匣の中の失楽 新装版 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (832ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062932790

作品紹介・あらすじ

推理小説マニアの大学生・曳間が、密室で殺害された。しかも仲間が書いている小説の予言通りに。現実と虚構の狭間に出現する5つの《さかさまの密室》とは? '78年、弱冠22歳の青年によって書かれたこの処女作は「新本格の原点」、「第4の奇書」と呼ばれる伝説の書となった。いまだ色褪せない未体験の読書を今こそ! 幻のサイドストーリー『匳(こばこ)の中の失楽』も収録!

感想・レビュー・書評

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  • 第4の奇書と呼ばれる本作。
    いつものように内容を全く知らずに読み始めました。
    解説には「ミステリーとアンチミステリーを両方兼ね備える作品」とあります。

    真剣に推理を巡らせながら犯人を当てよう!と意気込んで読むのではなく、どちらかと言うと、謎を疑問に思いながら頭の中に記憶しておき、流れに身を任せ騙されながら読んだ方が楽しめる作品です。

    ドグラマグラ・黒死館殺人事件・虚無への供物の三大奇書の中で、特に『虚無への供物』への愛が強い作品だと感じます。
    オマージュ作品なのかな。

    推理の中で哲学的な引用が多く組み込まれているのですが、精神世界(あるいは夢)の場面ではドグラマグラを連想させますし、羽仁の家は館と呼ばれてもおかしくない豪邸であり、黒死館殺人事件を連想させます。
    溜まり場の『黄色い部屋』には、夥しい数の人形が飾られており、黒死館のテレーズ人形を彷彿とさせます。
    住む土地の名称に色が使われていたり、登場人物達が次々と推理を披露していく展開は、まさに虚無への供物を読んでいる時の感覚が思い出されます。

    この作品ならではの魅力はどこなのかと考えると、巧みな言葉のトリックと「さかさま」の密室。それともう一つあるのですが知らない方が楽しめるので、書くのやめときます^ ^

    呪術や密教の図や重力方程式、物理の二重スリット実験、エクゴニンの構造式など、とにかく推理の中に蘊蓄が沢山出てきて、読んでる方はもう大混乱で、それが狙いか!と、けむに巻かれないよう必死に追いかけます。
    あ、メモ必須です。

    一冊の本でたくさんの本を読んだような感覚。
    ここまで細かく多方面に推理を巡らせる本は初めてです。
    作者の知識の豊富さに感動します。
    勿体ぶらず、中途半端でも惜しげなく推理を披露するので、脳内は大混乱ですがw

    次は「第5の寄書」と呼ばれる
    山口雅也『奇遇』を読みたい(ღ♡‿♡ღ)
    『生きる屍の死』が私の中で5本の指に入る程大好きなミステリーで、かなり面白かったので期待してしまう♡

  • 面白い、面白くないという次元でなく、一体どういう事?と頭がこんがらがる。この世界の実態を掴もうとする事自体、間違ってるのかも。
    なかなか印象に残る作品。

  • どっちが現実でどっちが虚構なのか。
    現実と劇中劇がぱたぱたと入れ替わる複雑な構造だけど、ちゃんと「今、どちらなのか。どちらの事件の話をしているのか」を明確にしてくれる文章だから余計な混乱しなくて意外とノンストレス。
    最終的に「現実」とされたサイドは本当に現実なのか。実は書かれてないだけで「……という結末にしてみたんだけどどうかな」と語り出す「真・現実パート」があるんじゃないか……みたいな不思議な読後感でした。

  • 再読。最初に読んだのは高校生の頃だったのでそれはもうこの小説に酔っていた。数学、物理、量子論、虚数、トポロジーに、心理学、精神病理学、占術、魔術などなどなどのめくるめく展覧会。この小説を読むだけでこの世界というものの一端を知った気になれた学生時代。乾くるみさんが解説というか「蛇足のようなもの」で書かれていたとおり、この作品は高校生ぐらいの頃に読むのが一番楽しい読書体験となるだろう。

  • 実際に読んだのは双葉文庫の2002年のもの。綾辻との対談やら当時の有識者の論評、作者による手書きの構想メモもおまけについていた分厚い一冊だったが、同じものがブクログに見当たらないので、代わりにこちらで登録しておく。


    ※以下は、小野不由美のゴーストハントシリーズの重大なネタバレ示唆を含みます。ゴーストハント7巻の最後の最後までまだ読んでないよーという方は読まないでください!

    ゴーストハントシリーズを久々に読み終えた私が読本を読み、法月の解説で、ゴーストハントの主人公ナルのモデルが出てくるよ、と話していたのが本書。
    さっそく借りてみたところ、分厚い分厚い一冊で白目になった。
    とりあえず読んでみる。
    タイトルが最近読んだ山田風太郎「棺の中の悦楽」じゃん、と思ったら本当にそうらしい。でも中身は全然違った。

    なんといっても登場人物が多く、個性のないキャラはほとんど出番もなく笑、それらを把握するのに疲れた上に、どこまでが物語なのか、劇中小説なのか、わからず、ええー?と混乱しながら読んだ。
    結局誰が生きてるのか死んでいるのか、誰が犯人なのか、はそれなりに説明があって、でも明かされない謎もあり、そのまま突然終わる。
    まあ推理モノとはいえ、個々の事件の解決がメインではなく、全体の構造の仕掛けが面白さの肝だという話だからなあ。

    これを当時21歳の若者が書いたと言うことで。
    衒学的シーンも多々あるけどそこは斜め読みでも大丈夫。
    本書は三大奇書+αの一冊にカウントされることもあるらしい。
    家畜人ヤプーとかいうやつ?と思ったら、日本版らしい。いわくドグラマグラ、小栗虫太郎の黒死館殺人事件、虚無への供物、だそう。どれも読んだことないけど、小栗らの時代の新青年やら宝石の作家は好きなので、まあ読めないことはないかもしれない。←その雑誌周辺で活躍した非ミステリ系の作家(久生十蘭、小沼丹)が好きです。

    キャラクターのメモ
    曳間了(ひくま りょう)…主人公?
    彼の説明文「F大学。心理学専攻。金沢生まれ。『黒魔術師』」ってカッコよすぎんか。
    根戸…2番目に名前が出る割に活躍しない。
    真沼…謎すぎる。彼がどうなったのかが一番謎。
    影山…非実在を疑われてたが、喋ると明るい学者バカでなんか和む。
    甲斐…裏主人公。曳間と同郷。
    倉野…第一発見者。いい人そう。神戸生まれ。デザートブーツってなんだ。砂漠を歩くのか。当時そんなにみんな履いてたのか。
    雛子…15才アイドル。頭もなかなかきれる。周りの大学生、みんなロリコンなのか?
    杏子…15歳男子をひんむくのは止めよう。
    羽仁…金持ち以外の設定がほぼない。
    布瀬…くせつよ。一人称我輩はやめんか。仏文科が白い目で見られるだろうが。幼馴染の雛子にしてみたら、昔の憧れのお兄ちゃん王子様が我輩、ホホウを連発する口のへらない屁理屈野郎になってたんですごくショックだろうよ。
    片城成、蘭…あーー、ゴーストハントのナルは××という設定が突然出るのはこれがモデルだったのかと納得。性格はむしろ曳間くんに似ていると言うがたしかにそう。こちらのナルたちは天真爛漫でかわいいけど小賢しいみたいな双子。むしろ、佐野菜美さんのミギとダリじゃね。

    金沢にも神戸にも住んでいた私には、一部の登場人物にやや思いを入れて読みました。
    70年代の大学生ってこんな生活してたんだなあ。
    理屈っぽ学生が推理合戦しているの、なんか可愛い気がするんだけど、友人が死んでもケロッとしてるの凄いね。
    この仲間内をファミリーと呼んでいるんだけど、決して、みんな仲良しというかんじでもないな。

    最後の構想メモにあった「萩野千尋」という、使われなかった名前に見覚えあるなと思ったら、千と千尋じゃー。これは杏子の一部になったと思われる。
    構想メモに書かれた作者によるイラスト、上手だなあ。少女漫画好きと言われてたけど、これは24年組が好きだっただろうな。

    それにしても、戦前の日本ミステリ全盛期の「新青年」やら宝石やらの影響→戦後ミステリは戦争のあとの暗くておどろおどろしい何でもありの山風、乱歩、横溝→その影響もありつつ超常ムードに回帰した70年代ミステリ→の最後の花火だった雑誌幻影城(栗本薫、匣の中の失楽、銀英伝も最初はここから)→の影響を受けた京大ミステリ研から始まる新本格ブーム→その数年後、なんの繋がりもないところから同時に出てきた二大巨頭の京極夏彦と森博嗣。というかんじだろうか。

    以上、
    いっぱい書いて疲れました。

    あ、最後に推理小説ブームについて私がまとめた文には、いろいろな間違いがあると思います。有識者でなくてすみません。

  • いやー、奇書。奇書だ奇書だとは聞いていたが、やっぱり奇書だった。22歳の青年がこれを書いたって?うそでしょー!?

    さしずめ現代に蘇る黒死館殺人事件ってとこか。全編を通じて醸し出されるペダンティックで奇妙な空気は、僕のようなある種の人間を熱狂させる。
    次から次へと姿を見せる謎、そして謎解き→その謎解きの否定といった推理小説の王道の繰り返し。もう、心躍らないわけがないって感じ。

    ただ惜しむらくは、最後がしりすぼみだったこと。
    結局、回収されていない謎がむちゃくちゃ多くないか?
    なんかこう「ああ、惜しい。あと1ミリだったのに」感が漂うなあ。

    ま、という欠点を補ってあまりある結論までの流れなので、星5つ。しつこいが奇書だ。

  • 前に双葉文庫版を読んでいるから、一応再読に入るのかしら?やはり凄い作品だ!一体どちらが現実で、どちらが作中作なのか全くワカラナイ…この終わり方では彼ら自体もしかしたら存在などしていなかったのでは?・・と、思ったり思わなかったり。とにかく頭の中がパニックになること必須。これを機にたくさんの人に読まれますように。ちと高いけどw

  • 日本における第四の奇書と言われているこの小説は、1978年に発売された著者のデビュー作です。
    約800ページと、かなりの長編です。
    専門的な話が出てきますが、基本的にはテンポよく読めました。
    どんでん返しの要素もあり、本格ミステリでしたが、奇書と言われるだけのことはありました。

  • 推理小説マニアの大学生・曳間が、密室で殺害された。しかも仲間が書いている小説の予言通りに。現実と虚構の狭間に出現する5つの《さかさまの密室》とは? '78年、弱冠22歳の青年によって書かれたこの処女作は「新本格の原点」、「第4の奇書」と呼ばれる伝説の書となった。いまだ色褪せない未体験の読書を今こそ!

    これは、実験小説です。作者の構想通りに登場人物をうまく動かせられるかどうかがこの作品の成否のカギです。双葉文庫版には、100ページ以上の解説(綾辻行人との対談や作者の実物創作ノートも含む)が収録されていますが、その中でも、松山俊太郎、新保博久、千街晶之は必読です。読後のもやもやした気持ちを整理できる一助となるでしょう。それほど、難解な作品です。

    竹本 健治(1954年9月17日 -)は、日本の小説家・推理作家・SF作家、漫画家。兵庫県相生市生まれ。佐賀県武雄市在住。東洋大学文学部哲学科中退。代表作『ウロボロスの偽書』『ウロボロスの基礎論』『ウロボロスの純正音律』は、著者自身、綾辻行人、小野不由美、島田荘司などの実在の人物が架空の推理小説の中に登場するポストモダン的なメタ小説。
    経歴:
    1973年 - 私立淳心学院高等学校卒業。
    1977年 - デビュー作『匣の中の失楽』を探偵小説専門誌『幻影城』に連載。
    1977年 - 東洋大学文学部哲学科中退。
    1979年 - 『匣の中の失楽』で第32回日本推理作家協会賞(長編部門)候補作に選ばれる。
    2016年 - 『涙香迷宮』で「このミステリーがすごい!」2017年国内編第1位に選ばれる。
    2017年 - 『涙香迷宮』で第17回本格ミステリ大賞を受賞。
    作品:
    『虚無への供物』の中井英夫に推薦を受け、探偵小説専門誌『幻影城』にいきなり長編連載という破格のデビューを飾り、そのデビュー作『匣の中の失楽』によっていわゆるメタミステリー・アンチミステリー作家として注目される。『幻影城』廃刊後、いわゆる「ゲーム三部作」を発表。一時期ミステリーを離れSF小説に活動の場を移す。新本格ブームを受けて、実名小説(本人曰く擬似推理小説・ミステロイド)『ウロボロスの偽書』を『奇想天外』に発表。現在に至るまでマイペースなスタンスを崩さず執筆を続けている。(ウィキペディア)

  • 五年以上積読だったのを、ようやく読む。
    「虚無への失楽」と「死霊」に大きく影響されているなと思いながら読んでいたが、解説を読むと確かに「ドグラ・マグラ」や「黒死舘」からの影響も。

    ミステリはとくに、登場人物が魅力的かどうかが重要視されるが、
    本作では人物の描きわけができていない、というより、されていない。
    (女性の魅力のなさも)
    そしてそれがメタミステリゆえに現れる特徴としても機能している。
    若書きの作品としては巧妙すぎて卑怯だなーと思う。
    登場人物たちは、いや「人形たち」は全員平板な顔つきをした、紙に書かれたままの顔で、語る、語る、語る。

    とにかく独特の空間を作り出している。

    メタミステリというところだけでなく、文体や描写という点からも、インパクト大。

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著者プロフィール

竹本健治:
一九五四年兵庫県生れ。佐賀県在住。中井英夫の推薦を受け、大学在学中に『匣の中の失楽』を探偵小説専門誌「幻影城」上で連載。デビュー作となった同書は三大奇書になぞらえ「第四の奇書」と呼ばれた。
ミステリ・SF・ホラーと作風は幅広く、代表作には『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』の「ゲーム三部作」をはじめとする天才囲碁棋士・牧場智久を探偵役としたシリーズや、自身を含む実在の作家たちが登場するメタ小説「ウロボロス」シリーズなどがある。近著に大作『闇に用いる力学』。

「2022年 『竹本健治・選 変格ミステリ傑作選【戦後篇Ⅰ】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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