殺人出産 (講談社文庫)

著者 : 村田沙耶香
  • 講談社 (2016年8月11日発売)
3.41
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  • 本棚登録 :917
  • レビュー :129
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934770

作品紹介・あらすじ

祝!芥川賞受賞
村田沙耶香 最大の衝撃作はコレだ!
10人産んだら、1人殺せる。「殺意」が命を産み出す衝動となる。

今から100年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」によって人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日突然変化する。表題作、他三篇。

殺人出産 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞の「コンビニ人間」が面白かったので、文庫化した「殺人出産」を読んでみた。ずっと気にはなっていた本。だって殺人出産だよ…! 殺人出産。すごい言葉。
    舞台は、産み人になって10人子どもを産むと、1人、誰でも殺すことができる制度がある、未来。産み人は、男の人でもなれる。人工子宮なるものを埋め込んで産む。
    産み人を崇める人、崇めるほどじゃないけど、すごいよねと肯定する人、自然じゃないと批判する人、昔の正しい倫理に戻るべきだと嫌悪する人。立場はそれぞれで、一体「普通」とか「正義」ってなんだろう、と考えさせられた。それから、出産てなんだろう、とも。
    さっさっと読めてしまうんだけど、常に次の一行を読むのが怖かった。わたしを傷つける言葉が待っているような気がした。

  • 10人産んだら1人殺せる社会という設定の表題作は、SF、ディストピア小説と割り切って読んだのでとても面白かった。もしそういうルールのある世界に自分がいたなら、どうするだろうかと考えさせられてしまう。

    瞬間的に人を殺したいと思うことは誰にでもあるだろうし、もちろん私もあります。電車でぶつかられただけでも「死ね」って思うし、夜中にドスドス騒音たてるマンションの上階の住人にもいつも「死ね」って思ってるし、私より無能なのに男で年上だというだけで私より高い給料もらってる上司にも日々「死ね」って思ってるし、社員はボーナスも出ないのに出張と称して会社のお金で海外旅行に毎年でかける社長夫婦のことも「100回くらい死ね。そして地獄に堕ちろ」って思ってる。

    ただ「こんなやつ死んじゃえ」って頭の中だけで思うことと「だから私が手をくだす」と実際に実行に移すことには深くて長い川があってですね、冷静に考えて、そんなどうでもいい相手を殺して刑務所入るくらいなら、引っ越す、転職する、などの選択肢はいくらもあるわけだし。だからそういう殺意って長続きしない。10人産んだら一人殺していいよ、って言われても、かかる時間は最低でも10年、その10年のうちにもうどうでもよくなるかもしれないし、自分が手をくだすまでもなく相手が勝手に死ぬなり不幸になるなりするかもしれないし、何十年もかけて10人も生む大変さ味わってまで殺したい相手は流石にいない。だから一番共感できたのは主人公の年下の同僚チカちゃんでした。

    しかしこのルール、つまり自分も誰かの強烈な恨みをどこかで買っていれば、自分が殺される対象になる可能性もあるわけで、そうなると結構、いつも良い人ぶっちゃうかもなあ。作中で、主人公をねちねち苛める職場の上司が出てきますが、こういう人はそういうことばかりしてるといつか自分が殺されるかもという危機感は持たないのだろうか。

    良いなと思ったのは人工子宮を移植すれば男性も出産を出来るようになっている点。女性だけの特権じゃなく、男性も平等。産みの苦しみも平等なのはいい。ディストピアものの常として、このまま少子高齢化が進めば、ありえない未来じゃないと思えるところが恐ろしい。殺人は別としても生むことだけに特化した層というのは作られてもおかしくない気はする。そしてそう思う自分が正しいかどうかわからないけど、こういう世界もけして悪いばかりじゃないって思ってしまう自分もいたりして、早紀子という女性のふりかざす正義に、なぜか不快感を覚えてしまう。主人公も言っていたけれど、極端な信念は、方向性は違ってもやはり狂気の一種だと感じます。


    ※収録作品
    「殺人出産」「トリプル」「清潔な結婚」「余命」

  • 舞台は「10人出産すれば1人殺す権利を与えられる」世界。
    そこでそれぞれの価値観を持って生きている主人公たち。
    突拍子もない設定なのにファンタジーには感じられない。細かいところまで練りに練られた設定ももちろん、キャラクターも「どこにでもいそうな普通の人たち」だからかもしれない。
    例えば同じ今ですら、国や宗教が違えば全く異なる価値観や「正しさ」がある。私たちのみている世界というのがいかに狭い常識の中で作られたものか考えさせられる作品。
    一緒に収録されてる短編も全て「性」がテーマの「こんなことが起こる世界だったら」という話。今の日本の現実と擦り合わせると明らかに「ファンタジー」なのだけれど、隣の人はもしこういう考えだったら、というふうにすっと思わせられる。
    すらすら読めるけれど読後感はかなり重く、でも苦しくはない。
    ただ殺人を扱ってるだけに好き嫌いははっきりしそう。しっくりこない人には全く面白くないのだろうな。

  • 序盤からとにかく不気味な雰囲気が漂う。
    舞台は、現代から約何百年も経った後の日本。そこには、現代での“常識”は消え去り、新たな価値観や正義が浸透している。
    だが、新しい時代に変わりつつある中でも「こんな世界間違っている」と弾糾する人々はいる。
    皆それぞれに自分の考えが1番正しく、清潔だと考えている。だからこそ自分とは違う他人の考えや行動が汚らわしい・間違った行為。と言う認識になり受け入れられなくなってしまった。
    しかし、本当は誰が正しくて、誰が間違っているのか何て答えはなく、どちらも正しくてどちらも間違っていると言ってもいい…。

    特にこの作品では人の“命”を司る性行為や出産が大きなテーマになっているため、余計に偏見が強くなるのだと感じた。

    こんな未来ありえない。
    なんて言い切れないリアルな感触がした。



    【殺人出産】
    10人産めば1人殺せる「殺人出産システム」
    他人の命を奪うことで、生きていることを実感できる。

    【トリプル】
    2人ではなく3人での交際・婚約が主流の世界。

    【清潔な結婚】
    恋愛と家庭、快楽と生殖を切り離した性行為。

    【余命】
    医療が発達し、“死”が無くなった世界。
    生き方ではなく、死に方を探す人生。

  • 今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。表題作他三篇。

  • 10人産んだら、1人殺せる。「産み人」としての「正しい」手続きをとらずに殺人を犯せば、女は埋め込んだ避妊器具を外され、男は人工子宮を埋め込まれ、一生牢獄の中で命を生み続ける、「産刑」という最も重い罰が下される。命を奪うものが命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。
    これだけでもうひぃ…ってなる。
    表題作他3篇。どれも世界の変化のなかで自分だけが異物になった気分。
    目が離せない作家さん。

  • 表題作の殺人出産は、正常のパラダイムが転換した一つの未来の姿だ。

    自分という人間が排斥される社会の倫理観から、崇められる対象となり得る倫理観への変化の中で、主人公は揺れ動きながら嫌悪しながら愛していく。

    性と生が蠢く、今でないどこかの価値基準の中に紡がれた短編集。


  • 10人産んだら1人殺せる世界。ありえない設定なのに登場人物の日常が淡々と描かれているため、かえって独特な雰囲気を醸し出していた。

    「産み人」の制度については設定に無理がある。でも、今の常識が絶対的に正しいという保証はないし、100年後には全く異なる制度になっているかもしれない。大多数の人間が受け入れればそれが常識に、正義になるのだ。そう思うととても怖い。その世界にいたらその常識に飼い慣らされるよりほかないのかと思うと、なお一層怖い。もしかしたらすでに飼い慣らされているのかもしれない。

  • 読了日2016/11

  • ちょっと無理やりなとこもあるけど、すごい世界。どうなるのか、どんどん次を読みたくなる。

    殺人出産
     10人産んだら1人殺せる世界。男性も人工子宮を着ければ産むことができる。

    トリプル
     三人で付き合う。カップルだけでなくトリプルも若者の中で広がった世界。

    清潔な結婚
    「性」を可能な限り排除した結婚。子供が欲しくなり、クリーン・ブリードに申し込む。

    余命
     蘇生が可能となり、死は自分で選ぶ世界。

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