愛の夢とか (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1000
レビュー : 74
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062933681

作品紹介・あらすじ

あのとき、ふたりが世界のすべてになった――。ピアノの音に誘われて始まった女どうしの交流を描く表題作「愛の夢とか」。別れた恋人との約束の植物園に向かう「日曜日はどこへ」他、なにげない日常の中でささやかな光を放つ瞬間を美しい言葉で綴る。谷崎潤一郎賞受賞作。収録作:アイスクリーム熱/愛の夢とか/いちご畑が永遠につづいてゆくのだから/日曜日はどこへ/三月の毛糸/お花畑自身/十三月怪談

感想・レビュー・書評

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  • 集中の糸が切れると、話についてゆけず置いてかれそうになったが、気がつけば川上未映子さんの世界に取り込まれていた感じです。
    中でも「お花畑自身」が印象深かった。
    夫の会社の倒産で泣く泣くマイホームを手放すことになった中年夫婦。買主(新しい家主)は若い作詞家女性。でもあの女は作詞家で、作家というのとは違います。そういうのとは根本的に違います。といちいち中年主婦は難癖をつけます。
    中年主婦は、愛着ある元自宅が気になってしかたない。
    ついに不法侵入して庭に忍び込みます。そこには家主の顔が。
    あなたは家を失った事実はどうにもならない、どうしたら気が済むのか、あなたがこの家で一番気に入っているものは何ですか?
    庭です。と中年主婦。手塩にかけた庭のお花畑は主婦の生きがいでした。
    だったらあなたがお花畑の一部になればいい、埋まってみるんです、庭に。
    こわいが、面白い!それでタイトルの意味がわかった。若い女性に誘導された主婦は、埋まってゆきます。顔は出てる感じで。
    私が何をしたのでしょう、ひとつ、またひとつ、わたしは重くなってゆく。そして軽くなってゆく。
    そこで気づいたのは、執着の解放です。執着を手放しなさい、でないと砂をかけられますよ。と言われているようでした。

    押し問答のなか、作詞家女性はこうも言う。これまで何して生きてきたの、ってきか
    れたら、たとえばあなたはなんて答えるんですか?
    そのセリフとても気になった。主婦はそこまで言われなければいけなかったのか。

  • 面白かった。「十三月怪談」がいちばん好きだったな。正常な判断ができていないのではと思わせる主人公の描写でも思考として逆にリアルに感じてしまうし、危うく見えて練られた文章なのだって分かる。すごいなあ。これでご自分では「技術が圧倒的に足りない」と思われてるんだもんな……(当時のどこかのインタビュー読みました)。もっともっと読みたいな。

  • さいごの十三月怪談、がとてつもなく良かった。

    時子のはかなさと潤ちゃんの真っ直ぐさが、美しい。
    健気に「いま」を「生きる」二人が、美しい。

    死についてどれだけ思いを巡らせたって、
    いま生きているのだから、ほんとうの死を知ることはできない。
    一緒にいること、生きてそばにいることがたいせつということ。
    死ぬとは、見えなくなること。

    潤ちゃん目線の、時子との最後のときの描写が、
    やりきれなくてやりきれなくて、電車で読んでいたのに涙がとまらなくて、
    とまらなくて、上を向いて鼻をすすって読み進めたけど
    やっぱり涙の粒がこぼれてしまった。

    めんつゆのいつもの味の尊さ、
    大きな瞳で潤ちゃんのすべてを目に映す時子、
    初めて?時子の前で涙を流して、ふっくらとした時子を抱きしめた潤ちゃん。

    最後はやっぱりあのマンションの一室で、
    いつともわからない十三月。
    永遠にふたりに幸せであってほしい、です。

  • 庭に埋まる話が大変印象的。怖い、ヒリヒリする。
    ピアノなど、楽器ができたらいいな。
    植物園にゆきたい。

  • 十三月怪談が、飛び抜けて好きだった。
    確かに、夫を残して死ぬってどういうことだろう。って突き詰めて考えると怖くなるな。
    「死ぬとは、見えなくなること」シンプルだけど、その通り。
    ユニークな死生観も良かったけど、意識だけの状態で、いつか夫が何十年後かに同じところに来てくれるのを待ってるのが、私も同じふうにそれを拠り所にするかもと、グッと?きた。
    片方が死んでしまった後、最初はクローゼットを毎日あけて匂いをかぐのが習慣なくらい忘れられないけど、どんどん過去になっていき、というのがリアル。時子の妄想?の世界のなかだけど、奥さんが死んで何年も経って、また奥さんと出会ったばかりの時のような話し方で電話して恋が始まってくところを奥さんが見てるのがせつない。
    でも最後の時間2人で過ごせて、良かったなぁと思った。

    アイスクリーム熱、ハタチ前後の一期一会感のあるせつない恋のかんじ、よくわからない人に惹かれて、でももう二度と会えない、ってのががリアルで良かった。そんな気持ちを昔感じたことがあったように思った。
    お花畑自身、家を買った女がなんだか説得力があって、嫌いになれない。

  • 十三月怪談が印象的。
    死んだ後もずっと、夫を見続ける。

  • 一文が少し長めだけど流れるように読めて独特な雰囲気を演出している。こういう文章の書き方も好き。
    「十三月怪談」がすごくよかった。時子が考えてることなんだかすごくよくわかるって思った。全然怪談なんかじゃない、終わり方もよかった。

  • 「十三月怪談」よかった。十三月という意味がとても意志を強く持ってこのお話を包んでいると思う。
    でも全体的にこの小説自体に、川上未映子さんらしい艶かしさと鋭さが少し物足りなくていい意味でも悪い意味でもさらっと読めちゃう。

  • わかりそうでわからない心の渦巻きが言語化されていて、気がついたら巻き込まれていた、みたいな感じ。一つ一つの文章はまったくよくわからないのだけれど、全体の、短編ごとの流れはわかる。共感もある。読み終わった後、鼻が苺に見えたし、口の中に土の味がしたし、部屋に誰かがいるような気がした。つまり、作品に思いきり影響された、ということだと思う。深夜、一人で、たっぷり時間をとっての読書がおすすめです。

  • 十三月怪談が良かった。読み進めていく内に何とも言えない気持ちになった。最後にまた二人が会えたのが嬉しい。映像化したら面白そう。

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著者プロフィール

川上未映子(かわかみ みえこ)
1976年大阪府生まれ。大阪市立工芸高等学校卒業。2002年から数年は歌手活動を行っていた。自身のブログをまとめたエッセイ『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』で単行本デビュー。2007年『わたくし率 イン 歯ー、または世界』『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』で早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞、2008年『乳と卵』で芥川賞、2009年詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、2010年『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞、2013年詩集『水瓶』で高見順賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、2016年『マリーの愛の証明』でGRANTA Best of Young Japanese Novelists、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞を受賞。2017年、『早稲田文学増刊 女性号』で責任編集を務める。2019年7月11日に『夏物語』を刊行し、注目を集めている。

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