- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062932899
作品紹介・あらすじ
全国で生き返る「復生者」たち。その集会に参加した徹生は、自らの死についての衝撃的な真相を知る。すべての謎が解き明かされ、ようやく家族に訪れた幸福。しかし、彼にはやり残したことがあった……。生と死の狭間で「自分とは何か?」という根源的な問いを追究し、「分人」という思想が結実する感動長編。
妻に「あなたは自殺したの」と告げられた会社員の心の軌跡をたどる旅は、「あの時、何が起きたのか?」という謎の核心へと迫っていく。現代人の孤独を超克する希望の物語。「分人」という思想の到達点!
<内容紹介>
全国で生き返る「復生者」たち。その集会に参加した徹生は、自らの死についての衝撃的な真相を知る。すべての謎が解き明かされ、ようやく家族に訪れた幸福。しかし、彼にはやり残したことがあった……。生と死の狭間で「自分とは何か?」という根源的な問いを追究し、「分人」という思想が結実する感動長編。
読者から大反響の話題作! 深い感動の声が続々!
「満たされ、渦巻き、今溢れ出している」
「心が救われた」
「涙が止まりません」
「目からうろこ」
「この本に出逢えて良かった」
「本を読んで初めて泣いた」
感想・レビュー・書評
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印象的な表紙のゴッホ。
なぜゴッホなのかと思っていたんだ。
「私とは何か」で、平野さんが仰っていた自殺と自傷行為、分人についての考え方が、物語とともに、主人公の心の動きとともに、しっかりと収束していく。
ゴッホの絵が、鍵となる。
分人が、そこで大きく展開する。
物語は、そこでピークを迎える。
ラストに向けて、主人公は再度、自分の存在を揺るがされる。
けれど、そこでは物語の大きな動きというよりも、登場人物の心の動きの方に焦点が当てられている。
だから少し肩透かしを食らうが、終わり方としては、すごく美しかったように思う。見知らぬ土地で、眠れずに朝方に近い深夜に眠りにつき、朝焼けで目がさめる。その朝焼けの美しさに照らされているような、そんな美しさがあった。
上下巻という、わたしには少し長かった印象だ。
それはすでに「私とは何か」を読んで分人という概念を身近に感じているからだろう。この分人という概念を分かりやすく説明しながら物語を展開していくとなると、この重量感は仕方ないのか…いずれにせよ、「私とは何か」をすでに読み終えている人にとっては、中弛みと物足りなさを感じてしまうだろう。
「空白を満たす」ことには、主人公が生きる上での「幸福」が深く関わっていて、物語の中で主人公はそれを探り、向き合っていく。仮に自分が自殺して、生き返ったとして、その時にわたしは「空白を満たす」ことができるのだろうか。主人公のように向き合い、自分なりの答えを出すことができるのだろうか。
奇しくも、別の作品を通して自分の「幸福」について深く考えている今、わたしはどんな結論でもって「空白を満たす」のだろう。やり残したことをする?それとも、今目の前にいる人たちに改めて感謝をする?新しいことを始める?もし自分が自殺をしたとしたら、いったいわたしは何に追い詰められていて、何に幸福を感じるのだろう。もしかしたら、ただ生きている、それだけで幸せと感じるのかもしれない。どんなに苦しいことがあったとしても。
昨晩起きた、大きな大きな地震。
あの地震によって「生きていること」を揺さぶられた人だってたくさんいたはずだ。そして実感する。「生きている」ということを。そして、その瞬間、「生きている」以外のことがどうでもよくなる。
世の中は感染症に支配されながらも、次の日に控えているバレンタインに浮かれていた。あの地震は、そんな人間の浮ついた心に、釘を刺すような一撃だった。自然現象だ。わかってる。でもどこか、自分の罪悪感が揺さぶられ、罰のように感じてしまう自分がいる。この罪悪感が強くなる時、死を身近に感じる。自らを罰しようとする。でも例えば、大切な人を失った悲しみが復讐心となり、誰かに報復してもその大切な人は戻ってこないように、湧き上がってくる罪悪感に、罰として自分を傷つけたところで、何も解決しない。生きていることは苦しくて幸せ。相反するこの矛盾を抱え、昇華していくことが、生きるってことなのかもしれない。その作業こそが、空白を満たす作業なのかもしれない。 -
「私とは何か」をまだ読んでいないのだが、本書を読んで「分人」という考え方はよくわかった。人の多面性を整理する考え方と理解した。
メタバースによる「もう一つの世界」が誕生しつつある現代社会ではますます重要になっていく考え方だな、と思った。
下巻で物語のほとんどの空白は満たされる。
ただし、読者に委ねられている部分も多い。
たとえば、復生者の生の意味は何だったのか?
現時点では僕はまだ理解ができていない。
でも、ひとつ言えるのは、
徹生は徹底的に生きることができたな…と。-
naonaoさん
こんにちは!
確かに、統合された「個人」にこだわるよりも、「分人」の集合体が自分なのだ、と考える方が実際的で道理に合って...naonaoさん
こんにちは!
確かに、統合された「個人」にこだわるよりも、「分人」の集合体が自分なのだ、と考える方が実際的で道理に合っていると思います。
なぜなら、人は必ず多面性を持つものだから。
一つの統合した人格を生きようとすると、頭がおかしくなってしまう、と思います。
分人の行動一つで、自分の全てを否定する必要はないですよね。
自分が愛せない分人がいるのは仕方がない。だって、自分は社会的存在である以上、社会の鏡のようなものなのだから。
愛せない分人にこだわるより、自分が愛せる分人を増やせればいいな、と思います。2022/07/25 -
たけさん
お疲れ様です~
多分ですけど、ネットとかで悪口とか罵詈雑言吐きまくってる人もその一部、そういう分人がそこに現われてるだけで、個...たけさん
お疲れ様です~
多分ですけど、ネットとかで悪口とか罵詈雑言吐きまくってる人もその一部、そういう分人がそこに現われてるだけで、個人の醜態ではないと思うんですよね。でもされた側は個人にされたと思ってしまう。ネットは例えですけど、こういうのっていろんなところで起きてますよね。
いろんな自分がいて、結局どの自分が好きなのよ!と思ってましたが最近前より分かってくるようになりました(遅)
愛せない分人、いますよね…
結構それに罪悪感ありましたが、愛せる分人の存在を自分で確かに感じられることの強さを感じています。2022/07/26 -
naonaoさん
ネットの例え、よくわかります。
その人個人とその人(分人)の行為とを分けて評価する必要がありますね。
言われてみるとそう...naonaoさん
ネットの例え、よくわかります。
その人個人とその人(分人)の行為とを分けて評価する必要がありますね。
言われてみるとそうですねー。妙に納得。
結局、人生何事も相対的なものなので、愛せる分人が増えれば増えるほど、愛せない分人の存在が許せるようになるんでしょうね。
好きな音楽を聴いたり読書をすると愛せる分人が増える気がします。2022/07/27
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【生と死】を考える本に出会った。
若い人達に読んでもらいたいな。
何か人生に疲れて終わらせたい時あるけど
長生きはするもんだな。
どんな自分に出会えるか分からないから。
分人という教えは自分のモヤモヤが解されて透き通った感じ。
大好きなゴッホの表紙も何でなのか下巻で分かった。 -
分人主義という、著者の主張がメインの話になっていた。哲学や宗教的な要素が強め。ユングのペルソナに近いような、似て非なるもののような。一方、物語としても面白かった。
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泣いてしまったーーー。わかっとったのに泣いてしまった。小説というより平野さんの頭の中の核の部分を覗かせてもらったような本だった。
平野さんの今の考える中での『死』との向き合い方がこの形なんだと思った。また20年30年たったとしてこの考えなのか、もっと別の感じ方になってるかもしれない。
しかし現時点でここまで『死』『生』について私と平野さんに対しての分人を生まれさせてくれたことは本当に大きい。個人的なかかわりはないとしても、『死』について考えた時私の考えと平野さんの考えが永遠に対話していくのだと思った。
人に誇れる本物の幸福とは疲労で手に入れた物
疲労は結婚式のビールのようなもの
嫌な自分がみえたときは、自分の中の分人同士で
その分人を見守る。自分は1人だけではない。
1番幸福なことを自分なりに考えてみた
魚釣りなんじゃないかなって。人間は対人関係で悩みを生む。その中で魚釣りは大物を達成感、食べて美味しい食欲も満たす、1人でも楽しめる、一人で性欲を満たすことも重要かもしれない、それか自然を相手にすること、登山、ゲーム、読書、手芸
1人でも完結できるそのことに人をかかわらせない唯一の楽しみというものの存在を知っていれば
人生の中に疲労のない幸福を感じるとこができるのかもしれない、んーーやっぱり冬の露天風呂もはずせないなー笑考えただけでこれがやっぱり1番かな〜笑 -
表紙がなぜゴッホの自画像なのかと考えながら読んでいたが、後編中盤に明らかになる。おそらくはゴッホの自画像の謎から着想を得た作品なのではと考える。分人という思想は、人格という解釈ておぼろげに思っていたが本編でとても丁寧に考察しておりとても面白く読めた。ネイバーというサービスはとても面白い着想て、実際にあったらいいのではと思う。生に観する様々な考察を一度生き返った人の考えに説得力を感じる。死んだ人が生き返るという超常現象については残留思念かな、程度で考えればいいと思う。作者の素敵な表現力が好きで、他の作品を読みたくなった。
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徹生の死の真相や、改めて生きたいという気持ち、3年間にあったことなど次々と明らかになっていく。やっぱりなと思ったけれど、復生者たちが消えてしまうことも…
徹生が、というより妻の千佳がいたたまれなくて
千佳のために徹生を生かしてくれないだろうかとも思ったり。
どんな経緯で死んでも、どんなにやり直したくてもやり直しは効かない一度きりなものが命。そう分かっていても家族が最後に集まった時間は切なかったです。 -
死んだ人間が生き返って、自分の死因について探る物語。ミステリーかと思いきや、自分とひたすら向き合い自問自答する主人公を通して、『分人』主義を理解する哲学書のような小説でした。
表紙も素敵で飾りたい。
人は関わる相手ごとにキャラクターは多少変わるものだから、この人といる自分が好きだな〜と思う人と一緒にいる時間を大切にすれば良い。
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著者の[私とは何か 個人から分人へ]を先に読了していたので、分人については予習出来ていた。
この作品で、ストーリーと共に分人について理解が深まった。
生と死。残されたものたち。自分が不在の世界。
哲学書のようでもあった。
それは、ミセス・カーモディ思考です(^^ゞ
それは、ミセス・カーモディ思考です(^^ゞ