旅猫リポート (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.33
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本棚登録 : 7226
感想 : 542
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062935616

作品紹介・あらすじ

この絆は、恋愛を超える。カギしっぽのナナと心優しい青年サトルの、最後の旅の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 事情により飼えなくなった猫の引き受け手に名乗り出てくれた友人へ、主人公と猫が会いに旅に出るという物語。

    【レインツリーの国】【阪急電車】につづき著者作品3作品目の連読。

    どうやら最近の私は、心の豊かさが不足しているのか、著者が各作品の人物に吹き込む、生きる懸命さや弛まぬ愛情がとても響く。

    本作もまた、胸がぐっと締め付けられ、読後感の聡明な余韻が未だに続いている。

    主人公の不幸な生い立ちが堪らなくしんどい。
    だが、本人は幸せそうに生きてきた。
    そして、擬人化した猫視点が交互に描かれている斬新な構成に、初めは少々馴染めずにいたが、読み進めるうちに、無くてはならないパートとなっていった。

    最後はウルっと。

    人間と、家族であるペット。
    会話は出来ないが、注ぐ愛情はちゃんと伝わっているのだと、またペットも主への愛情をしっかり体現してくれているのだと、確信をくれた作品であった。

    週末によく子どもたちと行く公園に、決まってくつろいでいる野良猫がいる。エサをあげずとも兎角人懐っこく老若男女から大人気の猫だ。

    公園で一緒になったお婆様曰く、名前は各々好きに付けて呼ぶスタイルらしく、お婆様は『おもち』と呼んでおられ、うちの娘は『おこめちゃん』と名付け愛でている。

    私はいつも遠目でみているクチだが、今度『頭を撫でてみる』というミッションを自分に課した。

    最近、作品に触れて、自分の価値観や習慣に変化が生まれることが、うれしい、たのしい、大好き。まさにドリカム状態だ。

    さて、次作選びに積読棚と睨めっこしよう。

    • りまのさん
      akodamさん

      ありがとうございます!こちらこそ、よろしくお願いいたします!(*^^*)
      akodamさん

      ありがとうございます!こちらこそ、よろしくお願いいたします!(*^^*)
      2021/07/18
    • moboyokohamaさん
      愛猫ナナの目で見たサトルの終活とも言えるかな。
      愛猫ナナの目で見たサトルの終活とも言えるかな。
      2021/12/11
    • akodamさん
      moboyokohamaさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      確かに、最後にサトルの終活だったのだなぁと私も感じました。映画も...
      moboyokohamaさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      確かに、最後にサトルの終活だったのだなぁと私も感じました。映画もあるみたいですね!
      2021/12/11
  • みなさんは本をどこで読むでしょうか?自宅?図書館?喫茶店?それとも通勤電車の中でしょうか。読書を始めてその世界に入っていくと次第に周囲のことが気にならなくなります。一方であなたが気にならなくても、あなたがその場で浮いた行動をとれば周囲はあなたが気になります。自宅以外で本を読む場合には読む本を選ぶ必要があります。『人前で読んではいけない本』。まずは、ゲラゲラ大笑いさせてくれる本。隣に座っている人がいきなり笑い出したら、これは怖い!です。その瞬間にあなたも晴れてアブナイ人の仲間入り。イライラするような内容もどうかと思います。本の世界の内容にムシャクシャして、何かに当たり散らしかねません。でも一番ヤバイのは、思いっきり感動する内容、しかも心のど真ん中の奥深くにまでググッと入ってくるような本ではないでしょうか。電車の隣の席の人がいきなり泣き出してもこれは怖い!です。次の駅でさりげなく席を立たれるでしょう。恐らくそれは本人もわかるところなので逆にググッとくるのを必死で我慢することになるかもしれません。でも、感動がズシズシ入ってくるのに、泣きたいのに、泣けない、もうこれは読書ではなくて、それは単なる苦行に変わってしまいます。これではあまりにもったいない。読む本は読む場所もきちんと選ばないといけません。
    …とここまでくどく引っ張れば分かりますよね?

    『この本はヤバイやつや!電車で読んだらあかんやつや!』

    『吾輩は猫である。名前はまだ無い。』どこかで聞いたことがあるような文章で始まるこの作品、『その猫がどれほどえらかったのか知らないが、僕は名前があるという一点においてのみ、そのえらい猫に勝っている』という記述から分かるように『猫視点』が登場します。『僕はその頃、とあるマンションの駐車場に駐めてある銀色のワゴンのボンネットがお気に入りの寝場所だった』という猫は『夜中に道路を渡っていると、カッと車のライトに照らされた。驚いて一瞬ダッシュが遅れた。…骨が飛び出してる』ということをきっかけに主人公・宮脇悟に拾われ一緒に暮らすようになります。『額には八の字にぶちの入った猫だ。7の形の黒いカギしっぽ』ということで『ナナ』と名付けられます。相思相愛の悟とナナの生活。しかし、作品はそこで『サトルと暮らした五年間、僕はいつだって聞き分けのいい猫だった』とこれがナナによる過去の振り返りであることを示唆します。『突然で申し訳ないけど、僕の猫をもらってくれませんか?』という悟からのメールを受け取ったのは澤田幸介。小学校時代の友人という澤田を訪ねる悟。ナナを見て『「ハチにそっくりじゃないか。」あの日、二人で拾った猫によく似ていた』という小学校時代に場面はさらに遡ります。案内板の下に段ボールを見つけた二人。幸介の思いに反して飼育に反対する親に『任せて、僕にいい考えがあるから!』という悟。『家出作戦』により結局、悟の家で飼育が始まりました。名前は『ハチ』。猫がいる幸せな暮らし。そんな中、二人が修学旅行に出ている時のことでした。幸介も知らないうちに『事情があって』先に帰ったという悟。予定通り帰った幸介は、父母に旅行の話をしようとしますが、『父親にいきなり小突かれた。「能天気にはしゃいでるんじゃない!」』という展開。『悟が途中で帰っちゃったんだ。何かあったの?』と訪ねる幸介。悟に起こったことを知る幸介。普通だった日常が大きく動き始めます。

    『猫視点』が登場するこの作品。ただし、視点は決して猫だけでなく、悟や幸介など様々な人に場面場面で細かく移っていきますが、『猫視点』ならではのこんな表現が出てきました。『一体どうして人間はゴキブリがこんなに嫌いなんだろうね。構造的にはカブトムシやカナブンとさほど変わらないし、カブトムシやカナブンならそんな悲鳴を上げないのに。むしろ猫的には動きが速いぶん手強くて楽しいくらいですよ』。まあ本当かどうかは別にして『猫視点』だからこその説得力を感じさせるセリフです。また、『ざわざわと風が鳴る。ススキの穂がうねる。うねりは目で追えないほど遠くにまで広がっていく。果てて消えたうねりを追いかけるようにまた次のうねりが生まれる。まるで地上の海だ』という表現。これは最後の最後に効果的に意味を持ってきますが、悟とナナが目にした美しい自然の描写として、とても印象に残りました。

    『僕の猫をもらってくれませんか?』と、小・中・高時代の友人の元へ『銀色のワゴン』で旅する悟とナナ。それによって色々なことが次第に明らかになっていきます。そして、結末がおぼろげに見えていきます。でも有川さんはそれだけでは決して終わらせません。結末に向けて、全く予想もできなかった、まさかの人物、まさかの真実、そしてまさかの展開が次から次へと襲ってきて、二段、三段上の読後感へと読者を導きます。そして、さらに感動的なのが、そのそれぞれのまさかに対応する伏線が、それぞれにきちんと張られていたというまさかの説得力。もうこれは読者にはどうにもできません。そのまま、素直に自分の心の感じるところに身を委ねるしかありません。そうです。もう、もう信じられないくらいに心が反応してしまって大泣きをしてしまいました。この感想を書いているだけで、また涙が、という結末。それを包み込むやさしさとあたたかさの幸せな感情。

    『この本はヤバイやつや!電車で読んだらあかんやつや!』

    猫が好き、猫が嫌い、そんなことなどあまりにどうでもよく、『感涙にむせぶ』という言葉は今日この瞬間にあったのだと感じた、読む場所に最大限の注意を払うべき圧倒的な傑作、名作だと思いました。

    • さてさてさん
      いるかさん、コメントありがとうございます。
      本当に胸が熱くなる思いのした作品でした。思わぬ収穫でした。
      今後ともよろしくお願いします!
      いるかさん、コメントありがとうございます。
      本当に胸が熱くなる思いのした作品でした。思わぬ収穫でした。
      今後ともよろしくお願いします!
      2020/05/21
    • たけさん
      さてさてさん、こんにちは!
      「旅猫リポート」とてもおもしろそうですね!
      さてさてさんのレビュー読んでとても読んでみたくなりました!
      さてさてさん、こんにちは!
      「旅猫リポート」とてもおもしろそうですね!
      さてさてさんのレビュー読んでとても読んでみたくなりました!
      2020/05/23
    • さてさてさん
      たけさん、こんにちは!
      いつもありがとうございます。

      はい、書名だけだとピンと来ないのですが、これはとても良かったです。…と書いていたら、...
      たけさん、こんにちは!
      いつもありがとうございます。

      はい、書名だけだとピンと来ないのですが、これはとても良かったです。…と書いていたら、また、涙が…。

      引き続きよろしくお願いします。
      2020/05/23
  • 元野良猫ナナとサトル、五年を共に過ごした後、ナナの引き取り手を探す旅に出かける。小・中・高各時代の親友達が、彼等を待つ。束の間のサトルの人生と友情の確認の旅。
    猫目線の語りとサトルと友人達の思い出の文体が絶妙に混ざり合うので、ストーリーに入りやすい。猫好さん達は、より同期していきそうですね。
    愛猫を人に託さなければならない理由は、途中から予測から確信に変わります。
    ただ、不幸設定追加が多すぎるかなと。サトルの少年期からの誠実な生き方の基礎ではあると思うのですが。

  • さてさてさんの素晴らしいレビューを読んで、速攻でポチりました。

    猫目線の本。
    僕は断然犬派なので、猫の本には全くそそられない。夏目漱石の「吾輩」を途中挫折した経験すら持つ。
    そんな感じなので、ブクログやってなかったら恐らく読まなかったであろう本。

    よかったです。
    目から熱いものと鱗が落ちました。

    サトルとの最後の旅を描いた(どうでもいいけど、「猫」と「描」ってほんと字が似ていて、「描く」って書く時、いつも猫の絵を描くことを想像してしまう)  ロードノベル。
    「最後の旅」というところがね…ほんと、切ないのです。涙が止まりません。

    サトルとナナの関係は最強だな。こんな強い信頼で結ばれたペットと飼い主、理想的ですね。
    そして、幼くして両親を亡くし辛いはずのサトルの人生。でも、とてもいい人たちに囲まれて幸せだったんだな、と最後にほっこりできて、大きな感動を得ました。

    癒されます。
    少し疲れた時に再読したい。

    あと、なぜか「吾輩は猫である」に再度チャレンジしたくなった。

    • たけさん
      さてさてさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。

      確かに、この小説は、猫好きか、嫌いか、それを超えてますね。ほんとに。

      でも、...
      さてさてさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。

      確かに、この小説は、猫好きか、嫌いか、それを超えてますね。ほんとに。

      でも、この本読んで、猫もいいな、と少し浮気をしてしまう僕もいたのでした。
      それほどナナは魅力的。
      2020/05/31
    • りまのさん
      たけさん
      フォローありがとうございます! 私もこの本大好きで、何度も再読しています。本当に、感動で、涙してしまいます。
      どうぞよろしくお願い...
      たけさん
      フォローありがとうございます! 私もこの本大好きで、何度も再読しています。本当に、感動で、涙してしまいます。
      どうぞよろしくお願いいたします。
      2021/01/09
    • たけさん
      りまのさん、こんばんは!
      こちらこそ、フォローありがとうございます!

      何度も再読する本があるって幸せなことですよね。この本はそういう要素が...
      りまのさん、こんばんは!
      こちらこそ、フォローありがとうございます!

      何度も再読する本があるって幸せなことですよね。この本はそういう要素がありますね。

      今後ともよろしくお願いします!
      2021/01/09
  • まさしく名作。
    構成も内容も素晴らしい。
    世界へ翻訳される意味が理解できる。
    次回は英語で読んでみるつもり。

    • さてさてさん
      いるかさん、はじめまして
      いつもありがとうございます。

      この作品、書かれているとおり私も名作という言葉が似合うとても思いました。それで、い...
      いるかさん、はじめまして
      いつもありがとうございます。

      この作品、書かれているとおり私も名作という言葉が似合うとても思いました。それで、いるかさんの感想の『次回は英語』に反応しました。調べてみました。英語版あるんですね。海外での受けはどうなんでしょう。感覚のようなものが同じなのか興味あります。

      今後ともよろしくお願いします。
      2020/05/19
    • いるかさん
      さてさてさん はじめまして。。

      さてさてさんが書かれているように、この作品は電車ではやばいですね。
      読み終わってすごくよかったので、...
      さてさてさん はじめまして。。

      さてさてさんが書かれているように、この作品は電車ではやばいですね。
      読み終わってすごくよかったので、本屋さんで洋書で見つけたときにはすぐに買ってしまいました。
      すぐには読み切れず、少しずつ読んでいます。

      いつもレビューを楽しみにしています。
      これからもよろしくお願いいたします。。
      2020/05/19
  • H30.10.28 読了。

    ・飼っていた猫を思い出しながら読みました。ナナみたいに散歩やドライブ出来たら、素敵だな。
     連作短編集で、「スギとチカコ」が特に良かった。

  • 野良猫のナナと拾った青年サトルの物語。人の言葉を理解し行動する動物達という設定に最初は馴染めなかったが、話しが進むうちに違和感が無くなってくる。不幸な生い立ちのサトルが何故、野良猫を拾い、色々な場所で友人達を作って行けたかなど、ナナを貰ってくれる人探しの旅で徐々に分かってくる。先に飼っていたネコとの事や、ナナを手放す理由、叔母との関係などの秘密も最後に明かされる。叔母とのリポートや最後のリポートは涙無くして読めない。血の繋がりとか病気とか絶望の中に、ナナとサトルの心温まる交流がありホッとする。

  • 旅猫リポート 有川ひろ さん

    読み途中です。

    世界から猫が消えたなら、、、の切なさがこみ上げる展開に、、、

    電車の中では、涙は、こぼしづらい、、、

    - - - -
    いま、5時間経過して、読み終えました。

    この本は、猫とひとりの青年の物語です。

    いえ、読みおえれば、それは、種を超えた友情の物語、はたまた信頼の物語とも読み替えることもできることでしょう。

    まだ、僕にも涙を流す感情が残っていたんだ、、、
    そして、そんな心の旅に連れ出してくれた有川ひろさんへ感謝です。

    偶然に
     あなたに拾われ
      始まりし
       2人の旅は
        あらたに永遠に

    歌猫 ナナ より。


  • 辛勝です。
     
    重松清さんの「青い鳥」では不覚をとりましたが、今度はそうはいきません。いかせませんとも!

    相手となる本書は、泣ける小説のランキングの常連という強者。不足ありません。
    一気には読まず、合間に「もっと厭な物語」というホラーアンソロジーを挟んで、飲み込まれないよう準備しました。

    それでも……危険な相手でした。
    鼻の奥がツーンとなります。
    息が荒くなります。
    目が潤みます。
    文字が読みづらくなりましたが、堪えました。
    落涙さえしなければ勝ちなのです。
    正直、何との戦いかわかりませんが、勝負は勝たねばなりません。
    心地よい戦い(読書)であったことだけは確かです。
    未読の方々のご健闘を祈ります。

  • 聡明な猫と飼い主のお話。

    猫の口調については少し苦手な文体だった。おそらく夏目漱石へのオマージュと考えられる。猫の性格を良く表していて悪くはないが、個人的には海外の青春ドラマのセリフみたいで白けてしまった。

    ナナはいつまでも飼い主に寄り添った。
    ここまで強い絆があるのだろうか。

    ストーリーに大きな展開は無いが、旅と称する飼い主探しの真相は徐々に明らかになってゆく。
    暖かく、優しい気持ちになれる作品だ。
    辛い最後とは言い切れない。サトルとナナはいつまでも一緒なんだろうな。

    欲を言うと、もう少し捻りが欲しかった。
    前評判でハードルが上がり過ぎてた感はある…
    ちょっと残念。

    読了。

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著者プロフィール

有川浩(ありかわ・ひろ)
高知県生まれ。二〇〇四年『塩の街』で電撃小説大賞大賞を受賞しデビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊三部作」、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』など著書多数。

「2017年 『ニャンニャンにゃんそろじー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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