼もしくもある。駅伝やマラソン好きな日本人になら、もしかしてエンデュランスは結構受け入れられるのではないか。大会の下地を作るのは大変だろうけど。

  • 息子の学校の入試問題に出題された本を読め始めたのだが、なかなか考えさせられる本が多い。
    必ずと言っていいほど、いじめや親が亡くなってしまうという内容が描かれることには、閉口してしまう。しかしながら、その後の主人公の成長には感動する。
    今回は、やせ我慢、武士は食わねど高楊枝についての言葉が印象に残った。
    誰だって、四六時中、理想の自分でいることなんかできやしない。かっこ悪くて情けない自分がいるのをわかっていながら、せめて周りの人間にはそれを見せまいとして歯を食いしばる意地みたいなものが、俺はけっこう大事だと思うんだな。

    また、村山由佳さんの作品を読みたい。

  • 我が愛馬イリデッセンス号の待望のデビュー戦が終わった。結果は4着であったが、レースっぷりは悪くなかったと思う。勝ち上がる日を夢見て、また次走へ思いを馳せる。
    しかし、馬はいいねぇ~。私は動物は好きではないのだけど、馬だけは別。馬が走ることを思うと色んなことを忘れるよ。

    さて、この本、それぞれに心にぽっかり空いた穴を持ち、馬に携わることでしかそれを埋められない3人-乗馬牧場を経営する志渡、看護師の傍ら牧場を手伝う貴子、父親を亡くしイジメによって不登校になってしまったまりも-の物語。
    冒頭描かれる札幌競馬場での出来事を経て、3人が出会ってからの牧場の場面からして良いな。北海道の碧い空と海、風の音、草の匂い、その中で弾む蹄の音。出産や馴致や牧場経営の実情の話も織り交ぜながら、馬との世界の楽しさが語られる。
    その3人が“エンデュランス”という馬術競技の世界を知ることとなり、物語の後半、その世界最高峰のレース、テヴィズ・カップ・ライドを目指すところが描かれる。
    馬のことは好きだけど、エンデュランスのことは知らなかった。
    ウィキペディアによれば『一般的に数十キロメートルの長距離を数時間かけて騎乗し、その走破タイムを競う競技である。耐久競技のため、一定の区間毎に獣医師が健康診断を行い、獣医師の判断により競技の続行を決定する。そのため、騎手は常に騎乗馬の状態に気を配る必要がある』という競技は、速さの遺伝子を淘汰する競馬とはまた別の意味で、馬本位の競技であることが分かる。
    終盤、厳しいレースの様が描かれ、これを完走するために多くの人々がひとつになる。馬に乗る者、横に添う者、ゴールで待つ者、これまでのしがらみを捨て、悩みを置き去り、それぞれの思いが静かに滾り平らかになる。
    牧場で疾走する漆黒の馬の姿で締めたエピローグがグッと来た。

  • 不登校の少女が乗馬に出会い、伸び伸びと成長していく物語。面白かった。最初は単に乗馬だったけど後半はエンデュランス・ライドという過酷な長距離耐久乗馬レースの挑戦の話となる。24時間で100マイル(160km)の山々を走るという、もうまじでよく分からない過酷だけど夢のような世界最高峰のレースへ。
    話の中には心情的に辛いシーンがまあまああったけど、才能を見込まれて生き生きと馬に乗る様子が読みやすく序盤から夢中になって読み進めた。とても面白かった。

  • 惹句から、馬の話かぁと読んでなかった村山由佳作品。読み始めたら一気。ぐいぐい読まされた。

  • エンデュランス競技を通じた、まりも、貴子、志渡の三人の成長物語。漆原(モデルは蓮見清一氏)が完璧超人すぎるのと、なんか恋愛パートが貴子のトラウマとややミスマッチな気がするけれど、全体としては素晴らしい。
    この本は飛行時間10時間の飛行機の中で読んだのだが、これ以上の時間を馬の上で過ごしているというのがなんとも過酷。この競技のスタートラインに立てる人馬は本当に凄い。エンデュランスに興味がわきます。

  • エンデュランスという、見たことも聞いたこともない乗馬の競技の話で、興味深かったです。
    心の傷を抱え、乗り越えていこうと、もがいている。そんなお話なのかなと思いました。
    自分の限界を超える経験というのは、そうそう出来るものではないと思いますが、経験したからこそ見える景色があることは、納得できますね。
    どんなことも経験することを恐れないことが、人生を豊かにするのでしょうか。

  • 天翔ける 20220623

  • お馬さんシリーズ第3弾は、村山由佳先生の作品。

    今回は馬とともに160㎞を24時間以内に完走する長距離耐久レースが舞台。それだけに馬も人も忍耐と信頼関係が必要

    こういうレースの存在を初めて知りました

    まりも、貴子、志渡、漆原の素晴らしい人間関係と馬への深い愛情に感激

    とても良かった(*^^*)

  • エンデュランスという人と馬が一体となりゴールを目指す耐久レースに挑戦する少女とその支援者?の人達の物語。
    主人公もさることながら、周辺の登場人物の辛すぎる過去。
    それを乗り越えて挑むエンデュランス。
    よい話程度で終わると思ったが、最後が素晴らしい結末だった。亡き父親との思い出の馬との再会。このラストは素晴らしい。

  • 不登校で両親との縁が薄いけど、周りの大人達から愛情をたくさんもらって成長していくまりもちゃんの将来を、もっと知りたい。続編希望です。

  • 個人的にこの本がお気に入りで、本嫌いな私がはじめて3日未満で夢中で読めた本であり、本好きになった一冊でもあります。そして、自分自身が乗馬をしている事もあり、とても共感できたり、新しいことを学べたりと興味深かったです。

    物語としては、あらすじにも書いてある通り、エンデュランスと主人公「まりも」を主体としたお話ですが、その中でも、それぞれの登場人物の成長する姿はとても面白く、自分も頑張らないとな。と元気と喝が入る一冊だと感じました。

    また、一番の山場のシーンでは、鮮明に情景が浮かび上がり、胸も高鳴りますし、今すぐにでも自然に触れたくなります。

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著者プロフィール

村山由佳
1964年東京都生まれ。立教大学卒業。93年『天使の卵——エンジェルス・エッグ』で「小説すばる新人賞」を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で「直木賞」を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』では、「中央公論文芸賞」「島清恋愛文学賞」「柴田錬三郎賞」をトリプル受賞を果たす。Twitter公式アカウント @yukamurayama710

「2022年 『ロマンチック・ポルノグラフィー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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