- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062934510
作品紹介・あらすじ
17歳。卒業までは一緒にいよう。
この島の別れの言葉は「行ってきます」。
きっと「おかえり」が待っているから。
瀬戸内海に浮かぶ島、冴島。朱里、衣花、源樹、新の四人は島の唯一の同級生。フェリーで本土の高校に通う彼らは卒業と同時に島を出る。ある日、四人は冴島に「幻の脚本」を探しにきたという見知らぬ青年に声をかけられる。淡い恋と友情、大人たちの覚悟。旅立ちの日はもうすぐ。別れるときは笑顔でいよう。
大人も子供も一生青春宣言!辻村深月の新たな代表作。
感想・レビュー・書評
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個性豊かな高校生達が、友達への優しさや、大人の世界へ足を踏み入れようと思ったら、思っている以上に複雑だったり、淡い恋があったり、読んでて楽しい。
源樹が五歳のころ両親が離婚し、島を離れる母についていくか、島に残る父のもとに残るか判断を迫られた。
五歳にとって厳しすぎる決断だったと思うが、その時に幼馴染みの朱里から泣きながら「兄弟になろう」と言われ、嬉しくって「こいつのそばで暮らしたいと思った」って、かっこいい。
また、島の会社の「さえじま」がテレビの取材を受ける話がこじれ、最終的に断ることになった。蕗子が「村長たちに負けてもいいのか」と言うと明実が「蕗子がテレビに映って昔の事がぶり返すのが嫌だったから断ったら清々する」と言った優しさ。
自分の周りには見られない優しさに溢れた物語です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小中高、もしくは小中高大と階段を上っていく10代の青春。自分とは何かを知り、自分が何をなしていくべきかを、なりたい自分を探し求める時代。その中でどんな人と出会ったか、どんな人とどんな関わりを持ったかということはその後に続く人生に大きな意味を持つと思います。年齢が上がり、新たな出会いと、過去の出会いとの別れの繰り返し、そして大人になっていく僕たち。もし過去の出会いとの別ればかりで、新たな出会いが失われていくとしたら、それが本人の意思でなく、先祖代々続く家を守るという本人にとってどうしようもない理由によるものだったならどうでしょうか。この物語は島で網元の家の娘として、島に生まれ島に骨を埋めることを定められた衣花と、同級生・朱里、新、源樹の高校時代の島での生き様を紡ぐ物語。
オーストラリアより小さい陸地を『島』と呼ぶ。日本には7000近い島があり、そのうち400あまりの島に人の暮らしがある。『砂浜に沿って輪郭を濃くはっきりと引いたような印象の、黒い島だ。火山の島だ』、この物語の舞台となる冴島は瀬戸内海に浮かぶ火山島。人口は三千人、子どもたちは中学卒業と同時にフェリーで本土の高校に通うしかない。『本土と島を繋ぐ最終便の直通フェリーは午後四時十分。そのせいで、島の子どもたちは部活に入れない』4人はそういった共通の事情もあって、高校生になってもその関係は益々濃く強くなっていきます。
『冴島は、Iターン、Uターン、観光客含めて、大きさの割には人の出入りの多い島だ』過疎化に喘ぐ島が多い中、本土で暮らしたことのある大矢村長の巧みな政策で島の外からの流入者も増えた冴島。その島は『シングルマザーの島』とも呼ばれています。村長の政策もあって、この島で子育てをしようとする母親が子どもを連れて移り住みますが『似た立場だからこそ、結びついて助け合ったらいいと考えるのは理想論だ。同じ問題を抱えてはいても、内情が違うせいで、気持ちは一枚岩にはなれない。』となかなかに難しい状況も垣間見えます。物事はそう単純にはいきません。
島の現実は厳しいものがあります。『高校を卒業すれば、新たちもまた、進学か就職で本土に渡ることになる。家業を継ぐか役場の職員にでもなる以外、島には仕事がないからだ。島の子どもは皆、いつかここを出て行くことを前提に育つ』仕事さえあれば人は必ずしも都会に住む必要はないはずです。今、新型コロナウイルスの流行により、テレワークを国が急に推奨し始めました。IT企業中心に自宅で仕事をする人たちの急増、通勤電車も空き、街にも人が少なくなる日々。通勤で如何に人生の時間を無駄に過ごしていたかがクローズアップされます。仕事とは時間と場所を拘束するもの。対価として給料をもらっている以上やむを得ないとは思いますが、場所を拘束する必要がなければ、この国の過疎化の問題はもう少し改善できる余地があるようにこの作品を読んで思いました。
この作品、とても面白い構成がなされています。主人公は高校生の4人だということに異論のある人はいないと思います。実際、2組の淡い恋愛模様を背景に、高校生活、そして将来への不安、自我の芽生といったものが描かれていきます。この4人だけに注目すると「冷たい校舎の時は止まる」から始まった如何にも辻村さんらしい青春もの!という雰囲気満載です。でもこの作品ではそこにもう一つ階層が重なります。それは、同時期に書かれた「水底フェスタ」や「鍵のない夢を見る」に見られる沈鬱とした大人社会の影といった世界観です。この「島は」でもシングルマザーのこと、Iターン、Uターンしてくる人たちと元から島に住む人たちとの関係性、また狭い島社会の中に古くから潜在する家柄、慣習などあまり深入りしたくない大人社会の闇の世界が重なってきます。陽の光差す昼の世界と漆黒の夜の世界といった感じでしょうか。
この作品では光は闇に打ち勝ちます。古い慣習に打ち勝つのではなく、古い慣習にも敬意を払いつつ、次の時代に繋がる光、次の未来に繋げる光が島に差し込みます。(最後の大きな場面で「スロウハイツの神様」のあの人が登場し、ある意味美味しいところを全部持っていきます。この作品の前に「スロウ」を読んでいないと、何この人!と不快な気持ちになる懸念もありますので読む順番には気を付けましょう。)いずれにしても、辻村さんを読んできた読者にはとても嬉しいご褒美が光の勝利を後押しします。とても爽やかな読後感です。辻村さんは、この「島は」を書かれた時期に、「水底フェスタ」という作品も書かれています。同じような時期、同じようなページ数、そして山村と島村という違いはあれど、村社会の今を取り上げた内容も同じです。でも印象は随分と異なります。この「島が」が輝き、「水底」が闇から抜け出せないのは、主人公の人との繋がり、そしてそれを信じて前を向いていく生き様が「島は」では強く印象に残るからだと思います。だから、最後のシーンに強い説得力と感動が訪れるのだと思います。
この作品では、辻村さんの美しい自然の描写も光ります。『海の上を見上げると、誰かが空に指を入れて泡立てたような雲が、遮るもののない視界いっぱいに続いていた。その合間を、飛行機雲が一筋、通っている』といった瀬戸内海の美しい島の魅力を、読書の想像力を目一杯かき立てながら丁寧に描かれていたのもとても印象に残りました。
温かで優しさに満ち溢れた気持ちにさせてくれる、とても爽やかな印象の中、スッキリと読み終えることのできた作品でした。 -
瀬戸内海に浮かぶ人口三千人弱の島、冴島。
本土の高校に通う朱里、衣花、新、源樹の同級生4人。
瀬戸内の輝く海が太陽を反射してきらきらと揺れている、そんな情景を始終思い浮かべながら読みました。
島の元からの住民と、島にIターンとしてやって来た人たちがうまく溶け合って、島を盛り上げている。
最初はこの島を、たとえ逃げ場として選んだとしても、島には自分たちを必要としてくれる人たちがいる。
こんな、都会にはない瑞々しい風景が新鮮で、読んでいて心が温かくなります。
島に伝わる幻の脚本の謎が解き明かされる一件は、はらはらドキドキのしっぱなしで、性格も育った家庭環境も違う4人の友情が羨ましくなりました。
それぞれの進路、夢に向かって逞しく生きる4人に胸が熱くなります。
そして爽やかな読後感。
晴れやかな気持ちになれて、よかったです。 -
読友さんの辻村深月作品イチオシ。「さわやかで嬉しくなるラスト」という言葉通り、気持ちの良い読後感がありました。ありがとうございます!
こういう小さな島で生まれ育つのって、ちょっと憧れます。メインの高校生4人、それに島の人々の結びつき…海に囲まれた島の様子が目の前に浮かぶようでした。-
2021/06/17
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2021/06/17
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昨夜はどうもです!
11時過ぎにコメントを送ったことをお許し下さい。
m(__)m返信なしでいいですからね。
「カエル・・・」「カラス・・・...昨夜はどうもです!
11時過ぎにコメントを送ったことをお許し下さい。
m(__)m返信なしでいいですからね。
「カエル・・・」「カラス・・・」カラスが先ですねぇ。でも、(・_・?)ああ、あのことだ、みたいな感じに楽しむことができますね。
「私にふさわしいホテル」は、お話したかしら?さてさてさんのお薦め本。大分前ですが、さてさてさんにコメントの中でお聞きして、この本を教えて下さいました。面白いですよ~ 楽しむ本です。よろしかったら、読んでみて下さい。
「琥珀の夏」:(ノД:`):・
図書館予約戦争でした。
土曜日、取り扱い未定
日曜日の夕方、なんと34番目!日曜日だったからアクセスした人が多かったんだと思う。34番目なんて、琥珀の冬か春になってしまう。
(>_<)2021/06/18
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またしても辻村ワールドにはまってしまった。
登場人物4人のそれぞれの視点から描かれているのは、わかりやすい。
人口の増減と人間関係の濃さは反比例すると聞いたことがあるが、島の人間関係は家族のような親密さと、逆に煩わしさもある。
どちらがいいということではなく、それを受け入れながら成長していく高校生たち。
島に残る運命の網元の娘衣花と、進学して島を出て行く朱里達。
最後は泣きました。
『兄弟』の契り、いいなぁ。
後半、辻村さんのあの作品のあの人!が登場して嬉しくなります笑 -
青い空、広く澄んだ海、でも島の人々は
それが当たり前なのでしょう。
生活の不便さも、みんなひっくるめて
それぞれに、良さがあるのかも知れ
ません。
主人公は、4人の高校生。
4人は本土の高校へと、フェリーで登下校をする。だから、部活はできない。
島の大人たちは、様々な人間関係を繰り広げている。
修学旅行の場面も、また面白い。途中で
抜け出て・・・・そんなことできる?と思うが、4人には訪ね人がいた・・・・
島の子どもは、学校を卒業するとほとんどが島を旅立つ。だから、親の子育てはそれで終わりだという。親はそれを承知で、可愛い我が子を育てあげる。
・・・・私には考えられない。
ただ一つ、網元の子供は島を出てはならない、という決まりがあった。
4人の中に、網元の娘がいた。それぞれ皆将来について、悩み、迷い、大学のこと等を話し合う。網元の娘は自分の立場を思い、葛藤する。
さぞかし、島を出て自分の可能性を試してみたかったのではないだろうか。
そして、とうとう皆の前で感情を爆発させ号泣してしまう・・・・・
この場面で、涙してしまった。
丁度、息子が高校生の時に読んだ本で
どこの大学に進むか、将来はどういう
職種に進めるか、などを考え始めた頃だった記憶がある。
ラストはとてもびっくりさせられ、
「え~っ」と声に出してしまった。この言葉は、嬉しさの籠もった「え~っ」で
同じ場面を何度も繰り返し読んでしまい
ました。さわやかで、読者にとってうれしくなる終わり方でした。
辻村深月さん、ありがとう!
この本は辻村深月作品の中で、
私の一番のお気に入りです。-
ゆうママさん、いま読み終わりました!ラストはほんとにさわやかな読後感が残りますね。良かったです〜。
昨夜は単になかなか寝つけなくて、スマホを...ゆうママさん、いま読み終わりました!ラストはほんとにさわやかな読後感が残りますね。良かったです〜。
昨夜は単になかなか寝つけなくて、スマホを何気なくのぞいたら、ゆうママさんのコメントがきていたんです。起こされちゃったわけではないので全然気にしなくていいですよー。三浦しをんさんの「風が強く…」お薦めですね、近いうち読んでみます!私は図書館派なんですが「お気に入り」に登録してる本の数が増えるばかりです(汗)
ではこれから「島はぼくらと」の感想書きます!2021/06/17 -
ゆうママさん、読み終わりました。読後感よかったです。素敵な本を紹介してくださりありがとうございました。ゆうママさん、読み終わりました。読後感よかったです。素敵な本を紹介してくださりありがとうございました。2021/06/30
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好みとしては辻村深月作品としては最も好きなテイストの作品だった。
そうだよなと納得したのは、過疎化するのは必ずしも離島などの田舎ばかりではなく、都会のど真ん中にも起こり得る現象だということ。ドーナツ化現象などと言われて久しい。
環が出てきて嬉しかった。
つぎは「冷たい校舎」でも読みますか。 -
瀬戸内海の島に暮らす男女高校生4人を中心にした物語りは、青春を描くだけではなく、田舎の閉鎖感と外部の人たちへの門を開く必要性も含んでいる。
「女が田舎で生きていくのに、おじさんたちにへこたれていたら何もできない」印象的な言葉。故郷と呼ぶ場所がない私は羨ましくもあり、ホッともしたり…女性の強さとコミュニケーション力に拍手!
Iターンも積極的に受け入れてている島はのモデルは、家島で『青空と逃げる』とリンク、『スロウハイツの神様』の登場人物リンクには気持ちがグーンと湧きたった。
辻村深月先生! 数年後の若者たちの姿が見える小説を、きっと描いてくれると信じています。
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特段何か大きな事件とか起きるわけでもないのですが、最後まで一気に読んだー!
島や地方についての日常的な事が、高校生4人と描写で浮かぶ感じですね。
自分もフェリー登校してる気分になってました笑
表紙もかわいいーと思いました!
著者プロフィール
辻村深月の作品






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