島はぼくらと (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2721
レビュー : 210
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934510

作品紹介・あらすじ

17歳。卒業までは一緒にいよう。
この島の別れの言葉は「行ってきます」。
きっと「おかえり」が待っているから。

瀬戸内海に浮かぶ島、冴島。朱里、衣花、源樹、新の四人は島の唯一の同級生。フェリーで本土の高校に通う彼らは卒業と同時に島を出る。ある日、四人は冴島に「幻の脚本」を探しにきたという見知らぬ青年に声をかけられる。淡い恋と友情、大人たちの覚悟。旅立ちの日はもうすぐ。別れるときは笑顔でいよう。

大人も子供も一生青春宣言!辻村深月の新たな代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 小中高、もしくは小中高大と階段を上っていく10代の青春。自分とは何かを知り、自分が何をなしていくべきかを、なりたい自分を探し求める時代。その中でどんな人と出会ったか、どんな人とどんな関わりを持ったかということはその後に続く人生に大きな意味を持つと思います。年齢が上がり、新たな出会いと、過去の出会いとの別れの繰り返し、そして大人になっていく僕たち。もし過去の出会いとの別ればかりで、新たな出会いが失われていくとしたら、それが本人の意思でなく、先祖代々続く家を守るという本人にとってどうしようもない理由によるものだったならどうでしょうか。この物語は島で網元の家の娘として、島に生まれ島に骨を埋めることを定められた衣花と、同級生・朱里、新、源樹の高校時代の島での生き様を紡ぐ物語。

    オーストラリアより小さい陸地を『島』と呼ぶ。日本には7000近い島があり、そのうち400あまりの島に人の暮らしがある。『砂浜に沿って輪郭を濃くはっきりと引いたような印象の、黒い島だ。火山の島だ』、この物語の舞台となる冴島は瀬戸内海に浮かぶ火山島。人口は三千人、子どもたちは中学卒業と同時にフェリーで本土の高校に通うしかない。『本土と島を繋ぐ最終便の直通フェリーは午後四時十分。そのせいで、島の子どもたちは部活に入れない』4人はそういった共通の事情もあって、高校生になってもその関係は益々濃く強くなっていきます。

    『冴島は、Iターン、Uターン、観光客含めて、大きさの割には人の出入りの多い島だ』過疎化に喘ぐ島が多い中、本土で暮らしたことのある大矢村長の巧みな政策で島の外からの流入者も増えた冴島。その島は『シングルマザーの島』とも呼ばれています。村長の政策もあって、この島で子育てをしようとする母親が子どもを連れて移り住みますが『似た立場だからこそ、結びついて助け合ったらいいと考えるのは理想論だ。同じ問題を抱えてはいても、内情が違うせいで、気持ちは一枚岩にはなれない。』となかなかに難しい状況も垣間見えます。物事はそう単純にはいきません。

    島の現実は厳しいものがあります。『高校を卒業すれば、新たちもまた、進学か就職で本土に渡ることになる。家業を継ぐか役場の職員にでもなる以外、島には仕事がないからだ。島の子どもは皆、いつかここを出て行くことを前提に育つ』仕事さえあれば人は必ずしも都会に住む必要はないはずです。今、新型コロナウイルスの流行により、テレワークを国が急に推奨し始めました。IT企業中心に自宅で仕事をする人たちの急増、通勤電車も空き、街にも人が少なくなる日々。通勤で如何に人生の時間を無駄に過ごしていたかがクローズアップされます。仕事とは時間と場所を拘束するもの。対価として給料をもらっている以上やむを得ないとは思いますが、場所を拘束する必要がなければ、この国の過疎化の問題はもう少し改善できる余地があるようにこの作品を読んで思いました。

    この作品、とても面白い構成がなされています。主人公は高校生の4人だということに異論のある人はいないと思います。実際、2組の淡い恋愛模様を背景に、高校生活、そして将来への不安、自我の芽生といったものが描かれていきます。この4人だけに注目すると「冷たい校舎の時は止まる」から始まった如何にも辻村さんらしい青春もの!という雰囲気満載です。でもこの作品ではそこにもう一つ階層が重なります。それは、同時期に書かれた「水底フェスタ」や「鍵のない夢を見る」に見られる沈鬱とした大人社会の影といった世界観です。この「島は」でもシングルマザーのこと、Iターン、Uターンしてくる人たちと元から島に住む人たちとの関係性、また狭い島社会の中に古くから潜在する家柄、慣習などあまり深入りしたくない大人社会の闇の世界が重なってきます。陽の光差す昼の世界と漆黒の夜の世界といった感じでしょうか。

    この作品では光は闇に打ち勝ちます。古い慣習に打ち勝つのではなく、古い慣習にも敬意を払いつつ、次の時代に繋がる光、次の未来に繋げる光が島に差し込みます。(最後の大きな場面で「スロウハイツの神様」のあの人が登場し、ある意味美味しいところを全部持っていきます。この作品の前に「スロウ」を読んでいないと、何この人!と不快な気持ちになる懸念もありますので読む順番には気を付けましょう。)いずれにしても、辻村さんを読んできた読者にはとても嬉しいご褒美が光の勝利を後押しします。とても爽やかな読後感です。辻村さんは、この「島は」を書かれた時期に、「水底フェスタ」という作品も書かれています。同じような時期、同じようなページ数、そして山村と島村という違いはあれど、村社会の今を取り上げた内容も同じです。でも印象は随分と異なります。この「島が」が輝き、「水底」が闇から抜け出せないのは、主人公の人との繋がり、そしてそれを信じて前を向いていく生き様が「島は」では強く印象に残るからだと思います。だから、最後のシーンに強い説得力と感動が訪れるのだと思います。

    この作品では、辻村さんの美しい自然の描写も光ります。『海の上を見上げると、誰かが空に指を入れて泡立てたような雲が、遮るもののない視界いっぱいに続いていた。その合間を、飛行機雲が一筋、通っている』といった瀬戸内海の美しい島の魅力を、読書の想像力を目一杯かき立てながら丁寧に描かれていたのもとても印象に残りました。

    温かで優しさに満ち溢れた気持ちにさせてくれる、とても爽やかな印象の中、スッキリと読み終えることのできた作品でした。

  • 青春・友情・自然・家族愛

    青春(恋愛要素は少なく、友情がメイン)のキラキラしたお話。小さな島のきれいな景色が広がります。
    伏線が最後回収され、終わり方がなんとも言えない不思議な気持ちになりました。

  • 島での生活…早い時期に親から離れて暮らすこと、悪口言った相手と翌日には何事もなかったかのように話すことなど…そこで生活している人にしか分からない生活文化がある。
    子どもが熱を出しても船に乗らなければ医者に診てもらえない、帰りの船の時間があるから部活に入れない…それでも島の生活を愛している。
    高校生の淡い恋がからんだ青春モノでもあり、島ドキュメンタリーのようでもある。2018.12.6

  • 物語に浸っている時も、読後も爽やかな雰囲気で楽しめる作品でした。
    霧島氏のくだりではヒヤッとしたけれど、新が深く気に止めず、自分の未来の方角を決めるエピソードになってくれてほっとしました。
    何より、自分の手柄なのに!とならない新に尊敬です。
    新の演劇への思いを感じ取っている衣花の場面も胸が熱くなりました。

    "脚本"だから、環が出てきたら良いのに~!と思っていたけれど、なかなか出てこないから本作では出ないのか残念と諦めていたら、終盤にまさかまさかで!!
    嬉しかった~!
    環から嬉しい言葉も聞けて思わず、わあー!と声をあげてしまったほどです。笑

    朱里と源樹が気になりつつ終わったので、別のところで大人になった二人が見られるのかなと祈ります。

  • 2017/03/13
    島で暮らす人、島にやって来た人、島から出て行く人たちがそれぞれの過去や思いを持って、島の人々と関わり合いながら生活しているお話。ちょっと前だったら、美しい生き方だけど、自分にはできない、この高校生4人のことを羨ましいなって思ってただろう。だけど、今、大きな失敗をして、多くの人に責められて傷ついて、そんな時に私のことを心配してくれる人や普段と変わらずに連絡をくれる友人のお陰で、私も今繋がりのある人々との関係を今以上に大切にしていきたいと感じた。強がりな衣花が、幼馴染3人の前で号泣して自分の気持ちを伝えたところで私も泣いてしまった。今読めてよかった。

  • ー「おかえり」のために「行ってらっしゃい」がある。

    瀬戸内海に位置する冴島。島には中学校までしかなく、高校へ通うのにはフェリーに乗って本土まで行かねばならない。島で4人の同級生の朱里、衣香、新、源樹は毎日フェリーで高校へ通う。中学校までしかない島からは、いつか子どもたちは「卒業」していく。
    いつまでも一緒なわけじゃない。だけど、島はいつだって「おかえり」と言ってくれる場所であり続ける。


    ものすごくいいお話でした、、、。
    実は辻村深月さんの本は「鍵のない夢を見る」しか読んだことなくて、正直(良い意味で)後味の悪い感じだったので、こんなに良い話が読めるなんて……辻村深月さんハマりそうです!笑

    島って、個人的にすごく憧れがあります。
    友人が島育ちで、島にしかないコミュニティと、身近な自然と、信じられないくらい素直な性格で、わー島で育つのいいなぁ〜と思ってました。
    青春のきらめきが散りばめられていて、かつ思いやりに溢れる島民のおばちゃんたちや朱里たち、、もう拍手喝采です!!笑
    島への憧れがまた増長しちゃいました、、、

    「好きなことをやるためには、好きじゃないこともたくさんやった方がいい。無駄と思えることも」
    という一文があって、これを言える大人ってめっちゃかっこいい!
    好きなこと、できること、お金になることが全部合わさったら「天職」と言われていますが、そのためには惜しみない努力が必要ですね、、

    読了後には、きらきらの水面を滑ってやってくるフェリーが見えるようで、本当に清々しい気持ちになれました。

  • 島に住む幼なじみの高校生男女4人の話

    こういう話好き。
    そして、憧れる。
    幼なじみ同士の友情に恋愛。
    そして、島を出る進路。
    この4人の話を軸に島に住む色々な人たちの話も凄く惹かれる。

    本のタイトルの意味も読んでいくとわかってくる。

    島の人たちの温かさが伝わってくる内容でした。

  • 瀬戸内海に浮かぶ島、冴島に住む4人の高校生の日常を中心とした物語。
     
    地方の島に『幻の脚本』を求めてやってきた売れない脚本家や元オリンピックメダリストにしてシングルマザー、国土交通省からきたコミュニティデザイナーのヨシノ等々、Iターンを推奨する島にはいろいろな人がやってくる。
    やがて島を出ていく運命の学生たちとIターンで島にやってくる人々の暖かい交流。
     
    最後の『碧子さん』の話はちょっと辻村深月っぽくない強引な展開が続いていまいちですが、『鏡の孤城』に繋がるような悩みを抱える若者たちの描写はやっぱり上手いな~と思えます。
     
    終盤がだれちゃったので☆3つにするか4つにするか迷いましたが、辻村さんの文章が好きなので、おまけの☆4つ。
    辻村ファンは読んでおいて損はない作品です。

  • 辻村作品の中でも好きな一冊です。
    大人の仲間入り一歩前の高校生だけど、子どもには伝えられない大人の事情がある。黒とも白ともつかないグレーな事情に、聡い子どもと鈍い子ども。大人になるのが早い子と、のんびりな子。
    ふと大人の不穏な雰囲気を察した時の不安感がリアルで、ぞわっとした。
    でも、複雑な感情を携えて、一緒に乗り越えていく仲間が彼らにはいる。
    最後はハッピーエンドで、優しい結末でよかった。

  • 火山がある瀬戸内の架空の島が舞台。
    一日4便のフェリーで通学男女4人同級高校生
    島起こしを手伝うコーディネーター
    訳あって地元を離れてやって来た新住民。
    田舎の男尊女卑よそ者へのわだかまりなどの閉鎖性さえも島の青い透明感で陰湿になってません。
    後半にはあの新進気鋭脚本家も登場。
    私は北の暗い日本海側で育ったので転勤先の瀬戸内の青さにいつも元気を貰ってました。

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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