島はぼくらと (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934510

作品紹介・あらすじ

17歳。卒業までは一緒にいよう。
この島の別れの言葉は「行ってきます」。
きっと「おかえり」が待っているから。

瀬戸内海に浮かぶ島、冴島。朱里、衣花、源樹、新の四人は島の唯一の同級生。フェリーで本土の高校に通う彼らは卒業と同時に島を出る。ある日、四人は冴島に「幻の脚本」を探しにきたという見知らぬ青年に声をかけられる。淡い恋と友情、大人たちの覚悟。旅立ちの日はもうすぐ。別れるときは笑顔でいよう。

大人も子供も一生青春宣言!辻村深月の新たな代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 私の大好きな作家さんである辻村深月さんの作品ということで、本作も懐古がてら読了しました。個人的には、小さな田舎町の出身であったため、こうした地方創生とコミュニティの話は少しリアリティをもって読むことが出来たのかなと思います。

    本作は小さな島、冴島に住む4人の高校生の物語。その島は先住民の方だけでなく、都会の喧騒から逃れて働くためにやってくる人も多い。そんな島の中で、テレビ撮影や不審な青年の登場など色々な出来事が起こります。その度に4人の高校生たちは考え、島についての理解を深めるとともに、青春を謳歌するというストーリー。

    不勉強だったもので本作を読むまでは「Iターン」という言葉を知りませんでした。一応、「Iターン」とは就職を目的に首都圏から地方都市へ移住する言葉を指し、類義語として「Uターン」や「Jターン」があります。

    田舎ならではのコミュニティ感や、余所者が村八分にされがちなところもしっかり描写されている中で、コミュニティ外から来た人でも上手くコミュニケーションの輪の中に入っていける描写があったのは良かったように思います。

    個人的には、ヨシノさんとフキコさんのお話が心痛む場面もありつつ、グッとくるものがありました。

  • 個性豊かな高校生達が、友達への優しさや、大人の世界へ足を踏み入れようと思ったら、思っている以上に複雑だったり、淡い恋があったり、読んでて楽しい。

    源樹が五歳のころ両親が離婚し、島を離れる母についていくか、島に残る父のもとに残るか判断を迫られた。
    五歳にとって厳しすぎる決断だったと思うが、その時に幼馴染みの朱里から泣きながら「兄弟になろう」と言われ、嬉しくって「こいつのそばで暮らしたいと思った」って、かっこいい。

    また、島の会社の「さえじま」がテレビの取材を受ける話がこじれ、最終的に断ることになった。蕗子が「村長たちに負けてもいいのか」と言うと明実が「蕗子がテレビに映って昔の事がぶり返すのが嫌だったから断ったら清々する」と言った優しさ。

    自分の周りには見られない優しさに溢れた物語です。

  • 小中高、もしくは小中高大と階段を上っていく10代の青春。自分とは何かを知り、自分が何をなしていくべきかを、なりたい自分を探し求める時代。その中でどんな人と出会ったか、どんな人とどんな関わりを持ったかということはその後に続く人生に大きな意味を持つと思います。年齢が上がり、新たな出会いと、過去の出会いとの別れの繰り返し、そして大人になっていく僕たち。もし過去の出会いとの別ればかりで、新たな出会いが失われていくとしたら、それが本人の意思でなく、先祖代々続く家を守るという本人にとってどうしようもない理由によるものだったならどうでしょうか。この物語は島で網元の家の娘として、島に生まれ島に骨を埋めることを定められた衣花と、同級生・朱里、新、源樹の高校時代の島での生き様を紡ぐ物語。

    オーストラリアより小さい陸地を『島』と呼ぶ。日本には7000近い島があり、そのうち400あまりの島に人の暮らしがある。『砂浜に沿って輪郭を濃くはっきりと引いたような印象の、黒い島だ。火山の島だ』、この物語の舞台となる冴島は瀬戸内海に浮かぶ火山島。人口は三千人、子どもたちは中学卒業と同時にフェリーで本土の高校に通うしかない。『本土と島を繋ぐ最終便の直通フェリーは午後四時十分。そのせいで、島の子どもたちは部活に入れない』4人はそういった共通の事情もあって、高校生になってもその関係は益々濃く強くなっていきます。

    『冴島は、Iターン、Uターン、観光客含めて、大きさの割には人の出入りの多い島だ』過疎化に喘ぐ島が多い中、本土で暮らしたことのある大矢村長の巧みな政策で島の外からの流入者も増えた冴島。その島は『シングルマザーの島』とも呼ばれています。村長の政策もあって、この島で子育てをしようとする母親が子どもを連れて移り住みますが『似た立場だからこそ、結びついて助け合ったらいいと考えるのは理想論だ。同じ問題を抱えてはいても、内情が違うせいで、気持ちは一枚岩にはなれない。』となかなかに難しい状況も垣間見えます。物事はそう単純にはいきません。

    島の現実は厳しいものがあります。『高校を卒業すれば、新たちもまた、進学か就職で本土に渡ることになる。家業を継ぐか役場の職員にでもなる以外、島には仕事がないからだ。島の子どもは皆、いつかここを出て行くことを前提に育つ』仕事さえあれば人は必ずしも都会に住む必要はないはずです。今、新型コロナウイルスの流行により、テレワークを国が急に推奨し始めました。IT企業中心に自宅で仕事をする人たちの急増、通勤電車も空き、街にも人が少なくなる日々。通勤で如何に人生の時間を無駄に過ごしていたかがクローズアップされます。仕事とは時間と場所を拘束するもの。対価として給料をもらっている以上やむを得ないとは思いますが、場所を拘束する必要がなければ、この国の過疎化の問題はもう少し改善できる余地があるようにこの作品を読んで思いました。

    この作品、とても面白い構成がなされています。主人公は高校生の4人だということに異論のある人はいないと思います。実際、2組の淡い恋愛模様を背景に、高校生活、そして将来への不安、自我の芽生といったものが描かれていきます。この4人だけに注目すると「冷たい校舎の時は止まる」から始まった如何にも辻村さんらしい青春もの!という雰囲気満載です。でもこの作品ではそこにもう一つ階層が重なります。それは、同時期に書かれた「水底フェスタ」や「鍵のない夢を見る」に見られる沈鬱とした大人社会の影といった世界観です。この「島は」でもシングルマザーのこと、Iターン、Uターンしてくる人たちと元から島に住む人たちとの関係性、また狭い島社会の中に古くから潜在する家柄、慣習などあまり深入りしたくない大人社会の闇の世界が重なってきます。陽の光差す昼の世界と漆黒の夜の世界といった感じでしょうか。

    この作品では光は闇に打ち勝ちます。古い慣習に打ち勝つのではなく、古い慣習にも敬意を払いつつ、次の時代に繋がる光、次の未来に繋げる光が島に差し込みます。(最後の大きな場面で「スロウハイツの神様」のあの人が登場し、ある意味美味しいところを全部持っていきます。この作品の前に「スロウ」を読んでいないと、何この人!と不快な気持ちになる懸念もありますので読む順番には気を付けましょう。)いずれにしても、辻村さんを読んできた読者にはとても嬉しいご褒美が光の勝利を後押しします。とても爽やかな読後感です。辻村さんは、この「島は」を書かれた時期に、「水底フェスタ」という作品も書かれています。同じような時期、同じようなページ数、そして山村と島村という違いはあれど、村社会の今を取り上げた内容も同じです。でも印象は随分と異なります。この「島が」が輝き、「水底」が闇から抜け出せないのは、主人公の人との繋がり、そしてそれを信じて前を向いていく生き様が「島は」では強く印象に残るからだと思います。だから、最後のシーンに強い説得力と感動が訪れるのだと思います。

    この作品では、辻村さんの美しい自然の描写も光ります。『海の上を見上げると、誰かが空に指を入れて泡立てたような雲が、遮るもののない視界いっぱいに続いていた。その合間を、飛行機雲が一筋、通っている』といった瀬戸内海の美しい島の魅力を、読書の想像力を目一杯かき立てながら丁寧に描かれていたのもとても印象に残りました。

    温かで優しさに満ち溢れた気持ちにさせてくれる、とても爽やかな印象の中、スッキリと読み終えることのできた作品でした。

  • 瀬戸内海に浮かぶ人口三千人弱の島、冴島。
    本土の高校に通う朱里、衣花、新、源樹の同級生4人。
    瀬戸内の輝く海が太陽を反射してきらきらと揺れている、そんな情景を始終思い浮かべながら読みました。

    島の元からの住民と、島にIターンとしてやって来た人たちがうまく溶け合って、島を盛り上げている。
    最初はこの島を、たとえ逃げ場として選んだとしても、島には自分たちを必要としてくれる人たちがいる。
    こんな、都会にはない瑞々しい風景が新鮮で、読んでいて心が温かくなります。

    島に伝わる幻の脚本の謎が解き明かされる一件は、はらはらドキドキのしっぱなしで、性格も育った家庭環境も違う4人の友情が羨ましくなりました。
    それぞれの進路、夢に向かって逞しく生きる4人に胸が熱くなります。
    そして爽やかな読後感。
    晴れやかな気持ちになれて、よかったです。

  • 2023.8.10 読了 8.2/10.0


    辻村深月さんの自身4作目の本書
    かなりボリュームがあり、地方の島を舞台にした様々な問題を濃密かつ厚みのあるタッチで描いています。

    その中でもミステリー作家たる故に読み手を惹きつけるストーリーテリングはお手のものです。

    ただ、自分の読解力と忍耐力の無さが問題でしかないのだけど、その描いている問題が様々にありすぎて、自分は消化不良を起こしてしまいました。。。

    村の生き残りのためのIターンやUターンの取り込み、シングルマザーへの手厚い支援、地域産業の再生を担うコミュニティデザイナーの存在と奔走、母子手帳の取り組み、島の人々の親密さ、子どもたちの進路の問題や医者の不在、さらには兄弟の契りの風習、綱元と地域の人々の関係性、過去の火山噴火の災害などなど…
    その土地ならではの様相や現実を多角的に描いていて本当にお見事としか言いようがないのだが、そのボリュームに眩暈がしてしまいそうでした。
    でもそれらを通じて島や過疎地域の現実を垣間見て、感じることは多々ありました。

    この本は、地方を肯定的に描いていて、だけど単なる田舎暮らし礼賛、故郷バンザイの話ではなく、故郷とは何か、そこに生きるとはどういうことか、を深く考えさせられる。

    すべてのことはいつまでも同じではないし、人間同士もいつまでも一緒ではない。あらゆるものは移ろい、変わっていく。そのことが悲観的に描かれているわけではない。

    大好きな土地、大好きな人たちから離れてしまうのはもちろん寂しい。
    だけど、互いに変わっていくからこそ、互いの良さや魅力を改めて知ることができるし、新しい関係を築いていける。

    "変化というものは、未来への架け橋になり得るものである"


    改めて、辻村深月さんの作品をもっと読みたくなった。

  • ブックデザインを見て、島で暮らす若者の青春小説かな?と思い読み始めた。Uターン、Iターン、田舎暮らし…価値観が多様化している現在、様々な人達がYouTuberとなり、そんな暮らしを動画発信もされていてなかなか興味深い。しかしこの小説には、様々なテーマがあちらこちらに隠れていて、奥が深い。オリンピックのメダリストだった蕗子さんのお話一つとっても《人が乗っかるのは栄誉だけではない。人間は、自分の物語を作るためなら、なんにでも意味を見る》と言う件があったが、まさに自分の心の中にもそれは潜んでいるかもしれない。登場人物の人となりがわかりやすくとても読みやすい。思いがけず涙が出てしまう箇所もある。

  • 島、海、高校生。もうすでにキラキラで眩しい。
    表情を使い分けられる大人との対比で、さらに高校生の純粋さが際立って眩しい。
    私が随分歳を重ねた大人になったから、そう思えるんだろうけど。

    高校に通う年齢の当事者たちは、未来に対してすごく迷ったり悩んだりするから、当然自分の心に反して苦しい時も多々あると思う。でもね!その悩んだ経験が、必ず何か先に繋がるんだよ。

    それがおばちゃんには眩しい!羨ましい!
    すごい陰から応援するよ、後悔なきよう頑張れ!

  • 島の住民
    Iターン
    兄弟の契り
    幻の脚本
    いってらっしゃい


    人を動かすには若すぎて歯痒さばかりがつのる
    そんな想いがひしひしと感じられる作品
    ラストに向けてやっぱり泣かされた
    終盤にあの人が出てきます
    思わず「キターッ!」叫びそうに

    • アンシロさん
      あこあこさん、おはようございます。

      島の温かい穏やかなイメージは一部であって、島が抱える問題が多くある事をこの作品から学びました。

      フェ...
      あこあこさん、おはようございます。

      島の温かい穏やかなイメージは一部であって、島が抱える問題が多くある事をこの作品から学びました。

      フェリーのある日常、そこを通しての出会いや別れ…「いってらっしゃい」が素敵でした。『かがみの孤城』の次にこちらを読んで、辻村深月さんが好きになりました!
      2023/10/22
  • 読友さんの辻村深月作品イチオシ。「さわやかで嬉しくなるラスト」という言葉通り、気持ちの良い読後感がありました。ありがとうございます!

    こういう小さな島で生まれ育つのって、ちょっと憧れます。メインの高校生4人、それに島の人々の結びつき…海に囲まれた島の様子が目の前に浮かぶようでした。

    • アールグレイさん
      私は読んでないのですが、「カエルの小指」もいいとか?
      もうお休み(-_-)zzz
      私は読んでないのですが、「カエルの小指」もいいとか?
      もうお休み(-_-)zzz
      2021/06/17
    • koalajさん
      ゆうママさん
      あっ勘違いでした!私が読んだのは「カエルの小指」の方でした。
      ゆうママさん
      あっ勘違いでした!私が読んだのは「カエルの小指」の方でした。
      2021/06/17
    • アールグレイさん
      昨夜はどうもです!
      11時過ぎにコメントを送ったことをお許し下さい。
      m(__)m返信なしでいいですからね。
      「カエル・・・」「カラス・・・...
      昨夜はどうもです!
      11時過ぎにコメントを送ったことをお許し下さい。
      m(__)m返信なしでいいですからね。
      「カエル・・・」「カラス・・・」カラスが先ですねぇ。でも、(・_・?)ああ、あのことだ、みたいな感じに楽しむことができますね。
      「私にふさわしいホテル」は、お話したかしら?さてさてさんのお薦め本。大分前ですが、さてさてさんにコメントの中でお聞きして、この本を教えて下さいました。面白いですよ~ 楽しむ本です。よろしかったら、読んでみて下さい。
      「琥珀の夏」:(ノД:`):・
      図書館予約戦争でした。
      土曜日、取り扱い未定
      日曜日の夕方、なんと34番目!日曜日だったからアクセスした人が多かったんだと思う。34番目なんて、琥珀の冬か春になってしまう。
      (>_<)
      2021/06/18
  • 今まで読んだ中で1番ホワイト辻村さんだった気がする。多くの若者は大学進学とともに島を出る、冴島での4人の高校生を主軸にした青春群像劇。
    スロウハイツの神様·傲慢と善良読了済だったので、ヨシノさんが出てきてほわっとし、環さんが出てきて歓喜。
    島ならではの人間関係の濃密さ、そこから生まれる良さも問題も、鮮やかに描かれていてサクサク読める。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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