闇に香る嘘 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 667
レビュー : 88
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934824

作品紹介・あらすじ

村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。

27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。
全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。

感想・レビュー・書評

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  • ろう者が主人公の作品を読んだ後、続いて全盲者が主人公のミステリー。
    戦争時の後遺症で目の見えない主人公が、自分の兄が偽者ではないかとの疑いを払しょくできず、真実を求めて彷徨する。そこには、戦争犠牲孤児(山崎豊子女史は、中国残留孤児との言葉を使わない)の問題が重くのしかかる。
    誰が本当のことを言っており、誰が嘘をついているのか。
    誰が本人で、偽者は誰なのか。
    主人公とともに、読者も混迷の渦に巻き込まれる。いわば、小説を読むというのは、文字だけで映像がなく、盲者の行為に類するものだから。
    盲目ゆえの苦悩と障害、さらに戦争の傷跡の過酷さ、そして家族の絆、それらを見事に融合させた傑作。
    良質のミステリーは、芳醇なワインに似ている。読後しばらく、その心地よい余韻に浸ることができた。

  • 見事な設定、巧みなプロット、爽快感を感じる感動の結末。江戸川乱歩賞に相応しい見事なミステリーだった。全編に亘る数々の伏線と、それを全て回収しながら、感動の家族のドラマが進行する。

    腎臓移植が必要な孫のために適合検査をするが、不適合の診断に悲嘆に暮れる盲目の村上和久は中国残留孤児の兄に腎臓移植の依頼をする。何故か、適合検査さえも頑なに拒む兄は本当に実の兄なのか…

    盲目の老人を主人公の探偵役に据え、実の兄の正体を探るミステリーと共に、戦争に端を発した悲劇を見事に描き切った傑作。

  • 評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    孫への腎臓移植を望むも適さないと診断された村上和久は、兄の竜彦を頼る。しかし、移植どころか検査さえ拒絶する竜彦に疑念を抱く。目の前の男は実の兄なのか。27年前、中国残留孤児の兄が永住帰国した際、失明していた和久はその姿を視認できなかったのだ。驚愕の真相が待ち受ける江戸川乱歩賞受賞作。

    目の見えない主人公が犯人を捜すなんて・・・無理だ!と読み始めたが、思った通り相手の表情が確認出来ないから誰が味方なのか判断できない。読む私までが不安だらけだわ。
    しかも、見えないから自分を守ってくれている人も確認ないのだが、敵だ!と思って居た人が実は1番の味方だったという心温まるラストだった。

  • これ、黒いカバーされて販売されていて、ずーーーーーっと気になっていたんです。タイトルもなんだか意味深だし。
    で、やっと読みました。

    -あらすじ-
    村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。

    27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。
    全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。


    主人公が全盲のため、見えない。
    色々見えない。兄の心も、母の心も、娘の心も・・・
    親切にしてくれる人は、味方なのかそれとも敵なのか・・・
    だけど、一歩一歩、歩みは遅くとも進んでく。前へ前へ。

    和久の卑屈さに最初はかなりイライラしたけれど、物語が進むにつれて、「見えない」ということは、こんなにも不便で怖いのかと知り、感情移入していく。

    そんな不安と恐怖のなか、探偵のようなことをするというのはどんな勇気か?と思った。

    そしてここでもまた、戦争の爪痕を思い知る。

  • 90年代初頭、まだ小学生くらいの頃
    某公共放送でも頻繁に残留孤児の番組を
    放送していたのを思い出す。

    10年でも早く出版されてたら、
    中国から帰還した人達もまだ
    60代前半くらいで、
    この作品に描かれるような大冒険を
    もっとリアルに感じられただろう。
    流石に70前後の人がこれだけ活躍する様は
    少し創作めいていた。
    戦争の記憶を語る人々も今ではもう
    80、90代の超高齢になっている。

    それでも、そんな細かいこと抜きに
    抜群に面白かった。

    満州の戦時の描写は、
    苦しくなる程凄惨で挫折しそうだった。

    盲目の主人公が周りの全てに
    疑いを向ける心理がダイレクトに伝わった。

    本筋だけでなく、盲目に陥る前後の
    主人公の葛藤や
    家族の苦悩も響くものがあり、
    家族の絆には涙腺が熱くなった。

    ミステリ、サスペンスとしても傑作だが、
    家族愛を描いた読み物としても
    素晴らしかった。

  •  村上和久は孫への臓器移植を望むも、検査の結果、自分の臓器は孫に適さないと診断される。
     そこで和久は兄の竜彦を頼るが、兄は移植どころか検査すらも拒否する。その頑なな姿勢に、和久はとある疑念を持つ。戦時下に中国で生き別れた兄は、27年前に帰国した。しかしそのとき和久は失明しており、兄の姿を視認できていなかった。
    「兄は本当に兄なのか?」そして時期を同じくして、和久のもとには点字で書かれた不審な手紙が届くように。和久はかっての兄の姿を知る人たちのもとを、訪ね歩くことにするが……

     最近の江戸川乱歩賞受賞作の中では、かなり評価が高い作品だったので、楽しみにしていたのですが、実際に読んでみて、その評価の高さに納得しました。

     ”中国残留孤児”や”第二次世界大戦”という重く難しいテーマに対し、臆することなく真っ向勝負で描きます。このテーマを選んだということだけで、新人離れした何かを感じさせます。

     そしてそうした知識がまったくない自分にも、当時の人々の辛さ、過酷さが伝える筆力もかなりのもの。それを単なる知識として披露するだけでなく、しっかりストーリーに落とし込む構成力やプロットもすごい!

     さらに語り手に盲目の老人を選ぶあたりも、新人離れしているなあ、と感じます。

     盲目がゆえに相手の表情や周りの状況が見えないというハンデ。それゆえに、だれが本当のことを言ってるのかわからないどころか、例えば目の前に犯人がいたとしても気づかない、という危機すらもあります。誰が信用できるかわからず、疑心暗鬼にとらわれ、追い込まれていく主人公の感情も描かれ、物語はより緊迫感を増します。

     さらに、主人公が盲目のため、娘から日常生活でいろいろ助けてもらったりもしていたのですが、徐々にそれが当たり前のように感じてしまい、娘に強く当たるようになったり、と障害者ならではの心理描写も描かれます。

     そしてなおかつミステリの伏線回収も”見事!”の一言に尽きます。

     自分が思うミステリのいいところの一つに”伏線さえしっかりしていれば、現実ではなかなか起こり得ない大団円を描けること”があるのですが、この小説の大団円は本当にきれいに決まっています!

     中盤にかけては、少し間延びしている感じもあったりはしたのですが、残留孤児や身体障碍者の日常という難しそうなテーマをしっかりと描き切り、ミステリとしての完成度も高く、デビュー作とは思えない、作品だったと思います!

    第60回江戸川乱歩賞
    2015年版このミステリーがすごい!3位

  • ミステリーは多少最後の展開がよめる物もあるが、これはよめなかった。でも伏線などがフェアで、なるほどと思う。

    複雑に絡む登場人物や、途中もたつき感のある歴史や残留孤児の話などを、最後ですっきりまとめたのがすごい。
    ラストはもうちょっと感情的に盛り上がってもよさそうなものだけど、意外とさらっと色んな事が収束した感がある。

    主人公が人相のわからない人と何人も対峙しなくてはならない所が、いい意味でストレス。
    良作。

  • 主人公が盲目のため、読んでいてもどかしいが、その分主人公の感覚に入り込んでしまう。
    伏線は張られているが、少しうまく作りすぎな気がしないでもない。

  • 視覚障害、そんな闇にいるなかで
    香ってくる嘘、、、真実とは何か。


    視覚障害という一つのテーマにより成立するミステリー小説。
    読者も、その姿がわからず、想像するしかないだけに、
    何が真実かわからない。

    小説ならではのテクニックを「見」てほしい。

  • ミステリーで双子がオチって一番やったらあかんやつや……

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著者プロフィール

1981年京都府生まれ。2014年に『闇に香る嘘』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。翌年に発表した短編「死は朝、羽ばたく」が第68回日本推理作家協会賞短編部門候補に、『生還者』が第69回日本推理作家協会賞の長編及び連作短編集部門の候補となった。他の作品に『難民調査官』『サイレント・マイノリティ 難民調査官』の「難民調査官」シリーズ、『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『黙過』がある。

「2018年 『失踪者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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