図書館の魔女 第四巻 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 625
レビュー : 94
  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062933889

作品紹介・あらすじ

手を汚さずして海峡に覇権を及ぼす、ニザマの宦官宰相ミツクビの策謀に対し、マツリカは三国和睦会議の実現に動く。列座したのは、宦官宰相の専横に甘んじてきたニザマ帝、アルデシュ、一ノ谷の代表団。和議は成るのか。そして、マツリカの左手を縛めた傀儡師の行方は?超大作完結編。第45回メフィスト賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • やっと読めたー満足感がある。
    すごく壮大で、今まであまり読んだことのない感じの話だった。
    時が経つにつれてどんどん仲良くなるマツリカとキリヒトが微笑ましくて可愛いなーと思っていたけど、登場人物たちはみんな個性豊かでいいな。
    衛兵たちもそれぞれ愛すべきキャラクターだった。
    作者が言語学者ということもあって、言葉とか文字とかの話が多いし、とても大切なものとして書かれている。
    それがとても心に残った。
    私自身も学生時代に言語学を学んでいて、こういう話が大好きなのです。
    言葉はただの道具じゃなくて、言葉こそ意思そのもの。マツリカを見ていて強く感じた。

  • 第45回メフィスト賞受賞作。

    すんごく面白かった。これは…数年に一度出るか出ないかの凄まじいファンタジーだと思う。世界設定もさることながら、細かな部分も確かな知識もしくは調査に裏付けされて緻密に描写されている。ここまで微に入り細を穿ちといった感じで書かれているリアリティ溢れるファンタジーは、おそらくファンタジー作家なら皆目指すところなのだろうが、それを実現できているファンタジー小説は数えるほどしかない。
    いやほんとにすごい。

    とはいえ小説としてのアラは見えなくもない。特に1巻目、2巻目は視点移動がぽんぽん起こるせいでちょっと読みにくかった。
    それから、描写が細かすぎてちょっと辟易する場面も。カットしていいところも結構あったんじゃないかなあと思う。
    というか序盤がきつかった。まだ世界観にもキャラクターにも入り込んでいないのに、延々と情景描写が70ページ以上続くのは、ちょっと。

    歴史、地理、政治、あらゆる側面からの世界の詳細な説明、まるで階段を一段一段上っていくかのような隙のない理屈で組み合わされた登場人物たちの会話、そしてあらゆる分野の知識の開陳にかなりのページを割かれていること…この小説を読んでいると、大学の教授の話を聞いている気分になる。学生時代師事した話好きの教授を思い出す。それとも作者が言語学者だという前情報による偏見だろうか。
    この言葉、知識の奔流は読む人を選ぶだろう。人によっては「講釈はいいから早くストーリー進めてよ!」という気分になるかもしれない。ただこの小説、その講義の中にこそストーリーの鍵が含まれていたりするものだから、読みとばすのはおすすめしない。
    ついでにいうと難しい言葉もたくさん出てくる。結構小説を読んでる方だと自負していたが、読めない、意味のわからない言葉がわんさかあって自尊心をへし折られた(笑)

    ペンは剣より強し。それを体現している物語だと思う。
    ただし、剣の方もなおざりにされずやっぱり細かな描写でしっかり描かれていて、剣の方にクローズアップされたシーンもすごく面白い。
    剣が活躍するシーンでは一見ファンタジー的な生物や能力が出てくるのだが、いちいち民族学etcの説明がされてて、おそらく空想生物ではなく実際にこの世界にいる存在を想定しているんだろうなということを窺わせる。勿論多少過剰な味付けはしているだろうけれども。
    おかしな話だが、このファンタジーは徹底してファンタジー色を追い出すことによって素晴らしいファンタジーになっている、と思う。
    まるで高い塔の魔女が魔術を嫌っているかの如く。

  • 本当に素晴らしい小説でした。評価の☆が5つまでしか無いのが惜しい。
    壮大なファンタジーかと思いきや魔法も不思議な生き物も出てこない。(民族による体型などの違いはあるけれど。)でも、確実に質の高いファンタジー。巻末の解説に「指輪物語やハリー・ポッターに勝る物語」とあったのですが、まさにその通りだと思いました。
    読み始めはページ数の多さと言葉の難しさに圧倒されて、読み終える事が出来るのかも怪しく感じました。でも、4巻を読む頃には早く先が知りたくもあり読み終えるのが寂くもあり。沢山の知識や考え方が入ってくるのだけれど決して押し付けがましくなく、読み手にちゃんと考える余地を与えてくれている。
    沢山の人に読んでほしい物語です。

  • トールキンの定義では、ファンタジーとは「往きて還りし物語」とのこと。確かにマツリカ一行は、他国に行って、帰って来た。古典的なハイファンタジーの形式を踏襲しているが、最後に、またも「往く」者たちがいて、これこそこの本の本論だと思う。彼らが「還る」場所は図書館しかないのだから、次の物語が紡がれるはず、と期待。

    この巻にきて、いきなりホラーアクション映画のような怒濤の展開。
    刺客「双子座」を確保しに行く一行に襲いかかる刺客また刺客、罠の山!これまでのじっくり読書ペースはどこにいったやら、ページをめくるのももどかしいほど没頭した。
    アクションシーンのキリヒトの活躍は圧巻。
    たが、この巻の真骨頂は、最終章が終わったあとの「つけたし」の部分。
    裏切り者へのマツリカの言葉。
    キリヒトが「キリヒト」でなく個人として生きるための別離。言葉の永遠性と名前の重要性。
    切なく余韻を残す、すばらしい読書体験だった。

  • 1巻〜4巻まとめてのレビュー。
    なんだか、すごい本を読んでしまった...という感想。読み終えて数日経っても余韻が抜けきらないほどです。

    言葉ってなんだろう?この作品はずっとその問いを投げかけてくる。
    マツリカは言葉を武器に人を動かし、世界を動かしていって、それはもう本当に圧巻だけれど、この物語のメッセージはむしろ「言葉はいらない」ことなのではないかと思った。
    読者はきっと皆この作品の言葉の力に魅了されるけど、読み進めるうちに、言葉は想いを伝えるための手段のひとつにすぎず、言葉だけを頼みに生きていくことはできないと気づいていく。
    世界情勢の行方を担うキリンの演説。命懸けの場面での他国兵との意思疎通。そこで命運を決定付けたのは単に言葉だったかといえばそうではなく、言葉を超えた信念とか、連帯感とか、友愛とか、そういう「言葉にできない」何かだった。そう何度も訴えかけてきた気がします。
    とはいえ、マツリカがあやつる言葉たちは彩り豊かで最高にクールです。

    そしてそして、なんと言ってもマツリカとキリヒトふたりの関係性が良い!
    ふたりだけの特別な言葉が固い絆を作ったけど、最後、一緒に毛布にくるまっているときにはもう、言葉もいらなかった。お互いが唯一無二の存在で、だけど生まれついた運命を思えばいつまでも手を繋いでいられなくて。
    マツリカもキリヒトも、ふたりだけの約束をその手の中にそっと握りしめて、再会までの時を過ごすのだろうな。
    頼もしいけど脆い、可愛いらしくてせつない、ずっと見守っていたいふたりでした。

    それにしても、この作品の圧倒的な語彙に触れた後にこうやってものを書いてみると、自分の文章の拙さをいっそう痛感しますね(汗)

  • 言葉に興味を持って生きてきたことを全肯定されるような本だった。
    これまで読んだ本全てのうち、控えめに言っても5本の指に間違いなく入る名作!と、読書家でもない自分の尺度を持ち出すことすら、おこがましいけれど。

    これをプレゼントしてくれる親友がいて幸せだと思った。

  • 政治的な調略あり、呪術をからめた戦闘あり、海上での感動的な会話あり、まだまだ広がる未来を予感させるいくつかの別れありと、盛りだくさんな最終巻。長い物語を読む喜びがつまった作品だと思う。またぜひ、成長した彼らに再会したい。

  • 今年一の当たり本でした。読書に集中して、読み終わった後に現実に戻りきれない感覚は久し振りです。
    怒涛の最終巻。マツリカの語る、言葉の話に胸を打たれました。別れの手紙にも。
    一つの世界を作り上げてしまうなんて、本当にあった話みたいで、読み終わった後も、話がまだ続いているような気がしてます。

  • 三つの国を又にかけた大冒険の回でした。意外な人物の裏切りが明らかになります。
    マツリカにかけられた呪いを解く為に敵と対峙する場面では細かい描写で描かれていて、最初から最後までハラハラしました。
    マツリカとキリヒトのやりとりも神秘的でした。

  • 超弩級の大傑作、と言うほかない。
    これほどまでに途轍もなく、ただひたすらに面白い小説に巡り会えた幸せを、読後の気怠い充足感の中でしみじみと噛み締めている。

    著者の高田大介氏は、言語・文献学の研究者であり、本書にはその知見が物語のアクセントとして実に効果的に差し込まれている。
    専門家にしか書き表せないであろう、「ことば」というものの奥深さと面白さが、マツリカを筆頭とするたいそう魅力的な登場人物たちによって語られることで、素人同然である自分にも、水が染みこむかのように染み渡った。
    本書のように、しっかりとした「文学」を面白がれる読者であれば、本書にて開陳される「ことば」への深い造詣は、それだけで読み応えのあるコンテンツと成り得る。

    そしてなにより、本書の「物語」が抜群という言葉すらも凌駕するほどに面白い。
    幾重にも張り巡らされた権謀術数と、僅かな、取るに足りないような言葉の切れ端から、鮮やかに推理を組み立てていく一連の流れには、ただ感嘆するしかなかった。
    そして、その物語の登場人物たちが、これまた他に類を見ないほどに魅力的、かつ個性的で、特にマツリカとキリヒトとの遣り取りは、胸に深い印象を刻んだ。
    なにより、随所に挟み込まれるユーモアには、思わず笑い声が漏れるほどだった。

    さらに、著者の文体、その中でも文章のリズムが本当に素晴らしい。
    「読む」という行為がただただ愉しく、文字を目で追うことが快楽となる。
    それはまるで、美しいメロディに身を委ね、身体が自然と揺れるに任せているかのような心地よさ。
    こんなに素晴らしい読書体験はそうそう出来るものではない。

    深く示唆に富んだ知見と、面白さに引き込まれる物語、そして、そのすべてを表現するきわめて優れた文体。
    これだけすべてが揃った小説に出会ってしまったら、虜になるなと言われても無理な話だ。
    続刊も楽しみ。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。早大、東京芸大などで講師を務めたのち渡仏、現在はリモージュ大EDSHS EHICに籍を置き博士論文執筆中。専門分野は印欧語比較文法・対照言語学。『図書館の魔女』(上・下巻 講談社刊)で第45回メフィスト賞を受賞。

「2015年 『図書館の魔女 烏の伝言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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