- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062932899
作品紹介・あらすじ
全国で生き返る「復生者」たち。その集会に参加した徹生は、自らの死についての衝撃的な真相を知る。すべての謎が解き明かされ、ようやく家族に訪れた幸福。しかし、彼にはやり残したことがあった……。生と死の狭間で「自分とは何か?」という根源的な問いを追究し、「分人」という思想が結実する感動長編。
感想・レビュー・書評
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平野敬一郎さんの代表作の一つである「空白を満たしなさい」を読み終わりました。
正直、万人受けする著作ではないかもしれない。上下巻あり、ボリュームもなかなかのものです。私も途中、少々めげそうになりましたが、最後まで読了し、結果、やはり読んでよかったとつくづく思いました。
物語のストーリーは実に不思議な設定で、死んだはずの人間が次々に復生し、遺族・友人・会社の同僚・上司など、驚きをもって迎えられる中、その戸惑いと現実的な葛藤、そしてこの物語の主人公は何故自分が死んだかを追及していく中での心の苦悶が描かれています。
もちろん現実にはありえないことではありますが、もしもそのようなことがあったとしたら、という想像力を働かせて物語を読んでいくと、現世で様々な苦難に出会っている我々の現状が違った見え方がしてくるような気がします。
平野氏の「分人主義」という考え方は、私個人としてはとてもいい人生観だと思います。これを知ってしまうと、「個人」という一面的なとらえ方はなんと苦しい生き方なんだと思えてきます。
人は、他人と接するとき、何かの物事に接しているとき、その局面局面で自分のある側面を見せる。人は実は非常に多様な側面をもっていて、それはその人の「分人」であり、その人自身を構成しているものである。(いわゆる多重人格とは違い、人とはそもそもそのように多様な側面をもった生き物、分人であるという考え方です。)このような考え方をすれば、ある側面としての「分人」が否定されたとしても、その人個人全体を否定されたわけではないということになります。自殺者が増加の一途をたどる現代においては、新しい考え方で、とても新鮮でした。全く持って現世は生きにくい世の中ですから、こういう考え方はありだなと実感しました。この「分人主義」という考え方については、別の書籍がでているようですので、別の機会に精読してみたいと思います。
「マチネの終わりに」「ある男」に続く、新作が今から待ち遠しくなりました!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初めて分人という考え方を知り、衝撃を受けた。
自分の中で感じてはいたけど、言葉で説明できないようなことを、この本で明らかにしてもらった感覚。
分人という考え方を知ることで、なんだか生きやすくなりそうな気がする。
まだ間に合うなら、もっと早くこの本と出会って幼馴染に薦めたかった。でもそうもいかないから、これから生きていく中で、代わりに私が何度も読み直したい。
ゴッホの表紙に惹かれて購入したが、その意味が分かった -
全世界的に死者が黄泉がえる話
主人公の徹生は自分が最高潮に幸せな時に何故か自殺した?
黄泉がえりを果たした徹生は自分の自殺を受け入れることが出来ず、自分の死に疑問を持ち真相を探す。
下巻ではその真相と黄泉がえりを果たした人達のコレカラに焦点が撮られているかと思いきや・・・
終盤は涙なしには読めません。
暖かくせつない家族の物語です。
私は主人公の徹生のイメージは何故か佐藤二郎さんでした。 -
死んだはずの人間が生き返る「復生者」。その設定がファンタジーでありながら、全編通して感じたのは「リアル」。主人公含め登場人物の心情が丁寧に描かれていて、物語に入り込んでしまった。「分人主義」という考え方には眼から鱗が落ちるようだった。これを読んで春馬くんの死の理由がわかったような気がするとか、この本を思い出したとかTwitterで見たが、そういうことか…と思った。同時に彼がこの本を読んでいればよかったのにという思いも強くなった。生きづらいすべての人に読んでほしい本です。
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自殺について、分人の概念を用いて考えることで、以前よりも理解できるようになった。誰しも好きじゃない分人を少なからず抱えている。それでも、自分が生きたいと思う、好きな分人を足場に生きていきたい。
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後半、ドキドキしながら読んだ。読了後もその余韻が続く。愛する人をぎゅっと抱きしめて、その存在を感じたくなった。 -
上巻を読んで期待していたが、期待以上だった。
読んだ感じとしては、さらっとすぎず、難しすぎず、丁度いい。
中身は、上巻のミステリー要素からは変わって、
下巻は、人が様々な環境で生きる分人という考え方がメインだった。
よく考えられていて読んでいて、なるほどなと思えた。
最後一章くらいがちょっとクドイ印象を受けたけれど、
ここ一年で一番よい本だった。また読みたい。 -
表紙のゴッホに、改めてヤラれた‼︎
先日、『ドーン』を読んで不思議と読後の感じが残っていたので、もう一冊といってみた。
死人が生き返るというのは、小説としてはあるパターンなのだけど、なぜ死んだのかという所にどしどしツッコんでいくところがすごい。
周りのキャラクターも大概……なのだけど、救われどころも、憎めすぎない感じもして、良かった。
人の心理って自分一人ではもちろんわからないことがあって、この話はその解決になるわけではない。
ないのだけど、読むことで自分の中に留めておくべき部分があったと思う。
それが生きていることで、遺せるものの一つなのかもしれない。
著者プロフィール
平野啓一郎の作品






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