紫匂う (講談社文庫)

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  • 講談社 (2016年10月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784062934350

作品紹介・あらすじ

心極流の達人ながら、凡庸な勤めに留まる蔵太。二人の子供とともに穏やかに暮らす、その妻・澪。すれちがいの暮らしを送る澪の前に、一度だけ契りをかわした男・笙平があらわれる。側用人にまで出世したかつての想い人との再会に、澪の心は揺れる。今、ここで、心のままに生きられたなら――。直木賞作家が描く、人妻の恋。日本人の心が紡ぐ、美しく、哀しき恋。全国17紙に掲載された大人気連載!


義か情か。武士の妻の選ぶ道とは?

刀や槍を持たない女たちの武器は、愛であり、矜持であり、信念である。-大矢博子(書評家)

心極流の達人ながら、凡庸な勤めに留まる蔵太。二人の子供とともに穏やかに暮らす、その妻・澪。すれちがいの暮らしを送る澪の前に、一度だけ契りをかわした男・笙平があらわれる。側用人にまで出世したかつての想い人との再会に、澪の心は揺れる。今、ここで、心のままに生きられたなら――。直木賞作家が描く、人妻の恋。日本人の心が紡ぐ、美しく、哀しき恋。全国17紙に掲載された大人気連載がついに文庫化!

みんなの感想まとめ

心の揺れ動きと選択を描いた物語が織りなす、人妻の恋の深さと美しさが印象的です。主人公の澪は、穏やかな家庭を築いているものの、若き日の契りを交わした笙平との再会をきっかけに、心の内に秘めた想いが再燃しま...

感想・レビュー・書評

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  • 黒島藩シリーズ 2

    心極流の達人ではあるが、寡黙、朴念仁、凡庸を絵に描いたような、郡方勤めの夫、蔵太と、二人の子供と、理解のある、舅姑と、穏やかに暮らしていた澪の前に、結婚前に、一度だけ契りを交わした笙平が現れた。
    笙平は、藩内抗争に巻き込まれ、国許に送られる途中、逃亡したという。
    澪は、笙平を匿う決心をするが・・。

    惻隠の情。 「本当に、それだけなら良いけど」

  • 澪(みお)と幼馴染の笙平(しょうへい)、澪の夫で心極流剣術の逸物といわれる萩蔵太は、黒島藩六万石の政争の渦にに巻き込まれて行く物語と思って読んでいくと。澪は、若き頃に一度だけ契りを結んだ事のある笙平と誠実な夫との間で心が揺れ動く女心を書いた物語でした。

    国家老黒瀬宮内の不興を買い、罪人として国元黒島へ護送される途中に逃走した元江戸藩邸御側用人の葛西笙平は、若い頃の想いを胸に人妻となった澪と12年ぶりに会って澪への想いが募る。澪は、ただ一度だけ契りをかわした笙平への想いを胸に夫の蔵太に一言の相談もせず笙平を匿う。

    【読後】
    幼馴染みで、若い頃に一度だけ契りを結んだ笙平へ一途に突き進む澪であったが、夫のゆるぎない愛情に気がついて、この12年を振り返り夫への信頼と愛情に目覚めていく澪の心の動きを巧みに書いています。唯々、澪の揺れる女心にモヤモヤイライラさせられました。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【音読】
    2022年9月6日から12日まで、音読で葉室麟さんの「紫匂う」を大活字本で読みました。この大活字本の底本は、2016年10月に講談社文庫から発行された「紫匂う」です。本の登録は、講談社文庫で行います。埼玉福祉会発行の大活字本は、上下巻の2冊からなっています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    紫匂う
    2022.05埼玉福祉会発行。字の大きさは…大活字。
    2022.09.06~12音読で読了。★★★★☆
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • 澪の揺れる心と、雫亭に笙平を送り届ける危うい道のりにドキドキして一気読み。
    蔵太の器の大きさ、正しく強く優しい人柄ときたら、かっこよすぎた。
    解説に書かれていた、読者は格の違いに早々に気づくだろう、に納得。
    蔵太に大切にされて澪はなんて幸せなんだろう。
    澪が元彼に気持ちが浮つく浅い女じゃなくて良かったし、心の変化の描き方が秀逸だった。
    笙平は軽率なところがあるけど、ならば澪を娶りたいと主張すれば良かったのに。愛情に恵まれない彼が少し不憫。

    『螢草』も最高だったので、葉室麟の描く女性が戦う歴史小説はもっと読みたい。

  • すがすがしい読後感。
    おのれにとって最も大切だと思うものを心は寸分違わず知っている。わからぬこと、迷ったことは、わが心に問えばいい。
    澪の心の中にいたのは蔵太だった。ともに紫草を見ることができて本当によかった。日々の暮らしにある幸せを大事にしたいと思えた。

  • これまでの人生の岐路で選択に後悔していたり、選んだ道を疑問に思っている人。それは、恋愛や結婚の場合や、あるいは就職の際もあるだろう。
    そういう人に、是非読んでもらいたい作品である。
    実直な夫と暮らす人妻が、昔一度契りをかわした男が現れることで、男と夫との狭間で心が揺れ動く。
    通俗的な恋愛ドラマかのような設定だが、著者は夫に強靭な心を持ち度量の大きな武士を据えることで、清新清冽な作品に仕立て上げている。
    妻の危難に鮮やかに登場し、いささかも意志のブレを感じさせない夫に、妻もようやく心の在りところを見出す。
    著者は、この夫を読者にもまた惚れ惚れとさせるような漢(おとこ)に造型し、憎いばかりである。
    武士の矜持を持つ夫の言葉に、書き留めておきたい文言がいくつもある。
    「剣法に<一息の抜き>という教えがござる。何事も追いつめてはならぬ。一息だけ、隙間を空けておいた方がよいとの諭しでござろうか」
    「なに、ひとは皆、不心得者だ。自らにいたらぬところがあるとわかっておりながら懸命に努めるところに、ひとの生き様の清々しさがあるとわたしは思っている」
    「知恵を働かせようとすれば、迷いは深まるばかりだ。しかし、おのれにとってもっとも大切だと思うものを心は寸分違わず知っている、とわたしは信じている」
    取りも直さず、著者葉室麟氏の思いでもあるだろう。

  • 当初は主人公が自身の心を把握出来ずに戸惑い行動していたのが歯がゆく思っていたけれど、最後には立派な態度で凛々しかった。
    幼なじみに思うところがあるが、夫の静謐な佇まいが『蜩ノ記』を思い出させる。
    武人らしく泰然自若とした様が武士の鑑だなぁと思った。

  • 「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」につきる作品だと思えた。
    武士の生きざまと夫婦愛、人間愛に対する著者のブレのなさは、いのちの3部作、雨宮蔵人の生き方、人となり、夫婦関係と同様。

    主人公である澪は幼なじみの笙平に想いを残しながらも寡黙で実直な蔵太に嫁し穏やかな生活を送る中、夫の素朴な暖かさは感じる反面、武士としての美しさにかけると思ってしまい笙平と比べてしいる自分の気持ちに後ろめたさを感じている。
    が、夫婦と笙平に襲いかかる危機に立ち向かう夫に真の男、人間としての魅力を見出す。
    古い考えかもしれないが、恋愛結婚した夫婦と見合い結婚した夫婦の結婚後の人間関係の展開に似ているところはないだろうか。
    多くの恋愛結婚は二人の関係性が頂点に近いところから始まり、見合い結婚のそれはゼロに近いところからスタートし日々の生活をこなして行く過程で相手を理解して行く。そこで伴侶に光る魅力を見出すならばそこから愛情は二人で豊に育まれて行きそう。恋愛結婚の行手が右肩下がり一方と言うわけではないのですが。

  • 良かった
    「義か情か、武士の妻の選ぶ道」
    武士の生き様、矜持、夫婦愛を感じる物語。

    しかし、これ、現代劇で語られるとかなりドン引きのストーリだと思います(笑)

    主人公の澪は、寡黙な夫の蔵太とともに暮らしていますが、ある時、一度だけ契りを交わした幼馴染の笙平が現れます。
    実は笙平は藩内構想に巻き込まれ、逃亡中
    そんな笙平を匿う澪
    澪は笙平と蔵太の間で心が揺れます。
    しかし蔵太は澪を信じ、その逃亡劇をサポートします。
    澪、笙平、蔵太は逃れることができるのか?
    3人の関係はどうなる?
    という展開です。

    何よりも蔵太が素晴らしい。
    武士としての矜持、芯の太さ、ぶれない考えがしっかりと伝わってきます。
    その蔵太の想いにようやく自分の心の在りどころに気づく澪。最後、芯が通ります。
    で、どうしようもないのが笙平。
    この男どうなのよって感じです。

    最後は、落ち着くところに落ち着きます。
    読みどころは3人の逃亡劇と、蔵太の矜持、澪の人間としての成長?
    といったところでしょうか。

    お勧めです!

  • 葉室麟にはまって、はや何冊目だろうか。読者評価の比較的高い順に、そしてシリーズ物はまとめて読んできたが、質が落ちることがない。遅くに作家デビューし早逝されてしまったが、短い期間によくもこんなにたくさんの作品を残すことだできたのだろう。
    葉室麟といえば武士道を貫いた男を題材にしたものが多いが、女性を主人公にしたものも多い。本作も想いを寄せる男がいながら、朴念仁のような男に嫁ぎ一男一女を儲けてもなお昔の男に未練を残す女性が主人公である。ただ、この朴念仁がただものではない。郡方という役目のなかでは民人たちのことを考え、妻子に対しても深い慈愛がある。ただ妻である主人公は長年連れ添ってもそれに気づかない。昔の男の窮地に、後先考えずぬに助けようとして自ら窮地にはまってしまう。そんな妻を助ける朴念仁がすごい。そして実に懐が深い。映画もそうだが主役はもちろんのこと助演者が充実しているととてもいい作品になる。そういった意味では朴念仁に加え昔の男もいい役どころをこなしている。

  • 葉室麟の時代物はとても良い。素直に登場人物に感情移入できて、物語を堪能できる。女性が主人公なのでどうかと思ったが、全くの杞憂だった。面白い本、心が洗われるような読書をしたい時は葉室麟に限る(ちょっと前なら藤沢周平)。オススメ。

  • 葉室麟らしい清々しい登場人物が出てくる小説。
    しかし、その清々しい人物は主人公ではなく、その妻が主人公。

    結婚前に一度だけ契りあった、かつての男笙平が江戸を追われて国元に逃げ帰ってくる。笙平をかくまう主人公の澪。若き日の思いを清算しきれずにいる澪と笙平に敵の追手が迫りくるとき、澪の夫蔵太が現れる。武士の矜持と夫としての優しさを体現する蔵太を目の前にして、澪の心が次第におだやかになっていく。

    蔵太が理想、修正を行える澪もまた理想。しかし、笙平や彼を追う悪役のようなダークな部分を持って生きているのが現実。であるからこそ、蔵太のほれぼれする生き様を読んで、少しでも彼のように生きていこうと思うのである。

    今回も葉室小説に精神を洗われるような気持ちよさを感じた。

  • 初めから息詰まるような緊張感が続く。寝る前にはとても読めなかった。
    葉室麟さんの小説の常で、必ず成功するとわかっていても何度も窮地に陥りながらの長い長い道のりだった。

    夫婦とは、子育ての芯とは、家族のありようとは、女性の生きざまとは…など、感じることのとても多い作品だった。

    心から信じる相手がいることの強みを目の当たりにして、自分もそうありたいと思った。

  • ネタバレを嫌うので装丁から時代モノとわかるような本は手に取らなかったのだが、とりあえず読み始めた。身持ち軽そうな澪がむかし結婚に至らなかった男に思いを寄せる出だしなのだが、なんとなく藤沢周平っぽいようないい感じで、さらに夫の萩蔵太というのがなかなかの好男子で、全般的に読みやすい時代小説というところ。他の作品も読んでみたい。

  • 人生は長く豊かな時間を許されています
    男性の本当の優しさや大きさ寛容さを
    一組の夫婦がゆっくり教えてくれます

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    寡黙で実直な夫・蔵太と共に平穏に暮らす澪の前に、一度だけ契りをかわした幼馴染みの笙平が現れた。藩内抗争に巻き込まれ咎を受け逃亡した笙平を匿う澪に、朴念仁であるはずの夫は意外な優しさを見せる。武士の妻が持つべき義と交錯する想いに、二人の男の狭間でもがく澪。日本人の心性を問う傑作時代小説。

    令和元年7月23日~25日

  • 天の目に見守られたジェットコースターロマンスも無事着地、、。紫草の花の性根…蔵太、小一郎、由喜が白過ぎる♪。

  • 知恵を働かせようとすれば、迷いは深まるばかりだ。しかし、己にとって最も大切だと思うものを心は寸分違わず知っている、と私は信じておる
    わからんこと、迷った事は、我が心に問ばいい。その通りだ、と澪は思った

  • 一度契りを交わした過去の想い人が
    突然主人公の澪の前に現れ過去の思いと
    共に心が揺れる。
    誰もが過去を美化し一度はあの時別な人生があったのではないかと考えてしまう。
    過去の恋人を匿い危うい橋を渡る澪を
    寡黙ながらもすべて受け入れ、二人を救おうと
    する蔵太は懐が深い。
    この物語は過去を美化し、今ある幸せを
    見失わない様に澪に試練を与え自分の今ある
    本当の幸せを気付く物語だ。

  • 義か情か? 武士の妻の選ぶ道とは 

    寡黙な夫と平穏に暮らす澪の前に、契りを一度だけ交わした幼馴染が現れる。藩内抗争で咎を受け移送中に逃亡した幼馴染を澪は匿うが、刺客に囲まれ三人は窮地に陥る! 武士の妻が持つべき義を切々と描く傑作。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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