- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062934152
感想・レビュー・書評
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ダイヤモンド・オンライン
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2017年8月14日 鈴木貴博 :百年コンサルティング代表
この夏読みたい「仕事に役立たないが人生に役立つ」名著
夏休みは読書をしたいというビジネスパーソンに、「ナナメ目線」で選んだ何冊かの本を推薦。ビジネススキルの向上には役立たないが、人生を見直すための参考になるはずだ
夏休みと言えば「読書」
ナナメ目線で選んだ必読書3冊+1冊
夏休みといえば読書である。お盆で連休中の方の中には、この機にゆっくり本を読みたいと考える人もいるだろう。書店の店内を散歩しながら、この夏、読むべき本を探したいところである。そんなビジネスパーソンに向けて、私から「ナナメ目線」で選んだ何冊かの本を推薦したい。
今回紹介するのは、直接ビジネススキルに役立つ本ではない。しかし、夏休みにじっくりとビジネスライフを考えるためにプラスになるものという観点から、ビジネス本ではない本を3冊、そしてビジネス本ではあるが決して短期間のビジネススキルには役に立たないであろうお薦めの本を1冊、紹介してみたい。
ビジネスパーソンの中でも、たとえば「自分を少し見直してみたい」と考えている大企業の男性管理職に、この夏ぜひ読んでいただきたい本が『半径5メートルの野望 完全版』(講談社文庫、はあちゅう著)だ。なりたい自分と思い通りの生活を手に入れるために、自分の「半径5メートル」を探して見つけた小さい野望を少しずつ育てていくための指南書である。
著者は、今日本の20代の若者から圧倒的な支持を集めているインフルエンサーの1人、はあちゅうさん(31歳)だ。
基本的に多くの読者に推奨したい本なのだが、特に前述の推奨条件に該当する読者は、読む際にまず「ふたまわりも年下の女子から学ぶことなど何もないはずだ」と口に出してから読むことをお勧めしたい。
念のために言っておくと、この呪文を唱えずに読んでしまうと、この本はただ読み切って終わりになってしまう。それほど読みやすいし、面白い。しかし呪文抜きだと、この本から学べる無数の「気づき」に気づかずに終わるだろう。
はあちゅうさんのツイートを読めば、いかに多くの人が彼女の考え方に共感しているかがわかる。本書の中では共感できる話をそこかしこに見つけることができる。そしてその多くが、若者だけでなくおじさん世代のビジネスパーソンにも共感できる学びが多い。
たとえば「感情も筋肉」というメッセージがある。筋肉は使わないと衰えるのと同じで、感情も日ごろから使っていかないと衰えてしまう。こういう話を聞いて「どきっ」としない中年読者は、ちょっとマズいかもしれない。
ビジネスシーンの中では、感情を飲みこんで行動しなければいけないことが多々ある。対外的な場面だけでなく、職場の同期のような本来フラットであるべき仲間内ですら、本音を吐露できない場面は多い。組織ピラミッドの上に行けば行くほど、感情をコントロールする技術が大事だと言われるくらいだ。
しかし、そうやって感情をコントロールしているうちに、感情の筋肉は衰えてしまうのだ。それはそのように著者に言われなければ、気づかないところではないだろうか。現代のビジネスパーソンは、自分の感情を吐露する力を気づかないうちに衰えさせているかもしれないのだ。
「仕事は裏切らない実績です」
心に響くはあちゅうさんの言葉
また、著者は実に多くの場で、世の中に影響を与える言葉を発信していることで知られている。その1つのエピソードを紹介しよう。
ある講演で会場から「あなたにとって仕事って何ですか」という質問が来たという。瞬間、彼女の脳裏には「夢」「責任」「人生の軸」「社会に還元できること」「生きている意味を与えてくれるもの」といった、色々なフレーズが浮かんだという。ここまでは私もよく体験することだ。
しかし、そのとき彼女が瞬間的に選んで口に出したのが、「仕事というのは、裏切らない実績です」という言葉だったという。その上で彼女が発見したことは、「無意識に一瞬で選んだ言葉が、実は自分の感覚に一番近い」ということだそうだ。
振り返って自分のことを反省すれば、同じように情報を発信する仕事を生業としていても、私はそこまで自分の発言を振り返ったり、そこから学んだりはしていないことに気づかされる。はあちゅうさんに影響力があるという事実は、そこまでの努力に裏打ちされているのだということに、改めて気づかされる一節である。
著者であるはあちゅうさんの本質は「もがくひと」だと私は思う。少なくともこの本の中で著者が語っていることは、スマホとネットの社会の中でいかに著者がもがいてきたのかという話ばかりだ。そして、これほどもがいて行動して、初めて何かを動かせるようになるのが現代社会なのだと思う。
インターネット以降の社会は、おじさんにとっては住みづらい社会だ。なぜなら、ビジネスの古い常識が通用しなくなっていくからだ。しかし、この世界で一見うまくやっているように見える若い人でも、ここまでもがいているのだということを、この本から理解することができる。それを学ぶだけでも、本書から得られることは十分に大きいのではないだろうか。
何をしていいかわからない人は
ぶらぶら歩きで生き方を見つめ直せ
さて、1冊目の本が結局、ビジネススキルを振り返るための厳しい本だということでがっかりされた方のために、別の切り口のもっとゆるいナナメの本を紹介しよう。散歩の達人POCKETシリーズの『ほじくりストリートビュー』(交通新聞社、能町みね子著)である。地図で見つけた変な境目、細すぎる道、傾斜、行き止まりなど、街の「気になる風景」をほじくりまくるという内容だ。
この本は「夏休みがやってきたのに、夏休みの過ごし方がわからない」ビジネスパーソンにぜひ読んでほしい。「そんなことはない。家族につきあって買い物や外食で毎日忙しく休日が充実している」という人にも、実は読んでほしい。なぜなら、夏休みの過ごし方がわからない人も、一見忙しいけれど自分らしい夏休みを過ごしていない人も、みな同じ「休みに何をしたらいいかわからない病」にかかっている恐れがあるからだ。
人生90年時代だからこそ、人生の後半戦には長い長い「自分の時間」が待っている。そこで何をしたいのかを考えるには、夏休みはいい機会だ。本書の著者の能町みね子さんは、タモリと同じくぶらぶら街を歩く天才である。その能町さんが妙に気にかかって出かけてみた場所についてのエッセイが、この1冊である。
本書は私の事務所がある百人町や新宿駅、かつて住んでいた市ヶ谷の大日本村(大日本印刷の社屋や工場が密集している一角)など、たまたま私が土地勘のある場所から始まるのだが、彼女の散歩における目の付けどころは常人とは違う。普段通り慣れていると思える街の中の異次元観、異世界を見つけるのが、能町みね子という人物なのだ。
散歩という行為は、街を歩くことで過去に起きてきた様々な出来事に気づく行為である。それは、史跡・名勝のようなわかりやすい場所の歴史の話ではない。一見何も気づかずに通り過ぎてしまうような場所にこそ、埋もれてしまい、忘れ去られそうな市井の歴史が息づいている。
この夏にそのことに気づかないと、数年後、その風景はすべて失われてしまう可能性もある。今学べる「街の歩き方」に気づかせてもらいながら、実際に同じ街を歩いてみることで、この夏、人生について何かに気づくことができるのではないかと私は思う。
そして3冊目の本だが、今年最大の話題でありブームでもあるのが「将棋界」だ。藤井聡太四段の活躍や加藤一二三元名人の引退もそうだが、忘れていけないのは人工知能(AI)が棋士を凌駕したことである。その人工知能の黎明期からずっと棋士との戦いを見守ってきた著者が著した1冊が『棋士とAIはどう戦ってきたか~人間 vs.人工知能の激闘の歴史』(洋泉社、松本博文著)である。
著者はある一件から、日本将棋連盟と距離を置かざるを得なくなった将棋記者である。その制約を逆手にとって、「人工知能の将棋プログラムと棋士との橋渡し役」という、一風変わった立ち位置を得ることができた。
本書はコンピュータが弱過ぎて話にならなかった時代から、プロ棋士の方が逆に弱くなってしまった時代までの歴史を通じて、ソフト開発者と棋士がそれぞれ何を考えてきたのかをまとめたルポルタージュである。
たぶんこの1冊を読むだけで、人工知能というものがなぜ今、世界で話題になっているのかが理解できるはずだ。そして、将棋でここまでできるということは、人工知能にはもっと先の世界があるということでもある。
そのうち仕事自体がなくなる?
夏休みに「今後の人生」を考える
この夏読むべき本を3冊紹介したが、前述した『棋士とAIはどう戦ってきたか』とのつながりで、もう1冊お勧めしたい本がある。8月18日に発売になる『仕事消滅』(講談社+α新書、鈴木貴博著)である。
人工知能がディープラーニングという50年来のブレークスルーを実現した結果、10年前にはあり得ないと思われていた人知の領域を人工知能が侵し始めた。その結果何が起きるかというと、人類が想定しなかったペースで我々の仕事は消滅するかもしれない。
棋士を超えることができた人工知能は、業種が変われば、ファンドマネジャーを超えることも、数学者を超えることも、弁護士を超えることも可能になる。さらにその先には、「課長の仕事」のような一般的な管理職の仕事すら、汎用的人工知能という現在は存在しないAIが登場して、人間よりも有能に仕事をこなすという未来が見えている。
実際、20年後には人類の49%の仕事が消滅するというレポートがある。もし現実にそのような時代になったら、自分はどう生き残ればいいのか。そのような未来を経営の専門家の観点から描いたのが本書である。
すでにお気づきかと思うが、その経営の専門家とは私だ。本連載『今週もナナメに考えた』の読者の皆さんは、夏休みにはぜひ人類の未来をナナメに考えるために『仕事消滅』に興味を持っていただければと思う。以上が、「夏休みに読むべき3冊+1冊」である。
(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
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2017.6.25
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人としての弱さが、一転して人生における強みにもなるんだなぁと感じた本。
マネタイズ能力を磨きたい!:*+.\(( °ω° ))/.:+ -
エッセイの中でも触れられているけど、この人の根底には強烈なコンプレックスがある。それが文章の端々から感じ取れる。
それに負けてなるものかと、負のエネルギーを燃やして強烈に前に進む姿は逞しくもあり、同時にどこか危うさもある。
その危うさを、人はカッコつけて隠そうとしがちだけど、ここまで包み隠さず、飾らず、媚びずに公に出しちゃうところがすごい。この人は強い。そういうところを隠さず出せるから、共感を呼ぶし、その共感が彼女を前へと進めるんだろうなぁ。
とくっそ生意気にはあちゅうさんについて考察してみたけど、今の自分を猛省せざるを得ない言葉の連続で、改めて人生を考える契機になりました。読後の感想は、「悩んでないで行動しよう」という、とてもシンプルなものでした
力のある人の書いた文章は不思議と力が湧いてくるよね。 -
高校までは、ネガティブ思考でコンプレックスのかたまりだった著者は、大学から始めたブログにより、大学デビューを果たし、カリスマ女子大生ブロガーとして活躍。その後、大企業に就職するも2年半ほどでベンチャー企業に転職、現在はフリーランスの物書きとして活躍する、はあちゅうさんの自己啓発&エッセイ本。
SNS等によって、人の世界観はどんどん広くなり、自分以外の人の日常も覗き見ることが多い時代となり、どんなジャンルでもグローバル化が当たり前になった。
だけど、個人で世界を見据えた大きな目標をたてたり、世界をより良い方向に動かしていくことは、一握りの人にしかできないことで、なかなか行動することも難しい。
そこで自分の日常の半径5メートルに起こることに集中することで、その小さな世界を充実させることができる。そして、隣の人の半径5メートルと自分の半径5メートルを融合させていくことで、自分の行動範囲、興味分野をどんどん広げていくことができる。
「半径5メートル」という言葉は、もともとNHKの『新世代が解く!ニッポンのジレンマ』という番組に出演したはあちゅうさんが口にした言葉で、番組内で何度も取り上げられ、ネットやTwitterでもクローズアップされるようになり、現代を生きる人に必要な考え方の象徴になっていると思う。
ネットやテレビ、SNS等によって、世界の出来事や人々の暮らしや考え方、世界とまでいかずとも、友達や同世代の日常、一昔なら知ることもなかったであろう一般の人たちの日常や考え方の「一面」を簡単に知ることができるようになり、自分の中に薄っぺらな世界がどんどん広がっていっている。
そんな現代は、自分から遠くの世界や、人生の中で深く関わることもないような人の意見に翻弄され、自分の日常である半径5メートルをおろそかにしてしまうなんてことが多く起こっているんじゃないかと思う。
知らない他人を気にしている暇があるなら、もっと近くの大好きな人や自分のために生きて、半径5メートルを充実させたもの通しが融合し合い、世界を広げていくことのほうが、より楽しく充実した自分らしい人生を送れるんじゃないかと思える一冊でした。 -
初めてはあちゅうさんの本を読ませていただきました。
はあちゅうさんの考え方がよくわかり、どうやって困難や嫌がらせに対処してきたかなど自分の生活に取り入れられるものも多くありました。
また、所々で見せるはあちゅうさんの人間らしい感情や考えに触れることで、普通の人でも行動すればはあちゅうさんみたいになれるのではないかと思わせてくれます。
おもしろかったので一晩で読み終わりましたが、内容が濃すぎたために消化しきれていない部分もあります。
初めて、何度も読み返したいと思える本に出会えました。
おすすめです。 -
多分、古市憲寿の本で筆者の名前を知った。はあちゅうって、誰だよ?
そのあとで本書を本屋で見つけたので買ってみた。
ちきりんさんと同じ匂いを感じる。
一流企業からのインターネットを使った発信力で知名度を広げ、作家としても生きていけるマルチタレントな女性。
Twitterは炎上するし、批判も絶えない。
ちょっとネット検索してみると、すぐに批判的な記事が見つかった。
が、筆者が言うように、批判してるのも”本当にどうでもいい下らない連中”なんだろうなと思う。
本書では彼女がどのようにして今の立場を築いてきたかが書かれている。
目的を明確にした戦略と努力。
ただ、筆者ががむしゃらすぎて、常に勝ち続けなければならないというのは読んでいて、やはり俺とは相いれない。
それが資本主義的な、都会的だからだ。
六年前に東京を追い出されたという感覚が俺には未だに残ってる。
以来、都会の理論は好きじゃない。人を抱え込んでの生存競争に四苦八苦するのはバカバカしいじゃないか。
もちろん努力は必要だ。引っ張っていく突出したリーダーも必要だ。
ただそれは、誰かに任せる。俺じゃない。陰ながらがんばれ。
それにしても慶応大学出身者のマインドは、たんなるウェーイ系(主に早稲田)と違って、頭いいのかバカなのかわかんないとこあるよな。
あ、私?理科大なんつー陰キャ集団に任せられるものなんかあるわけないだろ。 -
自分が進むのをやめたら、進む人たちはどんどん先に行ってしまって置いてきぼりになってしまう。
世の中はイエスとノーを決めたがるけどグレーを開拓するのが楽しい(誰にも迷惑をかけなければ)
自分の人生はせいぜい半径5メートル以内。
だから夢はもっと自分本位でいい。
小さく湧いた欲望をもっと大事にして達成すればいいじゃない
自分には自分の半径5メートルを。 -
20161126