阿蘭陀西鶴 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062935234

作品紹介・あらすじ

江戸前期を代表する作家・井原西鶴。彼の娘おあいは、盲目の身ながら、亡き母に代わり料理も裁縫もこなす。一方、西鶴は、手前勝手でええ格好しぃで自慢たれ。傍迷惑な父親と思っていたおあいだったが、『好色一代男』の朗読を聞いて、父への想いが変わり始める。小説を読む歓びに満ちた、織田作之助賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 盲目の娘おあいを通して、井原西鶴をえがく時代小説。

    第31回織田作之助賞受賞作。

    ひとりで生きていけるよう、母にしこまれたおあいの、料理を中心とした暮らしの描写が細やか。

    おあい目線なのに、人物も風景も、目明きの主人公と変わらず生き生きと感じられる。

    最初は、自分勝手で嫌な父親でしかなかった西鶴。

    だんだんと違った面に気づき始めたおあいの変化に、人情味があった。

  • 井原西鶴と盲目の娘おあいの物語。
    あー、こういう親父いるわ、と思いながら、嫌でたまらなくても、その親の面倒を見るのはおあい。
    俳人でありながら、俳句ではなく草子ものが当たってしまい、その間に天才芭蕉が西鶴の先をいってしまう。
    巻き込まれる娘はたまらないよなぁと思いながら、それでも私もあおいと同じ事をするのだろうと思う。
    切なくて、あったかくて、最後に泣かされなんて、もう朝井まかてさんはずるい(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

  • 小学校の歴史でしか知らなかった「井原西鶴」という人物像を深く知ることができた。娘のあおいの視点で書いているのもよかった。西鶴がどのように生きてきたのかということと、親娘愛という異なった方面から楽しめる本だった。

  • 大衆小説の創始者 井原西鶴と、盲目の娘 おあいの物語。
    ゴッホがそうであったように、創始者はなかなか時代に受け入れられず周囲の人に迷惑をかけつつ己の道を邁進するものなんですね。多くは朝井さんの創作でしょうが、父娘の関係が変わっていく様子は胸を打ちました。
    一方で研ぎ澄ますことで道を極める芭蕉のような存在も貴重だと思いますが、間口を狭めることで一部の人たちだけのものになったことが、いつくもの日本の伝統文化が細々としか継承されない結果を招いたのかな。

  • 正直なところ、あまり面白いと感じずに早く読み終わりたいと思いながら読んでいましたが、最後の1ページから巻外にかけて、ジーンと来ました。
    読んで良かった。

  • 井原西鶴については、名前と好色一代男くらいしか知らず、その一代記ってことで、時代背景とかも楽しめました。松尾芭蕉、菱川師宣、近松門左衛門っていう、お馴染みどころも多く登場して、”なるほど、こういう繋がりがあったのか”っていう発見もちらほら。西鶴って、俳諧にその基礎が置かれていて、あまりパッとしなかったから草子へって流れがあったんですね。今我々が小説文化を享受出来ている大本がここにあると思うと、よくぞやってくれました!って快哉を叫びたい感じです。娘さんとの交流も、不器用ながら温かくて、父子ものとしても良く出来た作品でした。自身、初まかて体験でしたが、とても好印象でした。

  • 乳飲み子の弟を残して病死した母。父・井原西鶴は2人の弟を養子に出し、まだ九つのおあいとの二人暮らしを始める。お調子者でエネルギッシュでいつも騒々しく外出の多い西鶴、盲目ながら母に仕込まれた料理や家事の能力で家を維持する真面目でやや陰気なその娘おあいです。
    おあいの視点で描かれます。何かと言えば知人の前に引き出しおあいを褒める父と、そこに反発する根暗なおあいです。
    しかし、やがて父の心情が判るようになるにつれ。。。
    絶品とまでは行きませんが、しっかりした歴史小説です。
    当時の世相も良く出てますし、人物像もしっかりしています。
    朝井さん、安定してますね。

  • 西鶴の娘おあいの視点からの描写が秀逸。さすがの観察眼と文章のうまさ。

  • なんだか途中で挫折。

  • 大矢博子さんの解説を読んで、そうだったのか!とスッキリした。読み初め、やや物語に入り込めない感があったのだが、「おあい」を見ていた自分が、いつしか「おあい」として見るようになっていき、すっかり作品世界に没入していたからだ。大矢さんが書かれている「思えば、目が見えない ー 映像情報がないということは、テキストのみで構成される小説を読む行為と似ている、と言えるのではないか。さらに本書はおあいを語り手にしたことで、物語の中にも人の目鼻立ちや風景の直接の描写はまったく出てこない。しかし読者の目には、台所に立つおあいの姿がはっきり目に浮かぶ。桜鯛を捌く彼女の手が、彼女が出会った人々の様子が、それぞれの読者の心の中で再現される。」「もちろん、著者の筆力あってこそだが、これが物語の力だ。」という言葉に、非常に納得した。
    とはいえ、解説は作品の読後に読んだのであって、このように整理された考えを頭で理解し読み進めていた訳では、もちろん全くない。
    徐々に解き明かされ深まっていく親子の時間を共に生きることで、二人の生涯は幸せだったのだなぁと、静かに満たされて本を閉じることができた。世の中が落ち着き文化が成熟していく時代の、大阪の市井の人々の闊達な暮らしぶりがまた、気持ちを晴れやかにしてくれた。朝井まかてさんは、やっぱり面白い。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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