産む、産まない、産めない (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062935944

感想・レビュー・書評

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  • 「妊娠」と「出産」をテーマに描かれた短編集。
    男性の育児休暇取得、産婦人科医の出産、不妊治療、シングルマザーについてのお話などなど、興味深く読ませていただきました。
    「彼女たちが勇気を持って決めたことを、応援してあげたい」そんな気持ちになりました。
    ラストの2行が個人的にはすごく好きです。

  • どこか自分ではないところで起きている話のようであり、どれも自分に起きても何もおかしくない話ばかり。
    女性として生まれた以上、妊娠、出産、このことになんの迷いも躊躇いも戸惑いも持たずに一生を終える人などいないのではないか。

    それは自分や夫婦、家族だけの問題ではなく友人関係や仕事や様々なことがそれ以前と同じであることが不可能になることが多い。

    早く産んでも遅く産んでも1人産んでも2人産んでも沢山産んでも産まなくても産めなくても必ず挨拶がわりにまるで天気のはなしをするように言われる言葉や、誰かの言う「世間の常識」に苦しむこともある。

    本書を読んでいて、爽やかな気持ちになったり苦しい気持ちになったりしたけれど、最後は暖かい気持ちで涙が溢れました。

  • 四十歳独身での妊娠に戸惑う桜子、不妊治療を続けるが子どもを授からない三十九歳の重美、初めての妊娠に幸せをかみしめる佐和子…。妊娠・出産をめぐる女性の心の葛藤と人生の選択を描いた八つの物語。悩みや迷いに寄り添い、「あなたが決めたことなら、それが正解」と優しく背中を押してくれる短編集。


  • 読書する時って、共感要素があると「良い本だ!」って思いがちなのだけど、それで言うと

    ・ある→産む、産めない
    ・ない→産まない

    というストーリー展開なので、全女性からの共感性は低そうだな。わざとらしい配慮は、それこそわざとらしくなっちゃうけれど”産まない”選択をした話も読んでみたかった。

    見通しだけでは何ともならないのが出産。
    でもバランス取れないことが、”生”そのものなんだと思う。

  • タイトルがとても気になって読んでみたのだけど、主人公たちが大体自分と同年代の女たち(いわゆるアラフォー)ばかりだったので、妊娠も出産も経験がない私にも刺さってくる内容の短編集だった。

    出世のチャンスが目前にやってきたバリバリキャリアウーマンである40歳女性の未婚のままでの思わぬ妊娠や、跡継ぎが必要な家に嫁ぎながら子宝に恵まれず40歳を迎えるところまで来てしまった女性、初めて授かった子どもが胎内で死んでしまい死産を経験した女性など、女性であれば胸を痛ませず読むのは難しい物語たち。
    開業している女医を妻に持つサラリーマン男性が、妻の出産を機に育休を取る話だけが多少異色だったけれど、それもまた今の世の中の問題を提示していて考えさせられた。

    個人的なことを言えば私は子どもが欲しいと思ったことがないから、今の年齢的にも恐らく出産はしないままでいくのだろうとほとんど理解していて、そのことに対する焦りも今のところはない。確実に無理だということがはっきりした時に後悔するかもしれないけれど、それも今のところ何とも言えない。
    だから私はこの短編集を、女性のわりには他人事として読めたけれど、読む人によっては辛かったり逆に勇気づけられたりするのだろうと思う。
    子どもがいる・いないでマウントを取り合う難しい年齢の女たちも実際にいるのだろうし、みんな自分のことで精一杯で、他人の状況や心理まで慮れる人はそんなに多くないのかもしれない。同じ女性同士なのに、悲しいけれど。

    産む、産まない、産めない。この3つの内容からなる短編集かと思いきや…1つだけ当てはまらない。この内容の物語、無かったよね?という意味でピースが足りてないことも、後書きに書かれている。

    出産に幸せを感じる人、キャリアのために迷う人、欲しても叶えられない人…すべてが女性のリアル。女しか子どもを産めないのは仕方のないことなのに、それを責める古くさい男がいまだに多いのも多分リアル。
    出産や子育てがすべての人においての幸福の条件とは思わないけれど、それでも色んなリアルを感じられたので、読んで良かったと思う。

  • 産まないという選択をした人は出てきませんでした。

    自分と重なる部分が多く涙を流れた。
    温かい水では死産の話題。自分は流産だったけれどそれでも手術が終わって新生児室の前を通って帰る時はあーーってなったから死産となればよりだろうと思ってその時の感情とかいろいろなもので涙がでた。

    不妊治療の話もダウン症の話も自分の心を触っていかれるような感覚になった。

    産まないという選択の話も出てきて欲しかったな。

    桜子には子供の父親に伝えてほしかった。

  • 第一話、第二話を読んで期待外れだったかなと思いましたが、第三話以降を読み進めるうちに登場人物の心の描写に涙することもありました。
    短編集のため、タイトルに対して少し軽い印象も受けましたが、それでも読んでよかったと思う1冊でした。

  • 「産まない」選択の人も見たかった。
    妊娠を受け入れるまでの葛藤だったり、徐々に母性が出てくるようなところとかはわかるんだけど、実際問題子育てのことや生活のこと考えたら、産まないという選択もあるはず。

    温かい水は泣きました。

  • 色々考えさせられる本だった。
    男の人にも読んでほしい。
    自分と少しだけ重なる話もあって、心の中でウンウンって頷きながら読んでしまった。

  • 子供を産むことに対して色々な考え方やその人の人生がある。
    わかっていても産まない、産めない人への世間の風当たりはまだ強いのが日本でもある。
    ついつい自分を重ねて読んでしまい、涙が出たりも。
    選択するのではなく、自然なこと。
    それをわかっているようでわかっていないのが女性なのかもしれない。

著者プロフィール

1964年、神奈川県生まれ。玉川大学文学部英米文学科卒業。ファッション、グルメ、映画、車などの最新情報を盛り込んだエッセイや小説で注目される。2014年に刊行した『産む、産まない、産めない』は、妊娠と出産をテーマにした短編小説集として大きな話題を集めた。ほかの著書に、『みちたりた痛み』『肉体派』『中年前夜』『マラソン・ウーマン』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』『鎌倉の家』などがある。また、読書会「ヨモウカフェ」を主催している。

「2019年 『産まなくても、産めなくても』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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