舞台 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.20
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本棚登録 : 1867
レビュー : 182
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062935821

作品紹介・あらすじ

太宰治『人間失格』を愛する29歳の葉太。初めての海外、ガイドブックを丸暗記してニューヨーク旅行に臨むが、初日の盗難で無一文になる。間抜けと哀れまれることに耐えられずあくまでも平然と振る舞おうとしたことで、旅は一日4ドルの極限生活に--。命がけで「自分」を獲得してゆく青年の格闘が胸を打つ傑作長編!

感想・レビュー・書評

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  • なりたい自分も、なりたくない自分も、正解ではない。
    「ナチュラルな欲求」が存在しない限り、正解には、一生めぐり合えない。

  • あ、わかる。
    覚えのある感覚がたくさんあった。人間は社会的な生き物だから、否応なく他者からの目を気にして、演じてしまう。何がほんとで何が造った演技なのかもわからなくなってしまう。
    演じている自分を恥じて、自分を追い詰めてしまった葉太が、その苦しみから解放されるには、とことんまで追い詰められて、演じてるかどうかも分からない状態になることが必要だったのだろう。
    たくさんの死者は、生きている葉太の演技をじっと見つめるだけ。演じるというのは、生きているということに繋がるのだろう。ならば、精一杯演じきってみるのもいいのかもしれない。

  • 汚いし苦しいし、だけどそういうところ自分にもある。

  • 調子に乗りヘマをする友人を惨めに思い、本当の田舎者で芋くさい「自分」を演じきる父親を姑息だと嫌う主人公が、ニューヨークでの旅を機にその性格ゆえに雁字搦めにされた演じる人生に疲れ、葛藤する話。人にこうみられたい、こうおもわれたくない、そのために演じたいと思うことは相手への思いやりからくるものであるし、ナチュラルな自分の欲求でもある。だから、演じる自分も、自分にしかわからない苦しみをかかえる自分もまとめて認めようとする主人公の気持ちの変化にハッとさせられた。

  • ちょうど自意識やら他者からの評価やらで悩んでいた時期に読んだので、それが誰もが抱える自然な気持ちである、と知れて救われた気持ちになった

  • 主人公の気持ちが痛いほど分かる。私にもこういう所があるから。
    自分を演じる、調子に乗りすぎて死ぬほど後悔したり…
    父親や母親を軽蔑して、自分はああはなりたくないと思っても、結局助けてくれたのは母親。
    人は一人では生きていけないものなのかもしれない。

  • 「二十九歳、父の建てた家に住み、職を転々とし、父の残した遺産を使ってニューヨークへ行き、観光初日ですべてを盗まれ、英語も話せず、最後には、母に助けてもらう男。挙句、日本に帰ったら武勇伝を伝えるはずだった友人も、度重なる葉太の「逃亡」で、実は今や、一人もいないのだった。」

    胸くそ悪くなる主人公である。がそれは、主人公の醜さにではなく、主人公のなかに自分を見るからだ。
    自意識過剰で他人の評価ばかり気にして、世の中の視線にがんじがらめになっている主人公は、最後に嫌悪すらする助けを他人に求める。金がないのをわかっているのにダイナーの女はニューヨークブレックファストを食べさせてくれる。救いだ。世の中、決して捨てたもんじゃない、と思えたのではないか。

    自分のことばかり気になって仕方がない、思春期以降の青年をもしかしたら救ってくれるかもしれない。

  • もやもやした葉太の成長をnyuを舞台に描いた作品。
    自分にとっての舞台葉どこなのか、
    靄のかかった人は沢山いると思うので、答えを無理に出そうとしないこの本は一読してみても良いかも。
    西加奈子さんの本はサラバからファンになりました。

  • 主人公はイライラするほど考え過ぎるタイプの人。じれったい気持ちを持ちながら読んでいくうちに、過酷な状況からか主人公が精神的に危険な状態に陥っていくところからがとても面白かった。嫌いだった父親に対してそれまでとは違う感情を抱いた辺りでそれまでのイライラする主人公にようやく好感が持てた。

  •  ★の数が少ないからと言って別にまったく受け入れられない小説ではない。が、主人公葉太の気持ちはまったくわからない。
     初めて来たニューヨークで、気持ちははしゃいでいるのに一生懸命浮いた気持ちを抑えこみ、慣れた調子で、5番街を歩く29歳。まさにニューヨークが、旅慣れた俺を演出してくれる「舞台」。さて、第1日目の朝食を終え、セントラルパークのシープメドウで念願の大好きな作家の新刊を読もうとバッグから本を取り出した瞬間、財布やパスポートの入ったそのバッグを素早く持っていかれてしまう。と、ここまではわかる。旅慣れた風を装うこともよくあることだし、バッグを盗まれることだってあり得る。普通なら大声出して追いかけ、すぐに領事館なり警察なりに駆け込むでしょ。ところが、非凡な葉太はそんなことはしない。スリが逃げていくのをじっと見送るのだ。公園にいる人たちが奇異な目で見てもおかまいなし。「なにか?」みたいな涼しい顔して本を読もうとするのだ。なぜって?かっこ悪い自分をさらしたくないから。おまけに日本に帰ってから、「有り金全部持っていかれちゃってさぁ。」なんて、武勇伝を友達に聞かせる図まで想像してる。アホか。1日目からスリにあうなんてかっこ悪いから、3-4日置いてから領事館へ行こう、なんてアホでしょ。せっかくの旅行を台無しにするよりも、自意識のほうが勝つのか。
     こんなん、わからんわ。と思って本を閉じたが、末尾に西さんとリポーターの早川真理恵さんとの対談が載っていて、早川さんは「自分と重ね合わせて泣きました。」と言う。えーっ、重なるんだ、やばいんじゃないの?彼女曰く、「子犬が可愛いという女の子は、そういう自分が可愛いと思ってる。と思われるのがいやで、子犬を可愛いと言えない。」って考えすぎ。でも世の中にはもしかしたら葉太に共感する人、結構いるのかもね。人間って複雑。
     

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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